[7.3 J1第16節延期分 横浜FM 0-1 鳥栖 ニッパツ]
0-1で迎えた試合終盤、攻撃に迫力の出ない横浜F・マリノスを救うべく、MF喜田拓也はプレスでも攻撃でも前線に顔を出して同点、逆転のゴールを狙った。「形うんぬんじゃなく、なりふり構わずやらないといけないと思ったので自分が行った。あそこは形とかやり方じゃない。食らいついて状況を変えたかった。それだけ」。その奮闘は結果にはつながらなかったが、現状のチームを変えようとする気迫は表現されていた。
とはいえプロサッカーは結果が問われる世界。横浜FMにとってはこれで2020年11月以来の3連敗となり、他チームと試合数が揃った段階で順位はボトムハーフの12位にまで沈んだ。だからこそ喜田は自身の奮闘にも「甘いですね」とバッサリ切り捨て、厳しい口調で言葉を続けた。
「誰がチームを救おうとしたのか、誰が最後まで食らいついてやろうとしたのか。苦しいんだったら、弱いんだったら、それなりに受け入れてやらないといけない。矢印は外じゃなくて、誰かのせいにしても何も意味がない。本気で自分がクラブを救おうとしたのかはもう一度それぞれが自分に問いかけないといけない」
2013年のプロ入りから横浜FM一筋で戦ってきた29歳が目を向けたのは、クラブとしての誇りだった。
「このクラブにいたくてもいられない選手は山ほどいるし、このユニフォームを着て戦いたい人は山ほどいる。それを感じないといけない。苦しいけど、みんなでもがくしかない。打破するために光を探し続けるしかない。自分たちで切り拓くしかないので、ここでいろいろ言うより、みんなでやるしかない」。言葉に力がみなぎっていた。
そんな気迫はおそらく、サポーターにも届いていた。この日の試合後、ニッパツ三ツ沢球技場のゴール裏からは大ブーイングが飛び出したが、選手たちが整列する頃には鳴り止み、互いに向き合った後、その反応はすぐに中2日で行われる次節・G大阪戦に向けて鼓舞するための拍手に変わっていった。
そうしたサポーター思いと向き合った喜田は「彼らはお金を払って、時間を使って、労力を使って、僕たちの試合を見に来てくれて、背中を押してくれて、ブーイングをしに来ているわけではない。彼らもああいうことをするのは苦しいだろうし、本意ではないと思う」と心境を慮り、「それをさせてしまっている自分たちがもっと感じないといけない」と力説。「彼らの思い、行動をもっと胸に刻んでピッチで示さないといけない。それは選手みんなに共有して、自分たちの姿で見せるしか方法はない。やるしかないですね」と言い残し、スタジアムを後にした。
(取材・文 竹内達也)
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