[画像] ホンダ新型EV「N-VAN e:」を見た現オーナーの本音


2024年6月13日に正式発表され、10月10日から販売の新型軽商用EV「N-VAN e:」(写真:本田技研工業)

本田技研工業(以下、ホンダ)が、2024年10月10日に発売することを発表した軽商用EVの新型「N-VAN e:(エヌバン イー)」は、以前から気になっていたモデルだ。なぜなら、筆者はベースとなったガソリン車の「N-VAN」を愛用しているからだ。

商用からレジャー用途まで、幅広いニーズに対応する軽商用バンとして、2018年に登場したN-VAN。新型のN-VAN e:は、フラットで低いフロアや高い天井がもたらす大容量の荷室空間、助手席側のセンターピラーをなくした大開口部など、元来の主な特徴を継承。よりスムーズで静かな走りや給電機能など、EVならではの価値を付加したことが特徴だという。

【写真】ついに正式発表、発売日は10月10日に決定。ホンダの軽商用EV「N-VAN e:」のディティールをチェックする(93枚)

商用以外でも使える「e: FUN」に注目

筆者の所有する2021年式は、趣味やレジャーシーンにもなじむスタイルの「+STYLE FUN(プラス・スタイルファン)」というタイプなのだが、新型N-VAN e:にも同様のグレード「e: FUN」を設定していることも注目点。ガソリン車と比べて、どんな進化や機能が加わったのか気になるところだ。

そこで今回は、ホンダが2024年6月13日に実施した報道向け発表取材会に参加。主に、EV版FUNグレードのe: FUNについて、エコなだけでなく、仕事のクルマや休日のお供として「頼れる相棒」なのかをチェック。ガソリン車から乗り換えしたくなるほど魅力的なのかも含め、実際に実車を見た感想や、愛車と比較した印象などをお届けしよう。


N-VAN e:のリアビュー(写真:三木宏章)

ホンダの軽自動車でもっとも売れ筋の「N-BOX(エヌボックス)」を擁する「N」シリーズに属するバンタイプの軽自動車がN-VANだ。前述のとおり、2018年に登場したこのモデルは、通常は後席や荷室下にある燃料タンクを前席下へ配置する独自技術「センタータンクレイアウト」を採用。これにより、室内の低床化を図るとともに、1945〜1960mmもの全高がもたらす高い天井と相まって、軽商用バンとしてはトップクラスの広い荷室空間を実現している。

また、後席シートだけでなく、助手席側シートにもダイブダウン機構を採用。3席ともに、背もたれを前に倒し、シート自体をフロアに収納する機能を持つことで、ほかの軽商用バンにはない、フラットで広々とした荷室を作り出すことも可能だ。


筆者が普段乗っている愛車のN-VAN(筆者撮影)

これらの魅力により、N-VANは、配送業などの商用ユースはもちろん、キャンプやアウトドアスポーツなどのレジャー用途で使うユーザーも多い。かくゆう筆者も、そんなN-VAN愛好家のひとりで、2021年8月に内外装に遊び心を演出した+STYLE FUNのFF(前輪駆動)ターボ車を購入。撮影機材などを積み込んで取材先へ移動するビジネス用途はもちろん、月に1回程度、バイクを積載してサーキット走行を楽しむトランポとしても使用。公私ともに、高い積載性や使い勝手のよさなどを享受し、かなりお気に入りの愛車となっている。

ベースのN-VANは4月に一部改良を実施


一部改良で設定された特別仕様車「STYLE+ NATURE」(写真:本田技研工業)

なお、現行のN-VANは、2024年4月の一部改良により、安全運転支援システム「ホンダセンシング」をアップデート。アクセルペダルとブレーキペダルを踏み間違えた際に加速を抑制する「急アクセル抑制機能」を追加したほか、アウトドアスタイルの印象を強調した特別仕様車「STYLE+ NATURE(スタイルプラス ネイチャー)」も設定した。また、筆者も所有する従来の+STYLE FUNは、新たに「FUN」グレードと名称を変更している。

現行のラインナップは、NA(自然吸気)エンジン搭載車にスタンダードのGとL、FUNとSTYLE+ NATUREを設定。それにターボ車のFUNターボも用意し、全タイプにFFと4WDを設定。また、オートマチックのCVT車の加え、GとFUNには6速MT(マニュアル・トランスミッション)車も用意する。価格(税込み)は、136万5100円〜201万6300円だ。

N-VAN e:の特徴・ラインナップ


N-VAN e:のエンブレム(写真:三木宏章)

そんなN-VANをベースに、EV化したのがN-VAN e:だ。ラインナップは、4人乗り仕様車に、スタンダードタイプの「e: L4」と、ファッショナブルな印象を加味した前述のe: FUNを設定。また、商用ユースに特化した仕様として、運手席のみの1人乗り車「e: G」と、前席2人乗り車「e: L2」も用意する。いずれも駆動方式はFFのみだ。

なお、e: Gとe: L2は、基本的に企業向け。ホンダの法人営業部と新車オンラインストア「Honda ON」での販売限定で、リース契約のみでの取り扱いとなる。対して、e: L4とe: FUNは法人だけでなく、個人への販売も行っており、ホンダの販売会社「ホンダカーズ」でも取り扱うという。ホンダによれば、実際に2024年5月に開始した先行予約では、受注数などは非公開だが、個人からの注文も入っているそうで、EV版でも仕事と遊びの両方に活用したいユーザーが一定数いるようだ。


グレード設定と取り扱いについてのスライド(写真:三木宏章)

なお、N-VAN e:は、「ジャパンモビリティショー2023(2023年10月28日〜11月5日・東京ビッグサイト)」で先行公開されたが、そのときはスタンダード仕様のみの展示。今回の発表取材会では、前述のとおり、筆者の愛車と同じFUNグレードもお披露目されたので、とても興味津々だ。さっそく、愛車と比較してみよう。

N-VAN e:のスタイリング


N-VAN e:の外観(写真:三木宏章)

外観は、ガソリン車から大きな変更はなく、ちょっと愛くるしい表情を演出する丸目LEDヘッドライトのデザインもそのままだ。ちなみにスタンダード車のヘッドライトも、デザインやハロゲンタイプを採用している点は同じになっている。

ただし、フロントバンパーはやや角張ったデザインとなったほか、ガソリン車FUNの特徴である左右のLEDフォグライトも未装着。そのため、パッと見たときに、スタンダード仕様との違いはヘッドライトのデザインくらいになってしまった。

なお、フロントグリルは、ブラックをベースに白い点模様が入った新型を採用。これは、リサイクル材を使用することで、環境にも配慮したものだ。白い点々は加工時にできるのだが、その模様は1台1台違っており、これにより愛車に特別感を演出する効果も狙っているという。


N-VAN e:のリアビュー(写真:三木宏章)

ボディサイズは、e: FUNの場合で、全長3395mm×全幅1475mm×全高1960mm。筆者の愛車+STYLE FUNのターボ車や現行のFUNターボは、全長や全幅は同じだが、全高はFF車で1945mm、4WDで1960mm。e: FUNは、FFのみの設定だが、全高はガソリン車4WDと同じだから、同じFFのガソリン車と比べると、20mmほど背が高いことになる。

なお、e: FUNやe: L4では、5色のボディカラーに加え、2トーンカラーも設定。とくにe: FUNは、3タイプの2トーンを選べることで、全8色を展開する。ガソリン車の現行FUNは、5色展開でいずれも単色のため、よりオーナーの好みなどに応じたカラー選択をできるのは、EV版のほうだといえるだろう。

ガソリン車FUNターボと比較:運転席


N-VAN e:のインテリア(写真:三木宏章)


筆者が乗っているN-VANのインテリア(筆者撮影)

一方の室内では、ドア内張りや荷室の壁などに、縦のビードデザインを採用しているのが印象的だ。ホンダによれば、このデザインは、コンテナから発想したもので、室内を直線基調でスクエアなイメージとすることで、より広々と見える空間を演出したという。

ちなみに、愛車の+STYLE FUNでは、樹脂素材を使ったブラック基調の内装だ。荷物やバイクを積んで小傷がつくと、その部分がちょっと目立ってしまう。対して、e: FUNの内装は、アイボリーを基調としていることもあり、傷が目立ちにくいし、確かにさらに広さを感じる。ただし、例えば、+STYLE FUNでは、ドア内側のノブまわりにブラックの加飾を施したり、インパネ部分にシルバーを加えたりと、スタンダード仕様より高級感がある。e: FUNでは、そうしたスタンダード仕様e: L4との差別化が少ない印象なのが、やや残念だ。


N-VAN e:のドア内張り(写真:三木宏章)


筆者が乗っているN-VANのドア内張り(筆者撮影)

また、従来あった左右フロントドア内側のポケットはなくなった。筆者の場合、ポケットの助手席側に車検証など、運転席側にはポケットティッシュなど小物を入れている。e: FUNでは、ドアポケットのかわりに、運転席の裏側にシートバックポケットを従来の1段から上下2段に変更(他グレードは1段のまま)。また、助手席の裏にヘッドレスト収納バッグを追加している。おそらく、これらに車検証などの書類や、後席や助手席をフロアに収納する場合に取りはずすヘッドレストを入れる設定のようだ。

N-VANはただでさえ収納スペースが少なく、とくにグローブボックスがないことで、運転席や助手席近くにモノを入れにくい。そのため、ドア内側のポケットは、筆者の場合、小物をすぐに取り出せる収納場所として重宝していた。こうした点で、N-VAN e:は、実際に乗ると、ちょっと使いづらさを感じるかもしれない。

メーターやシフト操作などはEV仕様に


N-VAN e:のメーター(写真:三木宏章)


筆者が乗っているN-VANのメーター(筆者撮影)

運転席では、メーターに7インチTFT液晶タイプを採用。ガソリン車は、中央の速度計や左の回転計はオーソドックスな機械式。右側には燃費や走行距離、安全運転支援システムの作動状況などを示すマルチインフォメーションディスプレイを備える。N-VAN e:が採用した全面液晶パネルのメーターは、すべてがデジタル表示となり、より大きくて見やすい仕様となった。また、多様な情報を直感的に見ることができそうな点も好印象だった。

さらに、e: FUNをはじめN-VAN e:では、シフト操作の方式も変更され、エレクトリックギアセレクターを採用する。最近のホンダ車に多いスイッチ式だ。ガソリン車に採用されているオーソドックスなバータイプのシフトレバーに慣れていると、最初は戸惑う場合もあるかもしれない。だが、慣れれば、スイッチを押すだけなので、よりイージーにシフト操作ができるだろう。


荷物などをかけられるフック。N-VAN e:では、このフックがなくなっている(筆者撮影)

ただし、従来、シフトノブのコンソール下側や助手席側フロントドアのプルポケットにあったコンビニの袋やバッグなどを引っかけられるフック、いわゆるコンビニフックもN-VAN e:ではなくなった。これは、ちょっとした買い物をした際に、荷物を入れた袋などを引っかけるのに便利な装備だ。じつは、原付スクーターなどではおなじみの装備で、バイクのメーカーでもあるホンダならではと思っていたのだが、なくなったのはちょっと残念だ。N-VAN e:は、こうした点も前述のように、運転席から近い位置の収納に関し、やや不便さを感じる要因のひとつだといえる。


フックはなくなったが、充電用USBジャックはエアコンユニット近くになり、使いやすさが向上(写真:三木宏章)

反面、充電用USBジャックは、従来、助手席側インパネ下側にある凹み部分にあったのに対し、N-VAN e:ではエアコンユニットの左横に移設され、運転席からアクセスしやすくなった(タイプ-C対応)。ガソリン車の愛車では、スマートフォンを充電するためにケーブルとUSBジャックにつなぐ際、運転席からだと手だけでなく、上体も助手席のほうへ傾けるか、一度降りて助手席側のドアを開けて接続しなければならない。スマートフォンの充電操作については、N-VAN e:のほうが、やりやすくなっているといえる。

ほかにもN-VAN e:では、1人乗りのe: Gを除く全グレードに、運転席シートヒーターを標準装備する。この装備は、ガソリン車にはないから、冬に運転する際の快適性はEV版のほうが上だといえるだろう。

ガソリン車FUNターボと比較:荷室


N-VAN e:の荷室(写真:三木宏章)

荷室についても、N-VAN e:はガソリン車と同等の広い空間を確保している。また、後席や助手席をフラットに収納できるダイブダウン機構を持つことも同様だ。なお、荷室サイズは、後席を倒した2名乗車時で、長さ1495mm(左)/1335mm(右)、幅1230mm、高さ1370mm。同じ2名乗車時でガソリン車では、長さ1510mm(左)/1330mm(右)、幅1235mm、高さ1365mm(現行モデル1370mm)。両モデルでは、ややサイズは異なるが、ほぼ同様の寸法となっているため、積載性も同等といえるだろう。

ただし、N-VAN e:のe: FUNでは、最大積載量が300kgと、ガソリン仕様FFターボ車の350kgよりも少なくなっている(ガソリン仕様でもターボ4WD車は300kg)。これは、フロア下スペースに搭載したバッテリーにより、車体がかなり重くなったことが関係しているようだ。+STYLE FUNや現行FUNのターボFFの車両重量は970kg。対してEVのe: FUNは、車両重量1140kgだ(e: L4は1130kg)。車体が170kgも重くなっているため、安全面を考慮し最大積載量を減らしたようだ。なお、N-VAN e:でも、1人乗りのe: Gと2人乗りのe: L2は、最大積載量350kgを確保しているため、商用ユースで考えればガソリン車と互角となる。

筆者の場合、N-VANに積む最も重たいモノは、車両重量約200kgのバイク。そのため、もしe: FUNをバイク運搬用のトランポとして使っても問題ないレベルだ。しかも、N-VAN e:は、荷物固定用のロープやタイダウン(長さ調整可能なベルト)などをかけられるタイダウンフックも、ガソリン車と同じく合計8個を確保する。とくに荷室フロアにある4個のフックは、バイクを積載する際に便利で、これもガソリン車と同様に装備する。このように、あくまで筆者が個人的に使う場合としてだが、ガソリン車とEVでは、荷室の広さや積載性などに、ほぼ優劣がないといえる。

ガソリン車FUNターボと比較:パワートレイン


N-VAN e:のボンネットの中には、エンジンではなく、PU(パワーユニット)が搭載されている(写真:三木宏章)

N-VAN e:のパワートレインは、ガソリン車でいうところのエンジンルーム、フロントフード下のスペース内に搭載する。主にギア、モーター、インバーターといった部品から構成する電動アクスルだ。このモデルでは、モーターを高回転化することで、小型化と高い駆動トルクを両立。走りだしからスムーズに加速するEVの特性を持つとともに、荷物をフル積載しても、アクセル操作時に重さを感じにくく軽快に走るという。

なお、N-VAN e:が採用するパワートレインのスペックは、e: FUNやe: L4の場合で、最高出力47KW(64PS)、最大トルク162N・m(16.5kgf-m)。対して、筆者が乗るガソリン・ターボ車は、最高出力47kW(64PS)/6000rpm、最大トルク104N・m(10.6kgf-m)/2600rpm。最高出力は同じだが、トルクはEV版のほうが太い。これにより、例えば、荷物を満載した状態で坂道を登る際などは、よりスムーズに走ることがうかがえる。


N-VAN e:のタイヤ&ホイール(写真:三木宏章)

ほかにもホンダによれば、N-VAN e:は、タイヤを12インチから13インチへ大径化。また、車両重量増に伴いサスペンションのセッティングも見直すなどで、より走りが安定しているという。今回の発表取材会では試乗する機会はなかったため、このあたりは、実際に乗ってみないと定かではない。EV化によりN-VANの走りがどう変わったのかも、かなり気になるところなので、機会があればぜひ試乗してみたい。

航続距離や充電時間、外部給電機能


フロントに充電リッドを配置(写真:三木宏章)

一方、これも気になる航続距離だが、N-VAN e:は、1回の充電における走行距離(一充電走行距離)がWLTCモード値で245kmだ。同様の軽商用EVでは、例えば、三菱自動車の「ミニキャブEV」や日産自動車の「クリッパーEV」の一充電走行距離は、いずれもWLTCモード値で180km。N-VAN e:の航続距離はライバル車と比べ、かなり長いといえる。

また、バッテリーの充電は、フロントグリルの右側にあるハッチを開ければ普通充電が可能で、充電時間は6.0kW出力で満充電まで約4.5時間。また、e: FUNでは、フロントグリル左側ハッチ内に急速充電ポートも標準装備する(ほかのグレードはオプション)。これを使えば、50kW対応の急速充電もでき、約30分で80%の充電を可能とする。


ホンダ パワーサプライコネクターを使って給電している様子(写真:三木宏章)

加えて、N-VAN e:は外部給電機能も備える。右側ハッチ内にオプションの「ホンダ パワーサプライコネクター(Honda Power Supply Connector)」を差し込めば、最大出力1500Wの外部給電も可能。ホットプレートや電気ケトルなどの家電をアウトドアなどで使うことができる。さらに、e: FUNが標準装備する前述の急速充電ポートは、高出力対応の外部給電機能も採用。ホンダが販売する運搬可能な高出力給電器「Power Exporter e: 6000(6000W対応)」や「Power Exporter 9000(9000W対応)」を使えば、たくさんの家電を一度に稼働することも可能だ。これにより、レジャーはもちろん、災害時も自宅の非常用電源として使うことができる。

ほかにも、自宅のソーラーパネルで充電したN-VAN e:を、夜間の家庭用電源として使う「V2H(ビークル・ツー・ホーム)」として活用することも可能。近年、高騰する電気代の節約にも貢献する。そして、こうしたEVならではの使い方ができる点も、ガソリン車のN-VANとは大きく異なる点だ。

なお、N-VAN e:では、独自のコネクティッド機能「ホンダコネクト」も搭載。バッテリー残量の確認や充電開始時間の指定など、スマートフォンから操作できるさまざまなサポート機能も持つ。ホンダ独自の会員サポートサービス「ホンダトータルケア」に加入すれば、無料で利用できる点もありがたい。

価格比較


N-VAN e:のサイドビュー(写真:三木宏章)

N-VAN e:の価格(税込み)は、243万9800円〜291万9400円。とくに、さまざまな機能を標準装備するe: FUNは、最高値の291万9400円と、300万円に届きそうな価格だ。筆者の愛車は、購入当時の税込み車両価格が173万9100円。現行のFUNターボのFFでも188万3200円だから、いずれも200万円を切る。

ただし、N-VAN e:の場合は、国や地方自治体の補助金を使えば、かなり安く購入できるのも確かだ。例えば、個人の場合、国の令和5年度補正CEV補助金が55万円(法人対象のLEVO補助金では約100万円)だ。さらに筆者のように東京都に在住している場合、東京都の令和6年度ZEV(ゼロエミッションビークル)車両購入補助金も使え、給電機能を持つe: FUNなら補助額は45万円だ。いずれも自分で申請が必要ではあるが、もし計100万円の補助金を受けられれば、税込み車両価格は191万9400円となる計算だ。

そう考えると、N-VAN e:も、がぜん魅力的な価格となる。だが、気になるのが1回の充電で走行できる航続距離。例えば、筆者が休日にバイクを載せてスポーツ走行を楽しみに行く茨城県の筑波サーキットの場合。自宅から往復で約260kmあり、前述したN-VAN e:の航続距離245kmでは、途中で充電をしないと帰れない。もちろん、筑波サーキット内には急速充電器があり、空いていればバイクで走行中に充電することは可能。もしくは、帰りなどに高速道路のSAなどにある充電設備を使うこともできる。ただし、ガソリン車なら給油は5分もあればできるが、EVの場合は、急速充電でも約30分かかるのはちょっと面倒に感じるのはたしか。このあたりは、実際にやってみないと、なんとも言えないところだ。

それよりも大きな問題は、自宅にEV用充電器を設置できるかどうかだ。夜間に充電しておかないと、翌日に仕事や遊びで移動する際に心配だからだ。だが、筆者の場合、駐車場は自宅内になく、やや離れた場所に借りている。そのため、自宅に充電器を設置しても、夜間などにN-VAN e:を充電することはできない。また、自宅や駐車場は賃貸なので、管理会社や大家の承諾がないと設置できないし、そもそも駐車場には充電器を設置できる場所もない。

充電設備次第では一般ユーザーでも選択肢に入る


6月13日に行われた発表取材会で登壇した、本田技研工業の高倉記行さんと坂元隆樹さん(写真:三木宏章)


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こうした問題は、例えば、マンションに住んでいる人なども同様だろう。最近は、東京都で新築マンションのEV充電設備設置が2025年から義務化されると聞く。だが、それ以前に建てられたマンションなどでは、新たに充電器などを設置するには、管理組合などの承諾が必要。駐車スペースは、マンションの共用スペースとなるためだ。加えて、導入費用やランニングコストの負担をどうするかなども問題。管理費などでまかなうにしても、マンションの住人すべてが、EVに乗っているワケではないためだ。

もちろん、個人でも、一戸建ての持ち家で、自宅敷地内に駐車場を持つ人なら、EVの導入は可能だろう。だが、借家やマンション住まいの人など、筆者をはじめとする多くの個人ユーザーにとっては、いまだにハードルが高い。そう考えると、軽商用EVの場合、まずは配送業など企業への導入が先になるのは、致し方ない面もある。いずれにしろ、カーボンニュートラルの実現に向け、より多様なユーザーがEVを選択するには、まだまだ多くの課題が残っていることだけはたしかだ。

(平塚 直樹 : ライター&エディター)