―米国のITジャイアントが軒並み参戦、「生成AI」標準実装時代の新出世株を探せ―

 東京株式市場は強弱観対立のなかも足もとは次第に強気優勢の色を帯びてきた。日経平均株価は今週に入りボックス上限の3万9000円台前半を離脱、4万円大台挑戦のムードを漂わせている。折からの為替市場での円安進行によって日本株の割安感が増幅され、海外投資家の日本株への資金還流を誘発している。円安が輸出採算改善の観点でハイテクセクターに追い風となる一方、物価への影響から円安を阻止したい日銀の金融政策正常化に向けた思惑を背景に、運用面で追い風となる銀行や保険といった金融株にも改めて投資マネーが流れ込んでいる。

 ただ、全般相場が底上げとなった後は、次の投資ターゲットを求めて個別銘柄選別の動きが強まる。いわゆるテーマ物色の波が形成されるが、成長シナリオが描けるセクターとしては、やはり 生成AI周辺でビジネスチャンスを捉える企業が最右翼といえる。生成AIの加速度的な拡大がデータセンター建設特需をもたらしているのは周知の通りだが、クラウドサービスであるがゆえの限界やリスクも内包している。それを解消する新技術が「エッジAI」であり、米国をはじめとする世界のビッグテックが同分野に経営資源を注ぐ動きが顕在化している。東京市場でもエッジAI関連株が脚光を浴びそうだ。

●生成AI急拡大でもう一つの「時代の要請」

 生成AIは文字通り日進月歩で進化を遂げているといってよいが、つれて利用者層も急速な伸びを示しているのはいうまでもない。Web検索に生成AIが自然に導入されるようになり、これはインターネットを日々活用する我々にとって、生成AIもまたその一つのピースとして日常と同化する段階に入ったことを意味する。

 しかし、クラウドサービスの難点は利用者が殺到することでレスポンスの遅延や、プライバシー保護などセキュリティー面のリスクをはらむことだ。また、今は生成AI市場の拡大で必須となるAIサーバーの増設によって電力需要の膨大化も警戒される状況にある。こうした環境下でクラウド経由ではなく、ネットワークの末端にあるデバイス、つまり「エッジ(端)」にAIを組み込むことによって、ユーザー層には迅速なレスポンスやプライバシー保護、通信コスト面での優位性を提供し、ベンダー側にとっても電力消費の問題やインフラ拡充の遅れといったリスクがカバーされる。これがエッジAI導入のコンセプトだ。

●チャットボットを“持ち歩く”時代に

 では、ネットワークの端末にあるデバイスとはどういうものか。それは最も分かりやすいのは我々が肌身離さず所有しているスマートフォンが挙げられるが、エッジAIの本格普及は、ユーザー層にとって具体的なところで チャットボットの利用などで福音となる公算が大きい。このほかパソコンはもちろん、エレクトロニクス化が進展する自動車や、街中のさまざまな場所に設置されているAIカメラなども該当する。

 ネットに接続困難な場所や状況にあっても、常に(生成AIを含む)AIを至近距離で活用することができる。例えばAI活用でレスポンスの速さが求められる事例としては、1秒の差で事故と隣り合わせの自動車などで非常に重要性が高い。自動運転の本格普及期にはエッジAIはなくてはならない技術といえる。

●目の色を変える米IT大手、再び爆需発生か

 米国ではエッジAIに関して半導体ファブレス大手のクアルコム がスマホ分野で先行している。同社のスマホ向けプロセッサーが生成AI対応の先駆的商品として注目度が高い。しかし、他の米ビッグテック各社が同分野で手を拱(こまね)いているはずもなく、アルファベット 傘下のグーグルやアップル なども生成AIをスマホに搭載する計画に意欲的だ。また、マイクロソフト は生成AIを迅速に動かす機能を搭載したパソコンを開発したことを5月に発表している。