[画像] 大宮がビッグクラブに?『レッドブル』が所有するクラブの劇的すぎる「ビフォーアフター」

エナジードリンクの販売を世界的に展開する『レッドブル』が、J3・大宮アルディージャの経営に参画することが報じられている。

レッドブルは1984年にオーストリアのザルツブルクにて設立され、短期間で世界的な企業へと急成長。スポーツ界にも早い段階で参入し、大々的に宣伝を行っている。

サッカー界には2005年に参入し、それからおよそ20年が経った。同じグローバル戦略をとる『シティグループ』ほどの成功は収めていないものの、サッカー界の一大勢力の一つになったといえるだろう。

ここでは、そのレッドブルが所有するサッカークラブと彼らの買収前・買収後の変化などを見ていこう。

レッドブル・ザルツブルク

買収前のクラブ名:アウストリア・ザルツブルク
買収後のクラブ名:レッドブル・ザルツブルク

当時のカテゴリー:ブンデスリーガ1部
現在のカテゴリー:ブンデスリーガ1部

買収前のチームカラー:紫白
買収後のチームカラー:赤白

買収前のスタジアム:ヴァルス・シーツェンハイム(18,200人)
買収後のスタジアム:レッドブル・アレーナ(30,188人/改修)

買収前の主なタイトル:リーグ優勝3回
買収後の主なタイトル:リーグ優勝14回(合計17)

買収前の有名選手:オリヴァー・ビアホフ、ヴォルフガング・ファイアージンガー
買収後の有名選手:アーリング・ハーランド、サディオ・マネ、南野拓実、ジョバンニ・トラパットーニ(監督)

レッドブルのサッカー界への進出は2005年、彼らのお膝元であるザルツブルクから始まった。

買収したのは1933年創設で、90年代に3度のリーグ優勝を誇るアウストリア・ザルツブルク。21世紀に入ってからは低迷し存続が危ぶまれていた。

アウストリア・ザルツブルクは紫を基調としていたが、レッドブルはこれを一新する。企業カラーを全面に押し出した赤白へと変更し、クラブ名もレッドブル・ザルツブルクへと改名した(*)。

南野拓実と奥川雅也

レッドブルは買収後すぐに世界各国から選手を補強し、日本からも宮本恒靖、三都主アレサンドロを獲得している。これはエナジードリンクの販売が日本で苦戦していたことによるもの。

以降は国内で事実上の1強状態となり、2013-14シーズンからはリーグ10連覇を達成。アーリング・ハーランド、サディオ・マネに代表されるように世界的なタレントも輩出し、日本人では南野拓実、奥川雅也に続き、先日には川村拓夢を獲得している。

(*)この方針にサポーターらは反発し、新たにSVアウストリア・ザルツブルクを立ち上げている

ニューヨーク・レッドブルズ

買収前のクラブ名:メトロスターズ
買収後のクラブ名:ニューヨーク・レッドブルズ

当時のカテゴリー:MLS(降格なし)
現在のカテゴリー:MLS(降格なし)

買収前のチームカラー:赤黒
買収後のチームカラー:赤白

買収前のスタジアム名:ジャイアンツ・スタジアム(80,242人)
買収後のスタジアム名:レッドブル・アリーナ(25,000人/新設)

買収前の主なタイトル:なし
買収後の主なタイトル:サポーターズ・シールド3回(MLSカップ準優勝1回)

買収前の有名選手:ロベルト・ドナドーニ、ローター・マテウス、トニー・メオラ、ティム・ハワード
買収後の有名選手:ティエリ・アンリ、ジュニーニョ・ペルナンブカーノ

次にレッドブルが目を付けたのが世界一の経済大国アメリカであり、その中心地ニューヨーク(*)で生まれたメトロスターズだ。

アメリカは1994年ワールドカップ開催でサッカー人気が沸騰し、1996年にMLSが発足。メトロスターズはその“オリジナル10”で、ロベルト・ドナドーニ、ローター・マテウスら当時の世界的なスター選手が加わり、大都市のクラブということもあって大きな成功が期待された。

かつてのメトロスターズ

ただ想定していたような成績はあげられず、2006年にレッドブルが買収しニューヨーク・レッドブルズへと改名した。MLSはちょうどこの頃から再びスター選手の加入が続き、レッドブルズにもティエリ・アンリ、ジュニーニョ・ペルナンブカーノらレジェンドが在籍。2013年には日本人の木村光佑もプレーしている。

買収後はイースタンカンファレンスのレギュラーシーズンで5度も1位になっている。しかし頂点には立てておらず、2015年に誕生しシティグループが所有するニューヨーク・シティに後塵を拝している状況だ。

(*)ただし実際の拠点は隣接するニュージャージー州である

RBライプツィヒ

買収前のクラブ名:SSVマルクランシュタット
買収後のクラブ名:RBライプツィヒ

当時のカテゴリー:5部リーグ
現在のカテゴリー:ブンデスリーガ1部

買収前のチームカラー:青白
買収後のチームカラー:赤白

買収前のスタジアム名:ツェントラールシュタディオン (47,069人)
買収後のスタジアム名:レッドブル・アレーナ(47,069人)

買収前のタイトル:なし
買収後のタイトル:DFBポカール2度(ブンデスリーガ2位2回、3位3回)

買収前の有名選手:特になし
買収後の有名選手:ティモ・ヴェルナー、ナビ・ケイタ

レッドブルが次なるターゲットとしたのがオーストリアと同じ言語圏のドイツであり、旧東ドイツの主要都市だったライプツィヒだ。

レッドブルは当初ライプツィヒの強豪クラブを買収しようとしたが、強硬な反対運動にあい断念。代わりに当時5部のSSVマルクランシュタットという小さなクラブのライセンスを買収し、(過去の歴史を引き継がず)新たなクラブとしてスタートさせた。

彼らはここでもクラブ名に「レッドブル」を付けようとした。しかしドイツの規定ではスポンサー名を付けることはできないため、「RasenBallsport」をRBとすることでこれを回避した。もちろん事実上は「Red Bull」の略称である。

買収後の躍進はご存知の通り。8年でブンデスリーガに到達すると、今ではバイエルンやドルトムントを脅かす存在となっている。

レッドブル・ブラガンチーノ

買収前のクラブ名:ブラガンチーノ
買収後のクラブ名:レッドブル・ブラガンチーノ

当時のカテゴリー:全国選手権2部
現在のカテゴリー:全国選手権1部

買収前のチームカラー:白黒
買収後のチームカラー:赤白

買収前のスタジアム:ナビゾン(17,724人)
買収後のスタジアム:ナビゾン(17,724人)

買収前の主なタイトル:サンパウロ州選手権1回(全国選手権の準優勝1回)
買収後の主なタイトル:なし(コパ・スダメリカーナ準優勝1回)

買収前の有名選手:カルロス・パヘイラ(監督)、ヴァンデルレイ・ルシェンブルゴ(監督)、ザーゴ(監督)
買収後の有名選手:ルーカス・エヴァンジェリスタ

世界的にも大きな市場を持つブラジル。レッドブルは2007年にレッドブル・ブラジルというチームを設立しているが「10年での1部リーグ到達」という目標に届かなかったため、2019年にブラガンチーノと合併する形で誕生したのがこのクラブだ。

ブラガンチーノは過去にセルジオ越後がブラジル時代に所属し、元日本代表FW呂比須ワグナーが監督を務めたクラブでもある。

1928年創設と長い歴史を持ち、1990年にはサンパウロ州選手権で優勝、翌年には全国選手権で準優勝しているが、小さなクラブで継続的な成功は難しく、基本的に2部と3部を行き来するようなクラブだった。

とはいえ拠点は大都市サンパウロ。さらに2019年はちょうど2部リーグに昇格したタイミングでもあり、いち早く成功を収めるのにはレッドブルにとって打ってつけのクラブであった。

買収後はクラブハウスなどの環境が整備され、かつて白黒だったチームカラーはもちろん赤白へと変更。買収初年度には元鹿島アントラーズのザーゴ監督のもと2部リーグを制して昇格し、以来1部リーグに留まり続けている。

これまでタイトルはないものの2021年と2023年には全国選手権で6位に。2021年には南米のELに相当するコパ・スダメリカーナで準優勝するなど国内の強豪クラブへと成長している。

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以上のようにレッドブルがターゲットとするのは、世界的な市場を持つ国のクラブである。彼らは買収後、容赦なくクラブ名とチームカラーを変更する一方、成績は確実に向上し、スター選手の獲得やスタジアムの新築・改修なども期待できる。

ただレッドブル・ブラジルのように目標が達成されなければ他クラブとの吸収合併も辞さない。現在J3の大宮は果たしてどのような運命をたどるのだろうか。