[画像] 新たな若き力が台頭…広島MF中島洋太朗にスキッベ監督も期待「今後も楽しみ」

 1−1で迎えた試合終了間際、ボールを収めたFWドウグラス・ヴィエイラを追い越してMF中島洋太朗が前に走った。ペナルティエリア前中央でパスを受けると、ホームの歓声が沸き起こる。決めれば劇的勝利。期待を一身に背負った18歳は軽快なステップとしなやかなキックフェイントで相手をかわして右足を振り抜いた。

 サンフレッチェ広島は26日、2024明治安田J1リーグ第20節でアルビレックス新潟をホームに迎えて1−1で引き分けた。中島は87分からピッチに立ち、トップデビューを果たしたJ1第5節のガンバ大阪戦(3月30日)以来、2度目の出場。後半アディショナルタイム4分に最後のチャンスで渾身の右足シュートを打ったが、わずかにゴール左へ逸れて悔しそうに頭を抱えた。

 惜しくもチャンスを生かせなかったが、「(最初は)シュートまでいくのは考えていなかった。でも、ちょっとずつ相手がどう出るかを見ながらボールを持っていたら2人目(のDF)が来たので、そこをうまくかわしてシュートまで行きました」とプレッシャーがかかりそうな場面でも冷静に状況を見極めていた。ただ、得点を決めきれず、「シュートまでは良かったけど、入っていないので悔しいし、次は決められるように頑張りたい」と悔しさを噛み締めていた。

 試合後、ミヒャエル・スキッベ監督は会見で、「最後の洋太朗のシュートが入っていたら、サンフレッチェ史上に残る素晴らしい物語が書けたと思いますが、そこは少し残念です」と笑みをこぼした。

 広島はユース出身のMF野津田岳人とMF川村拓夢のボランチ2人が海外移籍で抜けて以来、初めてのホームゲームだった。そこでボランチに入った広島ユース育ちの中島が決勝ゴールを決めていれば、それは素晴らしい流れだったに違いない。ただ、広島で育った選手が旅立っても、また新たに若い選手が出てくる。そんなサンフレッチェ広島というクラブの強さを象徴するようなシーンでもあった。

 スキッベ監督は中島の起用について、「我々はもともと若い選手を使っていくクラブ。今回は移籍によって中盤の選手が抜けたので彼を入れました。彼にとってはチャンスをつかむいい時期だと思う。今日の試合を見てわかったと思いますが、前へボールを持っていける才能のある選手なので、今後も楽しみにしています」と期待を込めて話した。

 アディショナルタイムを入れてもプレー時間は約7分間。中島は、「引き分けの状況だったので、とにかく点に絡んでチームを勝たせたい思いでピッチに入った。監督や選手たちからも『前に行っていいよ』って言われたので、やりやすかったし、思い切って前に行けたので、あとは決めるだけだった」と振り返り、「攻撃のところで、自分の長所は自信を持ってできているし、やれる手応えもある。そこはどんどん出していきたい」と収穫を口にした。

 チームからボランチが2人抜けたため、中島にとってもアピールチャンスのとき。「結果を残すことが本当に大事だなと思ったので、次はああいうシーンで決めてチームを勝たせられる選手になっていきたい」と決意を新たにし、「少しずつチャンスはくると思う。そこで自分で勝ち取って出場機会を増やして、チャンスをつかめるように頑張っていきたい」と意気込んだ。

 今回の悔しい決定機逸も中島洋太朗が描く成長物語の一部。デビューを飾ったG大阪戦では鋭いクロスでチャンスを作るなど、少ないプレー時間ながらピッチに立てば、確実に存在感を示している。広島で育った先輩たちのように、中島が輝くときも来るはずだ。「(スタジアムは)最高の雰囲気だし、もっと長い時間このピッチでプレーしたいので、出場機会を増やしていけるように頑張りたい」。また広島の新たな物語が動き出した。

取材・文=湊昂大