続いて7月に入ってからは、TSMCとASMLの決算が発表される。4月には両社の業績が市場予想に届かなかったとして、市場にちょっとしたショックを与えたが、その後のTSMCの月次データを見ても、順調に売り上げを伸ばしており、今度は市場の期待を裏切るような結果にはならないだろう。言うまでもなく、両社の決算は、実際のAI半導体市況の動きを知るためのバロメーターとなる。

 その後、今回取り上げた企業を含めて各社の決算が続々と発表されるが、ひとつ確かなのは、冒頭に記したように今後は、本格的に企業向けのAI需要が高まっていくだろうということだ。デル・テクノロジーズ の2025年1月期第1四半期のAIサーバー売上高は17億ドルと前四半期の8億ドルから急増した。増加したのは、準大手クラスのクラウドサービス会社向けと大手企業向けと思われるが、この結果がこうした流れを裏付けている。

 一方、AIの高性能化に伴い、データセンターもますます巨大化していく。データセンター向けのAI需要と企業向けのAI需要。この二つを両輪として、さらにAI関連市場は成長していくだろう。各社とも、この半年の株価上昇でバリュエーション面での割高感を指摘する声も聞かれるが、こうした前提に立てばまだまだ上値余地がある。

 この半年を振り返ると、現時点では、エヌビディア、マイクロソフトに加え、アップルが株式市場から生成AI戦略に対する信認をある程度回復したと思われる。今後この状況に変化があるのかどうか。各社の動向と決算を一つ一つ丁寧に検証しながら、今後の投資戦略を検討したい。



【著者】
今中能夫(いまなか・やすお)
楽天証券経済研究所チーフアナリスト 

1961年生まれ。大阪府立大学卒業。岡三証券、シュローダー証券、コメルツ証券などを経て2005年より現職。1998~2001年、日経アナリストランキングソフトウェア部門1位、2000年、同インターネット部門1位。ハイテク業界、半導体業界を対象にした綿密な企業分析に定評がある。楽天証券の投資家向けサイト「トウシル」で注目企業の詳細な決算分析動画およびレポートを随時、公開中。

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