もともと食べることが大好きで、人よりもたくさん食べる・飲むという暮らしから突然の不調、そしてスキルス胃がんと告知され、胃の全摘出を経験した沖縄県にお住いのユッキーさん(仮称)。食事量の変化から胃カメラを受けたところ、病気が発覚したそうです。すぐに手術を受けた結果、食事内容に変化はありつつも発症前と変わらず食事や趣味を楽しみながら過ごしています。「早期発見・早期治療が本当に大切なんです」とブログやSNSでも発信する裏側の思いに迫りました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年1月取材。

≫【動画】ユッキーさんの闘病インタビュー 「胃を全摘 がんと闘うグルメブロガー」

体験者プロフィール:
ユッキー(仮称)

北海道出身の43歳。沖縄移住した会社員で、一児の母。食べ飲み歩きの趣味からブログを10年ほど運営中。42歳でスキルス胃がんと診断され、胃全摘を経験。胃がんが判明してからは「5年生存率を上げるブログ」を開設。闘病に関する沖縄県内メディアの取材・執筆を受ける。(instagram / メインブログ)

記事監修医師:
梅村 将成
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

食べることが大好きなのに、突然食べる量が減少 病院で「スキルス胃がん」の告知

編集部

胃がんが発覚するまでの経緯を教えていただけますか?

ユッキーさん

食べることが好きで、一般の女性よりも食事量が多い方でした。ですが、あるとき食べる量が減ったような気がしたんです。例えば、ラーメン一杯にトッピングして完食していたのに食べられない、という感じです。そこで、「胃カメラを受けてみよう」と思い受診すると、そのままの流れで胃の細胞を取って検査に回され、後日「スキルス胃がん」の告知を受けたというのが大まかな流れです。その後は紹介状を書いてもらい、大きな病院へ転院しました。

編集部

食べる量が減っただけで検査を受ける行動につながらない気がするのですが、なぜ胃カメラを受けるまで至ったのでしょうか?

ユッキーさん

もともと私の父や祖母が胃がんだったので、がん家系であることが頭の片隅にあったのが大きいです。あとは、広島県に旅行へ行ったときに、著名人のがん検診のポスターを見たのがすごく記憶に残っていて、この二つが大きなきっかけです。

編集部

なるほど、突然のことで驚かれたのではと思います。当時どのような心境でしたか?

ユッキーさん

精神的に不安定になりました。どのくらい進行しているのかが分からない状態のときは、「このまま死ぬかもしれない、やりたいことができなくなるかもしれない」という不安に押しつぶされそうでした。それまで仕事もフルタイムで勤務していたので、業務ができなくなるのではという焦りもありました。仕事に集中している時はよいけれど、ふとした瞬間に涙が溢れて決壊することが多かったです。でも、それと同時に「自発的に胃カメラを受けてよかった」とも思いました。

入院部屋の様子

編集部

その後、どのように治療を進めていくと先生に言われましたか?

ユッキーさん

一度転院をしたのですが、転院後の病院で術前に受けた検査結果で「臨床分類ステージは2B」と言われました。臨床分類ステージ2Bの標準治療は胃全摘+リンパ節郭清ですが、手術直前の胃カメラで私のがんの進行を見た医師から「手術所見によっては、脾臓に加えて胆嚢も摘出する可能性がある」と言われていました。そして、術後の病理検査結果から、「病理分類ステージ3A」で確定し、このステージに沿った標準治療を行うことになりました。具体的には、術後1ヶ月の血液検査の結果を受けて錠剤の「TS-1」を服用開始して、その後に点滴(ドセタキセル)での治療を行いました。

胃の全摘出術を経験。術後のリハビリと退院後の過ごし方

編集部

実際に治療を始めるとなると、周りの方からの理解や協力が必要になると思うのですが、周囲の方へ病気に関するご相談などはされましたか?

ユッキーさん

職場では一緒に仕事をしていた最小限のメンバーに病気のことを伝えて、仕事の調整をしました。あとは、偶然私の友人で胃腸内科の先生がいるので、話を聞いてもらいました。すると、その人からは「治療法はガイドラインで決まっているので、腕の確かな先生に早く診てもらった方がいい」と言われました。実はこれがきっかけで、胃がんのスペシャリストの先生がいる急性期の病院へ転院することになりました。

編集部

では、そこからどのように進みましたか?

ユッキーさん

初診から手術までは10日間程度で、仕事の引継ぎをしながら毎日病院へ行きました。初診の段階で「胃の全摘出です」と告げられて、手術に向けた検査(血液検査・バリウムなど)をしました。手術は無事に終わり、翌日からリハビリを開始しましたが、めまいがして立てず、ベッドに腰掛けるだけで大変でした。もともと体力に自信がある方だったのに、翌日は理学療法士のマッサージ程度でいっぱいでしたね。2日目からは理学療法士・看護師から「歩いてね」と言われるので、傷に響かないようゆっくりと入院病棟を歩いていました。

編集部

2日目からリハビリを始められたのですね! 具体的にどのようなリハビリをされましたか?

ユッキーさん

2日目は歩行中心で、3日目に術後初めて水を飲みました。急に動けるようになって、体力も戻って歩いたり軽い運動するなどのリハビリができたりして「人間の体ってすごい!」と思ったのを覚えています。4日目からは病院食を開始し、ほぼ完食して先生から驚かれましたね。

編集部

入院期間が終わって退院してからはいかがでしたか?

ユッキーさん

退院後はもう普通に動いていました。自宅でゆっくりしようかなと思ったのですが、入院で2週間ほど家にいなかったこともあり、帰ってきた瞬間から子どもの遊びに付き合っていました。退院した直後から子どもと3~6km歩いていたようです。

前の暮らしとそこまで変わらず過ごせていることに感謝

編集部

スキルス胃がん発覚の前後で、どのように生活が変わりましたか?

ユッキーさん

正直、そこまで大きく変わってはいません。入院中の食事から問題なく食べていたので、体力が劣ったという感覚はありません。退院直後は通常通り過ごせていたように感じます。ただ、食事中に食道にご飯が詰まってしまったり急にダンピング症候群になってしまったりとかはありますが、基本的には普通に過ごしています。

編集部

もともと食事量が多いと言われていましたが、病気が分かる前と後で食生活にどのような変化がありましたか?

ユッキーさん

病気がわかる前は、ラーメン一人前では足らず大盛りにする、サイドでご飯ものをつける、トッピングを付けるなどが多かったです。病気の告知後から入院するまで食事制限もなかったので、好きなものを食べていました。食べる量はさすがに少し減りましたが、一人前は食べられていました。術後は胃がないので、急に食べると入っていかずゆっくり食べていますが、術後10カ月ほど経った今ではラーメン一人前を完食できる程度に回復しています。何も知らない人から見たら、おそらく胃がない人とは思わないでしょう。

編集部

それは治療が合っていたからこそでしょうか?

ユッキーさん

胃がん患者は手術後に内服薬と点滴を併用することが多いのですが、私は点滴(ドセタキセル・オキサリプラチン)を試すも、体に合わなかったんですよね。なのでTS-1のみでの治療を行っていて、それが私に合っていたのか現在、比較的生活が安定しています。現在はダンピング症候群が出にくいものや食道に詰まりにくいものを主に食べています。

編集部

術後の具体的な食事内容の変化を教えてください。

ユッキーさん

私の場合、食道に詰まってしまうので焼き魚が苦手になりましたが、刺身は食べられます。そして魚と同じたんぱく質系の食事でも焼肉は詰まらず食べられます。ただ、個人差はあると思いますが炭水化物がダンピングにつながりやすいようで、ごはんやパンの量は減らしつつ、たんぱく質のおかずを食べるようにしています。

編集部

食道に詰まってしまうのですね。

ユッキーさん

ぱさぱさしたものを食べると、どういうわけか食道の途中で詰まってしまって、水でも流し込めなくてずっと止まってしまうので、30分くらい苦しいというときがたまにあります。

編集部

衝撃です。今のユッキーさんの体調はいかがでしょうか?

ユッキーさん

今は内服薬だけに絞って、大きく体調を崩すことはありません。おかげで車の運転もできますし、趣味のライブ観戦のために飛行機での長距離移動もできて、以前と変わらず過ごしています。ただ、少し疲れやすいと感じることがあるのと、食後に眠気を感じて自分ではどうしようもできないときがあります。その時は、無理せず30分くらい寝るようにしています。

編集部

お変わりないとはいえなかなかハードな闘病期間だと思いますが、心の支えは何でしたでしょうか?

ユッキーさん

家族、実家の両親の存在、そして何気なく会話してくれる友人です。あとはSNSのフォロワーさんからメッセージをいただくことが多くて、救われていましたね。そして趣味のライブを観に行って気分転換していました。

ユッキーさんと息子さん

編集部

ユッキーさんはSNSやブログで記録を残されていますが、発信活動の裏にはどんな思いがありますか?

ユッキーさん

病気の状態や副作用、私の感情をインターネットに残すことで、頭の整理やストレス発散をしています。もちろん自分の経験を表に出したくないという方もいると思いますが、私の場合は日本全国で同じような病気を抱えている方に1人でもつながって読んでいただければ嬉しいです。何より、今回の経験で病気の早期発見・早期治療が本当に大切だと思ったので、そこを感じ取っていただける方がいればいいなと思っています。

編集部

実際に読者の方やフォロワーさんからコメント・メッセージをいただくことはありますか?

ユッキーさん

SNSでは本当にたくさんいただいて、「自分も実は病気です」「家族が病気で同じような環境です」などさまざまなメッセージがありましたし、ご連絡のほとんどが私自身ポジティブになる応援ばかりでした。本当に勇気づけられて、ありがたかったです。

編集部

一番辛かった時期のユッキーさんに、今ならなんと声をかけますか?

ユッキーさん

私の場合、ドセタキセルの副作用の期間が本当に辛くて、実はブログにも「死んでしまいたい」と書くほどのものでした。副作用は一週間くらいで落ち着いてくるのですが、それも知らなかったのでひたすら辛くて。その時期の自分に声をかけるなら、「明けない夜はない。期間は限られているので、その期間だけでも頑張ってほしい」と伝えたいです。

編集部

最後に読者の方へ一言お願いします。

ユッキーさん

早期発見・早期治療が大事だと痛感しました。私は治療のおかげで今でもご飯を食べられていますが、もう少し早く胃カメラを受けておけば……と思うことがあります。また、主治医と話をしていると、コロナ禍で家から出られず我慢していた方がたくさんいらっしゃって、いよいよ不調がひどくて来院しても治療できないほど悪化しているということが少なくないそうです。医師の方はすごく悔しい思いをされています。そんな状況はどうにかしたいと思いますし、みなさんも違和感があったらすぐに近くのクリニックへ行ってほしいです。

編集部まとめ

どうしても忙しい中で健康診断・定期健診の受診に行けないという方は多いと思いますが、やはり病気の早期発見・早期治療はなにより大切です。ぜひ今回のユッキーさんのお話を読んだ方は、体の不調を放置せずに病院へいってください。また、職場や地方自治体での検診も積極的に受けるようにしましょう。

なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

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