ファッションブランドのユニバーサルスタンダード(Universal Standard)は、2015年にアレックス・ウォルドマン氏とポリナ・ベクスラー氏によって創設され、10年近くにわたって多様なサイズ展開を行うインクルーシブブランドとして先陣を切ってきた。そのため、同ブランドが最近黒字化を達成したことは、前回のファッションマンスにおいてサイズ展開が減少したことを考えると、特に重要なニュースだ。

過去の米グロッシー記事によると、2021年、ユニバーサルスタンダードの収益は70%以上増加した。2022年には、CEOのベクスラー氏が同社の収益が前年比で約60%増加したと発表した。顧客の80%以上はリピーターである。

ユニバーサルスタンダードのインクルーシブなデザインを指揮するのは、CDO(デザイン最高責任者)のラモン・マーティン氏だ。同氏は、ユニバーサルスタンダードで勤務してきた5年間のあいだ、新たに発売された水着や肌着の商品ラインを含め、ブランドのスタイルにおける着心地を重視してきた。この方針と顧客中心のビジネスモデルが、同ブランドの黒字化の達成に貢献した。

すべての顧客に同じ品質・同じ着心地のよさ・同じ価格の商品を提供する



「もしインクルーシブなサイズ展開を約束するなら、驚くようなことがないように、ビジネスに組み入れなくてはならない。公平なファッションシステムを構築し、サイズの大小に関わらず、すべての顧客が同じ品質や同じ着心地のよさ、同じ価格の商品を買い求められるようにすることだ」とマーティン氏は語る。「将来に向けて前進するために、ブランドは長期的に全力で取り組む必要がある」。

全世界のインクルーシブなアパレル市場は2028年までに2兆ドル(約304兆円)に達するとスタティスタ(Statista)は予測しており、これは市場調査企業である同社が予測した2024年末までの1兆7900億ドル(約272兆円)より10.5%増えている。

マーティン氏によると、ユニバーサルスタンダードは現在カテゴリーと商品の拡大に注力している。同ブランドは1月に、モデルでインクルーシブファッションの提唱者であるローレン・チャン氏(@lcchan:インスタグラムのフォロワー数90万6000人)が手がける多様なサイズ展開を行うラグジュアリーファッションブランドであるヘニング(Henning)と共同で、限定のコラボ商品を発売した。このコレクションは、ユニバーサルスタンダードがチャン氏から創設4年のヘニングを買収してからおよそ1年後に発売されたものだ。

ユニバーサルスタンダードは2023年6月に水着を発売し、4月にはさらに充実した水着コレクションを発売する。また同月には「フィットリバティ(Fit Liberty)」という回収プログラムも再開し、顧客は購入した商品と自分のサイズが合わなくなったとき、別のサイズに交換できる。また、2022年に発売した下着の商品ラインも拡充する予定だ。

「我々は開発過程に徹底的に踏み込んだ。トラブルシューティングやテストを繰り返し、多くの改良を重ねた。また、商品をボツにしたこともたくさんあったが、これは非常に重要なことだった」と、マーティン氏は同ブランドのカテゴリー拡大への姿勢について話した。

マーティン氏は米グロッシーの取材に応じ、革新的で思いやりのあるデザインによって、ユニバーサルスタンダードがどのように収益性があるブランドへと成長したかについて語った。また、ユニバーサルスタンダードが販売商品を拡大し続けるなかでの今後の展開についても教えてくれた。

ユニバーサルスタンダードのデザインプロセスがいかに収益性を生み出すか



「インクルーシブなサイズ展開というのは非常に難しい挑戦だった。しかし、我々は顧客の生活に寄り添い、米国のリアルなファッション顧客にサイズ展開を合わせてきた。デザインと着心地の製造過程は18号のサイズから開始している。当社にとってデザインと着心地のプロセスを同等に扱うことは重要だ。当社は00号から40号までのサイズ展開で商品を製造しており、デザインのクオリティと着心地は、2号サイズでも32号サイズであろうと等しくなることを保証している。ほとんどのブランドはサイズ展開について、デザインプロセスの終盤に製造レベルで作業を行うが、我々は逆に、デザインプロセスの初期段階からあらゆるサイズに配慮し、製造過程全体を通して留意し続けている。収益性について、そしてどのようにビジネスを拡大させて収益をあげてきたかについては、顧客の問題を解決するために取ってきた重要な取り組みに起因する部分が大きい。顧客の声に耳を傾けて顧客のニーズを確実に満たし、着心地の体験をより高め、あらゆるサイズに対してその体験を平等にすることで、誰もが同じ基準で我々の商品を選べるようにしている」。

着心地から当てずっぽうをなくす



「顧客とつながる方法は無数にある。そのひとつがトランクショーだ。当社が実施している『米国ツアー(US on Tour)』は移動トランクショーで、米国の大都市のほとんどで開催している。2つのリテールチームが当社の全商品を世界中に運び出し、顧客がいる場所で商品を販売する。また、ニューヨークには常設スペースがあり、顧客は訪問予約をして商品を見にきたり、自分のサイズの商品を試着できたりする。これは重要な経験だ。顧客とコミュニケーションをとり、顧客にとって何が役立っているか、問題点は何か、どのようなニーズを満たそうとしているかを把握することも重要だ。どんなデザイナーやファッションブランドにとっても、『顧客がこの商品を手にし、身につけたとき、顧客にとってそれはどんな体験になるのか?』ということを理解する必要がある。デザインの観点からは、この問いに答え、そのニーズに対応することが収益向上への道だ」。

イノベーションと収益性の両立



「イノベーションと収益性は相反するものではなく、同じ領域にある。デザインの観点からは、顧客を喜ばせ、活力を与えるような商品を作り出すことが成功を意味する。当社の顧客はチェンジメーカーであると我々は信じているため、顧客のライフスタイルにぴったりフィットし、顧客の世界を変えられるような商品を作り出せば大成功だ。では、これが収益性の向上にどうつながるのか。重要なのはイノベーションであり、ぴったりとフィットする着心地の良い商品を作り出し、顧客により良い商品を提供すれば、顧客はそれを買い求め、返品することはないので収益に結び付く。当社の返品率が低いのは、サイズ展開のおかげだ。我々は商品が顧客にフィットして、満足してもらえるという自信があるし、満足した顧客はリピーターとなる。リピーター顧客は、当社の新しい活動や、現在世界で起きていることをファッションを通じてどのように解釈しているかを知ろうとするだろう。このような顧客との関係、つまり信頼と親密さこそ、本当に価値があるものだ」。

[原文: Prioritizing design and fit is Universal Standard’s secret to profitability]

TATIANA PILE(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:都築成果)