まさに死闘だった。
 
 横浜F・マリノスは4月24日、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の準決勝・第2レグで蔚山現代(韓国)とホームで対戦した。

 敵地での第1レグを0−1で落としたなか、序盤から攻勢に出た横浜は13分に植中朝日のゴ―ルで幸先良く先制すると、21分にはアンデルソン・ロペス、30分には再び植中が得点を奪い、リードを広げる。

 しかし、36分にセットプレーから失点すると、その3分後にはDF上島拓巳がボックス内でハンドの反則を犯し、一発レッドで退場。このPKを決められ、すぐに2戦合計スコア3−3に追いつかれる。

 数的不利になって以降は、相手の猛攻を受け続けたが、ピッチに立った全員が身体を張り、延長戦を含めてゴールを死守。迎えたPK戦では5人全員が決めて5−4で勝利し、クラブ初のACL決勝進出を果たした。
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 試合後、会見に出席したハリー・キューウェル監督は、次のようにゲームを振り返った。

「36分までは自分たちのサッカーができました。攻撃のパターンがうまく行き、しっかり支配した。蔚山には特に攻撃をさせなかった印象でした。

 そのなかで一人ひとりの選手が、ひとり少ない状況を80分以上も戦って、素晴らしい結果を残してくれた。

 チームが一丸となって最後の最後までやり切る。もちろん運もありましたが、全員に対して感謝の気持ちでいっぱいですし、みんなにおめでとうと言いたい」

 上島の退場後、指揮官はアンカーの榊原彗悟を右SBに移して4−2−3に。そして後半のスタートからは榊原をアンカーに戻し、DFエドゥアルドとMF山根陸を投入して4−3ー2のシステムに変えた。数的不利の状況で、どのように戦っていこうとしていたのかを問われると、指揮官はこう明かした。

「正直、(上島が)退場すると思っていなかったですが、そういう状況になった時に一番重要なことは、柔軟性だと思います。

 彼らが今、どのような強みを持って試合運びをしているのか。サイドを使ってクロスからシュート、あとは中央に(ボールを)付けてからのシュートもありました。10人で戦う時間は長かったですが、自分たちにも少なからずチャンスが来ると信じてやっていました。

 相手にはたくさんのチャンスがあり、テンポも素晴らしかった。10人になったとしても守備は大事で、一人ひとりがよく守ってくれた。

 試合の中ではいろんな変更がありますが、あまり複雑なことを言ってしまうと混乱を招くこともあるので、シンプルに伝え、選手が柔軟性を持って対応してくれたから、あそこまで戦えた」

 ACL決勝では、UAE(アラブ首長国連邦)のアル・アインと相まみえる。かつてアルゼンチン代表として名を馳せたエルナン・クレスポ監督が率いるチームを相手に、どんな戦いを見せてくれるか。オーストラリア人指揮官の手腕に期待だ。 

取材・文●金子徹(サッカーダイジェスト編集部)