ウズラの卵がいま、ピンチに見舞われている。きっかけは福岡県の小学校で2月、1年生の児童が給食中にノドを詰まらせた死亡事故。事故を受けて、市の教育委員会は当面、給食でのウズラの卵の提供を見合わせることとした。

【映像】子どもに危険な食品リスト(日本小児科学会)

 再発防止のため、全国各地の学校では献立から外す動きがみられ、生産者は打撃を受けている。「食べさせないことが適切とは思えない」「食育で解決できるのでは」という声があ一方で、「小1にウズラの卵提供はNG」と語る専門家も。『ABEMA Prime』では専門家·生産者とともに、学校給食のこれからを考えた。

■「ゆっくり食べる」「よく噛んで」で防げない

 死亡事故が起きた福岡県みやま市では事故後、ウズラの卵の提供を中止し、今後の再開も未定としている。ミニトマトや白玉など同形状のものも検討され、県内の学校長に対し「しっかり噛むよう指導を」との通達も出された。

 NPO法人「Safe Kids Japan」理事長で、小児科医の山中龍宏氏は、嚥下(えんげ)能力なども成長途中の「ゆっくり食べる」「よく噛んで」で防げる事故ではなく、小学校1年生にうずらの卵(丸々)の提供は危険で提供すべきでないと提言する。

 窒息の危険性は「食べる行為全体にある」とした上で、「今回の事故では、ウズラの卵がノドの奥にはまり、空気の通り道を完全にふさいだ。かみ切らず、勢いよく吸い込んだために、そのままの形ではまり込んだ。この年齢層は、生え変わりの時期で前歯がないために、かみ切れない状況があり、こうした事故が起こり続けている」。

 日本小児科学会は、危険な食品の例として、ウズラの卵に加えて、ブドウやミニトマト、こんにゃく、白玉団子など「丸くてつるっとしているもの」を挙げている。その他、餅やごはん、パン類など「粘着性が高く、唾液を吸収して飲み込みづらいもの」、リンゴやイカなど「固くてかみ切りにくいもの」についても注意喚起している。

 山中氏は「就学前の子どもにはガイドラインが出ているが、小学校に上がってからは現状、ガイドラインがない」と説明する。「年長と小学校1年生は、ほとんど同じ年齢層。1年生、2年生ぐらいまでは、期間を延長して考えるべき」。

 その上で「学校給食だけでなく、一般家庭も同じ」とし、「9歳ぐらいまではカットした方が安全性は高まる。口の中にいったん入ったら、我々はコントロールできない。口内のメカニズムを理解して、食べている様子を見ながら、切るか判断すべきだ」と述べた。

■ウズラの卵を生産する「浜名湖ファーム」は収入1割減に

 ウズラの卵を敬遠する動きは、各地の小学校に広がっている。福岡県北九州市では事故後、今年度中の提供を全学年で中止し、来年度も「1%のリスクを防ぐため」として未定だ。福岡県柳川市では、高学年と低学年でメニュー分けが難しく全学年で中止とし、再開時期は未定(中学校はよく噛むなど指導して継続)。大分県佐伯市では、事故後〜3月末まで提供を中止し、新学期からは1〜3年生は提供中止・4年生以上は再開とした。

 こうした変化に、ウズラの卵を生産する「浜名湖ファーム」も影響を受けている。同社は、地元·静岡県湖西市の小中学校に直接水煮を提供(約2割)するほか、県内の給食用に卸業者にも提供している。しかし湖西市は、小学校で提供中止、中学校では継続としたことから、収入は1割減に。代替販路がすぐにあるわけではなく廃棄され、生産調整のためウズラの殺処分も必要になるかもしれない状況だ。

 浜名湖ファームの近藤哲治社長は「学校給食は、大事で楽しみな時間。ウズラの卵のような人気食材は、子どもたちも気合が入ってしまうが、落ち着いて食事をすれば大丈夫ではないかと考えている」と、生産者の立場から語る。

 なぜ給食でウズラの卵が採用されるのか。埼玉県学校栄養士研究会会長の今井ゆかり栄養教諭によると、「42年給食に携わるが、子どもに長年人気の高い食材」だ。おでんや中華丼、八宝菜などのメニューに、切ったり溶いたりせず丸々で使われる。鶏卵より栄養価が高く、また鶏卵1つは食べるのが大変なこともあり、価格はウズラの方が高いが、人気や利点から採用していると説明する。

 とはいえ、学校給食の現場では“切って提供”や“学年別献立”は難しい。今井氏は、半分に切るのは機械では難しく、また1つ1つ包丁で切るのは手間が大きすぎるとして、切るとなれば鶏卵の方が安価で扱いやすいと語る。また、学年別メニューは対応が難しい学校も多く、現在はウズラの卵を提供中止している学校も多いが、対応策などふまえ、丸々提供を再開する所も多いのではと予測する。

 現役保育士で育児アドバイザーのてぃ先生は「口内調理を除いて考えるなら、いままでと調理方法を変えればいい」との見方を示し、「栄養面だけでは、ミキサーにかけてもいい。ただ、保育園でも調理師の負担が多い現状があり、待遇改善や人員配置も含めて考えるべき」。年齢による判断も、自治体によって基準が分かれていて、「中学生ぐらいまでは大丈夫と書くところもあれば、9歳、10歳が目安なところもある。もし割る必要があるなら、“いただきます”のタイミングで、子どもたち自身にそれぞれ割ってもらってはどうか」と提案した。(『ABEMA Prime』より)