元オランダ代表デニス・ベルカンプはプレミアリーグ2003-2004シーズンのアーセナル無敗優勝の中心メンバーで、数々の記憶に残るプレイを魅せた。アーセナルのホーム、エミレーツ・スタジアムには同選手の銅像があり、ベルカンプは同クラブのレジェンドだ。

アーセナルのレジェンド、ベルカンプだが、実はチェルシーとの契約のためにロンドンを訪れ、アーセナルと“たまたま”契約したというのだ。当時の代理人ジェローム・アンダーソンが英『talk SPORT』に語っている。

インテルで出場機会に恵まれず、次第にベンチを温めるようになっていた1994-1995シーズン終了後。幼少期の憧れのプレイヤーだった元イングランド代表グレン・ホドルが監督を務めるチェルシーとの契約のため、ロンドンに訪れていたベルカンプだったが、当時のチェルシーの最高経営責任者コリン・ハッチンソンから金銭的な理由で契約を断られてしまう。

ショックを受けるベルカンプだったが、代理人のアンダーソンはその場でアーセナルの当時の副会長で共同オーナーのデイビッド・デインに電話をし、以下のように同選手を売り込んだという。

「まだ全盛期に達していない素晴らしい国際的な選手として知られているデニス・ベルカンプと契約するチャンスがあるかもしれない」

デイビッドは、興味を示しつつも「マネージャーと話し合う必要がある」と答えた。

代理人のアンダーソンは車で、その日のうちにマネージャーに会いに行き「デニス・ベルカンプと契約しませんか?」と再び売り込みをかける。すると、マネージャーからは「ベルカンプと契約できるなら、明日にでも契約する」と返答があったのだ。その場で契約がまとまり、ベルカンプは1995-1996シーズンにアーセナルに加入した。これが今回語られたベルカンプ移籍の経緯だ。

憧れのホドルのもとでのプレイを楽しみしていたベルカンプは、移籍当初こそ動揺していたようだが、その後の活躍は誰もが知るところだ。結局ベルカンプは引退するまで10シーズン、アーセナルに在籍し、3回プレミアリーグ、4回FAカップを制覇した。

ベルカンプほどの能力と才能があれば、チェルシーに移籍しても活躍はしたように思えるが、エミレーツ・スタジアムに銅像は建たなかっただろう。チェルシーに加入したベルカンプ、同クラブを想像するのも面白い。