◆自由な探求活動の時間が削られている

 実をいうと、私自身も、小さいころにはサッカーや柔道などをさせられた覚えがあります。どれも地域のボランティアや警察の方がやっている費用のかからないものでしたが、正直僕はあまり好きではありませんでした。特に柔道をやっているときなどは、あまりの行きたくなさに、練習直前になるといつもおなかが痛くなったり熱を出していたりしていました。

 これらの経験は、どれほどの意味があるのでしょうか。中学生以降は継続しないことからは、一過性の集団的な熱に浮かされているだけにも見えてしまいます。「あの子がやっているから」と、安易に習い事に身を投じる。ですが、将来の経験を買っているように見えるその活動は、子どもの自由な探究活動の時間を奪っているとも見て取れます。

 今回のアンケートの回答者の中にひとり、印象的な答えを残した人がいました。「今の自分があるのは、受験や習い事をしてきたからだが、それらによって遊ぶ時間が失われたことは否めない。どちらが幸せだったのかは、ほかの人生を知らない自分には判断が付かない」というものでした。私には、どうしてもある種の後悔が、この方の胸の内に隠れているような気がしてなりません。

 早期教育は、受験にとっては有利かもしれません。ただ、そこにどれだけの幸せがあるのでしょうか。少なくとも、親子ともども後悔がないような選択をすべきなのは確かでしょう。

<文/布施川天馬>

―[貧困東大生・布施川天馬]―

【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Twitterアカウント:@Temma_Fusegawa)