アルコールに弱くないはずの筆者も1缶流し込んだらクラっとくるほど。普段のペースで飲んだら泥酔しそうだが、それだけコスパ抜群で満足できる証拠だ。

◆新聞が斜陽産業と言われているからこそ

一通りメニューを堪能したところで、気になるのは東スポの動向だ。同社は3月12日にはマムシエキスが配合されたビール「大スポダイナマイトラガー」を発売。同時に今後も居酒屋業態での店舗展開を計画していると明かした。

現在、東スポの食をはじめとした新事業部門には5人が関わっており、いずれもメンバーは他部署と兼任している。佐藤さんは記者との兼業で、店内には自身が手がけた「メキシコオカルト紀行」の記事も飾られているが、いきなり畑違いの業態を任された当時は戸惑いもあったのではないだろうか。

「一言で言えば人がいないんですよ……(笑)。僕もこれまで新卒から記者一筋でやってきましたけど、2021年に社長(当時:編集局長)から『なんか持ってそうだから広報やって』と急に任命されてね。『え〜!?』って話ですけど、『じゃあ紙でどうやって稼ぐんだ』と言われたら、何も言えないじゃないですか。

要するに四の五の言ってられないってことですね、とにかく新聞が斜陽産業と言われているご時世だしやるしかねえだろって。それに社長も本気で、東スポを総合商社にしていくと宣言しているなら、もう前に進むしかないですよね。片足突っ込むぐらいなら両足どころか首まで突っ込むし、いわば『死なばもろとも』精神ですね(笑)。実際のところ、純利益はそこそこですが、在庫を抱えない売り切りを徹底することで赤字は出ていない。今は出来る範囲で商材や店舗を広げていきます」

イベントスペースとしての用途も

また今回、初の実店舗を出店したことで、新たな活路も見えたという。それが自社イベントや、商品PRの場として有効活用できるという狙いだ。

「以前、競馬のGIレースが行われる際に、ここで予想イベントを開催したんです。当社の競馬記者を集め、司会でミス東スポ2022グランプリの朝日奈ゆうさんを呼んで、そしたらかなり盛り上がってね。こういうイベントの場として、弊社のコンテンツを発信していくのは有意義だなと実感しました」

3月22日には、GI高松宮記念の大予想会も開催。以降、GI予想会はレースのたびに開催する予定で、東スポ居酒屋の「名物」にしていきたいという。

「これからはUFOとかUMA(未確認生物)に関するトークイベントや、ミス東スポのお披露目会、新商品の発表会など、色々と自社のコンテンツを生かした企画を検討しています。そしたら東スポらしさも出るし、イベントの様子を自社記事でウェブに出せば、広告費を払わずに宣伝にもなる。この居酒屋を発信基地にして、どんどん東スポの商材を世に出していこうと考えてます」

東スポといえば、変わり種の記事を扱い、良くも悪くも読者にインパクトを与え続けてきた。食事業や居酒屋展開など業態は変われど、果敢に攻め続ける東スポらしさは健在なのかもしれない。

<取材・文・撮影/佐藤隼秀>

【佐藤隼秀】
1995年生まれ。大学卒業後、競馬会社の編集部に半年ほど勤め、その後フリーランスに。趣味は飲み歩き・散歩・読書・競馬