2021年よりボカロP活動を始め、わずか3年弱という短期間で約20曲の楽曲を生み出し、精力的な活動を行う夢魅たぴ。
 そんな彼による初の夢ノ結唱 POPY使用曲、ならびにボカコレ2023春ルーキー部門参加曲&夢ノ結唱作曲コンテスト参加曲ともなったのが、2023年3月投稿の「空夢」である。

空夢 / 夢魅たぴ feat.POPY

文/曽我美なつめ

 従来の作品を見ると、比較的打ち込み感のある音やピアノサウンド、メロウなミドルテンポのゆったりした楽曲群が多い印象のボカロPだった彼。
 しかし今作「空夢」はそんな印象から一転、明るくキャッチーでダイナミクスを前面に押し出した、これまでの作品にはあまりない斬新な魅力も光る1曲だ。

 音声合成ソフト・夢ノ結唱 POPYのイメージモデルは、『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(通称ガルパ)で活躍するキャラクター・戸山香澄。
 今作はそんなガルパへの採用曲コンテスト参加曲となっており、おそらくその点がこれまでとはやや系統の異なる、今作のテイストに大きく起因しているのだろう。

 元々夢魅たぴ自身もボカロPとしての活動以前から、ドラムでの叩いてみた動画や歌ってみた動画を投稿した実績を持つ。
 そんな自らの音楽経験や、積み重ねてきた多作な楽曲制作経験を着実に肥やしにしつつ、歩み続けてきた彼。それらの経験値の集大成としても、大きな存在感を放つ楽曲と呼んで過言ないクオリティのサウンドとなっている。

 だがその最高到達点も、あくまで当時の夢魅たぴにとって、というものでしかない。
 ルーキーとして扱われる2年間を経て初期の楽曲と近作を聴き比べると、ミックスやサウンド編成を中心にかなり大胆なブラッシュアップが図られていることが、彼の確かな変化、として感じ取れる。

 楽曲テイストの引き出しの幅や、あるいは初音ミクを中心としつつも、作風によって多彩に音声合成ソフトを使い分ける手腕。それもまた、直近で目に見えて大きな伸び代を見せつける彼の進化だ。
 いよいよ本格的に、一ボカロPとしての道を邁進し始めた夢魅たぴ。今後の行く末を注視するのにも、十分すぎる才能の片鱗を覗かせるクリエイターの一人とも言えるだろう。

「The VOCALOID Collection」 公式サイト

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