1日に約7〜9時間睡眠を安全に取ることができる人間とは異なり、厳しい自然界で生きるペンギンなどの動物は、数時間眠ることが命取りにつながる場合もあります。リヨン神経科学研究センターのポール・アントワーヌ・リブーレル氏らの研究チームが、ヒゲペンギンが約4秒間の睡眠を1日に約1万回行うことで、合計11時間以上の睡眠時間を稼いでいることを報告しました。

Nesting chinstrap penguins accrue large quantities of sleep through seconds-long microsleeps | Science

https://www.science.org/doi/10.1126/science.adh0771



Penguins snatch 11 hours of sleep through seconds-long micronaps

https://phys.org/news/2023-11-penguins-hours-seconds-long-micronaps.html

Chinstrap Penguins’ Bizarre Sleep Routine Upends Our Understanding Of Rest

https://www.inverse.com/science/chinstrap-penguins-bizarre-sleep-routine-upends-understanding-of-rest

ペンギンは片方の親鳥が自身の足元で卵を温めている間、もう片方のパートナーは数日間かけてエサを集めています。その際、トウゾクカモメや他のペンギンから卵や巣を守らなければなりません。そのため、常に警戒を怠ることができないペンギンは、通常の動物のように長時間にわたる睡眠をとることが難しいとされています。

リブーレル氏らの研究チームは2019年12月に、キングジョージ島に生息するヒゲペンギン14羽に対して電極を埋め込み、脳と首の筋肉の電気的活動を記録し、同時に加速度計とGPSを使用してペンギンの体の動きと位置を調査しました。



研究チームはビデオ撮影を行うとともに、ペンギンを数日間にわたり直接観察しました。その結果、ペンギンが卵をふ化させるために立っている時、または横になっている時に平均3.91秒の睡眠を1日に1万回以上行い、合計11時間以上の睡眠時間を確保していることが判明しました。

以下は研究チームが報告した営巣中のペンギンの脳活動です。上段はペンギンが目を開けている時間や目の開き具合、中段は左脳の睡眠度合い、下段は右脳の睡眠度合いを示しています。上段のグラフが落ち込んでいる際に赤や緑の線が活性化していると、ペンギンは眠っているというわけです。

さらに研究チームは脳活動の分析の結果、イルカやマナティーなどの水生生物が行うような、脳の半分が眠り、残りの半分が覚醒している状態である「半球睡眠」をペンギンも行っていることを明らかにしています。

研究チームは数秒間の睡眠を1日1万回以上行うペンギンにおいて、睡眠から得られる回復効果について測定を行っていないものの、「『ペンギンが繁殖に成功している』という事実はこの睡眠方法によって回復効果が得られていることを示しています」と述べています。



一方で人間では、このような短い睡眠を繰り返すことは睡眠時無呼吸症候群のような状況で見られます。短い睡眠を繰り返すと、認知機能に悪影響が生じ、アルツハイマー病などの神経変性疾患などにつながる可能性があるため注意が必要です。

カリフォルニア大学サンディエゴ校のクリスチャン・ハーディング氏とオックスフォード大学のウラディスラフ・ヴャゾフスキー氏らは「このような睡眠がペンギンに何の悪影響も及ばないことが証明されれば、『短い睡眠を繰り返すと睡眠の質に悪影響が生じる』という現代の解釈に一石を投じることになるかもしれません。人間にとって異常なことは、鳥や他の動物にとっては正常な行動である可能性があります」と述べています。

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