中国には当社の関係会社が約20社ありますが、業績が良いところと悪いところがはっきりしています。全体的に言えばコモディティ分野の石油化学関連事業の会社は需給ギャップが大きく厳しい状況です。

 ─ 鉄鋼などでも、中国が安い鋼材を輸出して市況を悪化させることがありますが、化学でも同じですか。

 橋本 同じです。今は中国国内の内需の停滞が厳しく、特に石油化学のコモディティ分野についてはオーバーキャパシティで国内では消化しきれずに海外に輸出している。

 ─ 市況はかなり緩んでいると。

 橋本 ええ。ブラジルでも影響を感じるほどで、グローバルに、石油化学のコモディティ分野の市況は厳しくなっています。中国もスペシャリティ分野にシフトしようとしていますが、できる会社は限られているので、コモディティ関連の新規のプラント増設が相次いでいます。スペシャリティ分野に関しては我々に一日の長があると思っていますが、いずれそこにも中国はキャッチアップしてくると見ています。

 ですから、中国との関係は今までとは違う構図で考えなければなりません。技術の出し方、ビジネスのつくり方など、違うステージになったという前提で作り込んでいかなければいけないと考えています。


製品、コンビナートの「最適化」を進める

 ─ 世界が変化する中ですが、三井化学自身はどのような道筋で成長していこうと考えていますか。

 橋本 当社は長期計画の中で、「ライフ&ヘルスケア」「モビリティ」「ICT」の成長領域の拡大、「ベーシック&グリーン・マテリアルズ」事業の再構築、ダウンフロー強化とグリーン化推進を掲げていますが、成長領域は引き続き堅調です。

 例えば自動車は一時的に厳しい時期はありましたが、半導体不足の問題も解消して生産が戻ってきていますし、ライフ&ヘルスケア領域は極めて堅調です。また、半導体のシリコンサイクルは底になっていますから、今の状況を見ると来年度くらいから戻ってくると見ています。

 ─ 国内の石油化学、特にコモディティ分野の現状は?

 橋本 我々もコモディティ分野はボラティリティ(変動性)が高く、利益が大きく振れます。その振れをなくすために、再構築などを積極的に行っています。例えば鹿島工場(茨城県)を閉鎖したり、海外のコモディティ分野の合弁会社から当社のシェアを落としたりという努力をしてきました。

 さらに最近では、自動車や建材などに幅広く使われる基礎化学品であるフェノールについて、シンガポールの子会社を英化学大手のイネオスに売却したり、山口県にある高純度テレフタル酸(PTA)の日本最大の工場を23年8月に停止しました。

 このように石油化学のコモディティの再構築を進めてきていますが、先程お話したように中国の影響が出てきていますから、これで終わりではなく、もう一段進めていく必要があります。

 ─ 石油化学コンビナートの生産能力についてはどう考えていますか。

 橋本 個別の製品ごとに能力最適化をやっていきますが、コンビナートごとの最適化も進めていきます。ただ、環境負荷の低減は避けて通れませんから、グリーン化とセットでコンビナートの最適化をしていきます。

 将来的にもリサイクルや、原料を化石原料から転換していく、あるいはCO2削減のためにアンモニアを使うなど、様々な方式を模索していますが、そもそもの需要が減少しています。その中で能力の最適化をしていかなければならないのです。