NISAの弱点とは?(写真: Graphs / PIXTA)

来年2024年の年頭から、従来あった少額投資非課税制度・NISAが大きく生まれ変わります。これまでよりもグッとお得で、使いやすくなったとして、各メディアでも大きく取り上げられている新しいNISA。そもそもどんな制度なのか、また、どこがどう変わったのか、個人投資家の桶井道(おけいどん)氏が上梓した新刊、『お得な使い方を全然わかっていない投資初心者ですが、NISAって結局どうすればいいのか教えてください!』から、一部抜粋してご紹介します。

NISAにも弱点がある?

当然ながら、どんな制度もメリットばかり、ということはありえません。

NISAのデメリットについても説明しておきましょう。

NISAにおける最大のデメリットの1つは、NISA口座で生じた損失については、特定口座などでは可能な「利益との損益通算」ができないことでしょう。

たとえばNISA口座で購入した株式を、購入時より値下がりした状態で売却すれば「譲渡損」が発生します。

通常の特定口座で取引を行っていた場合なら、その損失をその年のうちに発生した別の株式などでの利益(譲渡益)と相殺し、相殺し切れなかった利益の金額だけを課税対象とします。

つまり、儲けた分と損した分を課税の前段階で相殺できるので、特定口座などでの取引ならば、たとえ損失を出して悔しい思いをしているときでも、損失と利益を相殺して儲けを減らす節税効果があるので、多少は気が休まるというわけです。 

その年に大きな利益(譲渡益)を出しているときには、年内のうちに含み損を抱えてしまっている株式を売却して損切りし、あえて損失(譲渡損)を出すことで利益と相殺して税金を節約しようとする投資家もたくさんいます。

ところが、NISA口座で発生した損失は、この損益通算ができません。利益に税金がかからないので、損失にだけ節税効果があったらおかしい、ということなのかもしれません。


(イラスト:(c)中山成子、本書より引用)

いずれにせよ、NISAでの損失は節税効果のない純粋な損失になるので、特定口座などで生じる損失に比べればダメージが大きいと考えられます。

繰越控除もできない!

投資では、その年の利益の全部と相殺しても、相殺し切れないほどの損失が発生することがあります。

そうしたとき、特定口座などであれば相殺し切れなかった損失を、翌年以降に最長3年間まで繰り越して、翌年以降の利益と相殺することも認められています。

これを「繰越控除」と言います。

しかし、NISA口座ではそもそも損益通算ができないのですから、この繰越控除もできません。


(イラスト:(c)中山成子、本書より引用)

この2つの弱点があるため、NISAを使った取引では大きな損失を出すことをなんとしても避けるべきです。NISAでの損失は、節税効果のない純粋な損失だからです。

そのためには、大きな損失が出る危険性が高いハイリスク・ハイリターンな投資はNISAではしない、ということを鉄則にすべきであると私は考えます。

たとえば、狙いがあたったときの株価の爆発力は強くても、鳴かず飛ばずで値下がりする可能性も高い成長株への投資や、無配株への投資、新興国株などに投資することは、NISAでは避けるべきです。

こうしたハイリスクな投資をしたいのであれば、仮に損失が出たときでもその損失を節税に使える特定口座などで投資すべきではないでしょうか。

逆にNISAで狙うべきは、安定成長する投資信託や、配当利回りの高い高配当株および分配金利回りのよいETFです。高配当株でも、できれば業績の安定している大型株や、一見そこまで配当利回りが高くなくても、増配を通じて「じぶん配当利回り(=投資額に対する配当利回り)」が上がっていくような増配株を狙いたいところです。

配当利回りの高い銘柄への投資をしていれば、仮にその銘柄の株価が一時的に30%下落して含み損を抱えたとしても、長期的に見れば含み損を上回る配当金が得られる可能性が高いでしょう。

新しいNISAの非課税期間に期限はないので、ずっとホールドしていても問題ないからです。

たとえば配当利回りが4%の銘柄で、8年間配当金が得られれば、含み損の30%に対して配当利回りが4%×8年=32%となり、配当金のほうが含み損を上回ります。

また、NISAでは投資できる対象が限定されていることも、デメリットの1つとして挙げることができるでしょう。

原則として、NISAで投資できるのは「つみたて投資枠」では「長期の積み立て・分散投資に適した一定の投資信託」、「成長投資枠」では「上場株式・投資信託等」とされています。

「成長投資枠」での制限

このうちの「成長投資枠」について言えば、上場株式、投資信託、ETF[上場投資信託]およびREIT[不動産投資信託]が基本的な投資対象ですから、それ以外の投資対象、たとえば債券や非上場の株式、預貯金、先物やFX、貴金属などの商品、不動産などには投資できません(債券や貴金属、不動産などに投資する投資信託およびETFを買うことは可能です)。

株式市場を通じて日本経済全体を活性化させることがNISA設置の狙いの1つと思われますから、株式市場で買えない投資対象には、非課税の恩恵を適用できないということなのでしょう。

また投資信託とETFについては、損益が一定の倍率で拡大される「レバレッジ型」や、毎月分配型、信託期間が20年未満の商品などには原則として投資できないことになっています。

老後資金の不足へ備えるための長期的な資産形成には向かない、と考えられているからのようです。

下図に「成長投資枠」で投資できる商品とできない商品をまとめましたので、こちらも参考にしてください。

※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください


(図:本書より引用)

そして、前述したように「つみたて投資枠」では最初から、投資先として選択できる投資信託が限定されています。各金融機関が条件に基づきあらかじめ金融庁に届け出たものから、投資対象を選ぶことになります。

基本的に「成長投資枠」で投資できない投資信託と同じ性質を持つ銘柄、つまり高レバレッジ型や毎月分配型の投資信託等は、あらかじめ除外されているので、これらの銘柄にはNISA全体で投資できない仕組みになっていると言えます。

こうした投資対象の制限があり、自由に投資対象を選べない点はNISAの弱点の1つだと言えます。しかし、考えようによっては、この制限は逆にメリットにもなるでしょう。

たとえば高レバレッジ型の金融商品は、値動きが激しいために、よほどの投資上級者でないと失敗しやすい投資対象です。

損益通算ができないNISAでは大きな損失を出さないことが大切ですから、最初から買えないことは、むしろありがたいのではないでしょうか?

毎月分配型の投資信託も、一時期は人気を博したものの、長期的な資産形成には向かないと言われており、排除されていることに違和感はありません。

倒産リスクの高い整理銘柄や監理銘柄については言わずもがなです。

投資についての知識が少ない人が、上級者向けのハイリスクな商品や資産形成に向かない投資対象、そもそも潰れそうな会社の株式などをうっかり買ってしまうことがないようになっているという意味では、この制限は「あってしかるべき制限」、「むしろ、ありがたい制限」だと私は考えています。

18歳になるまでは投資できない


2024年から導入される新しいNISAでは、利用できる年齢が18歳以上と定められています。

18歳になるまでは利用できないわけで、これもデメリットの1つと言えるかもしれません。

2023年末までは、18歳未満の未成年者でも利用できる「ジュニアNISA」という制度を使って、たとえ0歳の子どもでも投資を始めることができました(保護者の代理運用もOKでした)。

しかし、「ジュニアNISA」は2024年の制度改定に伴い、2024年1月から新規の利用ができなくなってしまいます。

なお、2023年末までに「ジュニアNISA」で購入した保有銘柄については、本人が18歳になるまでは「ジュニアNISA」の口座か、5年経過後には「継続管理勘定」を通じて、そのまま非課税の扱いにできます。

本人が18歳になり初めて迎える1月1日に、「ジュニアNISA」の口座や「継続管理勘定」から通常の課税口座へと切り替わります。

また、以前は18歳になるまでは原則として非課税での払い出しができないルールになっていましたが、2024年からの制度改定に伴って、18歳までの期間にも非課税での払い出しができるようになっています。

まとめると、‖傘彡婿擦箏越控除ができない、投資対象を自由に選べない、18歳未満は利用できない、の3点が新しいNISAの主なデメリットと言えるでしょう。

(桶井 道 : 個人投資家(投資歴20数年)、物書き)