岸田文雄首相から内閣総理大臣顕彰の賞状を受け取る藤井聡太八冠(写真・時事通信)

 11月13日、将棋の八大タイトル全冠制覇を達成した藤井聡太八冠が、首相公邸で内閣総理大臣顕彰を受けた。

 岸田文雄首相は「日ごろのたゆみない努力と精進によって、将棋界初の8冠制覇の偉業を成し遂げ、多くの国民に夢や希望を与えた」とたたえ、藤井八冠に顕彰状と盾を授与した。

 藤井八冠は、顕彰の返礼に、蓋に「雲外蒼天(そうてん)」と記した将棋盤を岸田首相に手渡した。記者団の取材に対し、「私が普段からよく揮毫(きごう)している言葉。雲の上には青空が広がっているということで、努力をしてさらに実力を高めていくことでこれまでと違った景色が見える、という意味を込めて書いた」と語った。

 顕彰式には藤井八冠の母・裕子さんと、日本将棋連盟の羽生善治会長が同席した。

 内閣総理大臣顕彰は、「国家、社会に貢献し顕著な功績のあったもの」を顕彰する制度で、将棋界では七冠を初制覇した際に羽生氏が授与されている。

 「雲外蒼天」は2021年10月、「棋聖戦」で、史上最年少でタイトル初防衛に成功したときにも扇子に揮毫した言葉だ。

 藤井八冠が、蓋に「雲外蒼天」と記した将棋盤を岸田首相に寄贈したことに、SNSでは「深読み」する声が上がっている。

《藤井八冠自らの発案かな?いずれにせよ今の岸田首相には染みる言葉だろうなあ》

《岸田総理が、今雲の中にいるということを暗に示していて、なかなか風刺が効いていて良いなと思いました》

《めちゃくちゃ皮肉が得意な人なんじゃないかと愚考してみる》

《「雲外蒼天」というのが痛烈なる皮肉に見えてしまいます 貴方にその日は来るのかと。。》

 同日、NHKが報じた世論調査で、岸田内閣の支持率は、10月調査より7ポイント下落し29%。2021年10月の内閣発足以降、初めて30%を割り込んだ。

 支持率29%は2021年8月の菅内閣の支持率と並び、2012年12月に自民党が政権に復帰して以降で最低の水準だ。

 さらに同日、神田憲次財務副大臣が辞任。臨時国会の開会から1カ月足らずで政務三役が3人職を辞したことになる。

 自民党・二階派幹部の武田良太元総務相は11月9日、TBSのCS番組の収録で、低迷する岸田内閣の支持率について「(政策の)ビジョン(展望)と旗を揚げないと、このまま上がらない予感がする」との見方を示していた。

 「雲外蒼天」が「皮肉」と深読みされるほど、岸田首相は追い込まれているということか。最低を更新した支持率を上げ、岸田首相は雲の上の青空を見ることができるだろうか。