この記事をまとめると

■パワーユニットのパフォーマンスの高さはクルマ好きを引きつける

■なかにはクルマのキャラに似つかわしくないほどのパワフルさをもったクルマがある

■そこまでの速さが必要? と思いつつも気になるクルマ5台を紹介する

速いのは嬉しいけど……そこまでいる!?

 なにもそこまで……と眉をひそめる、あるいは思わず苦笑いが浮かぶこと、世の中には思いのほかたくさんありますよね。むろんクルマの世界も同様で「そこまで速くしなくても」というのがありがちかと。それぞれ理由や事情があるのでしょうが、いずれにしろクルマ好きとしては眉をひそめながらも興味津々。速けりゃいいってもんじゃない、常々そう感じていても、やっぱり気になるクルマたちを集めてみました。

日産スカイライン 400R

 なにしろ400馬力をそのまま車名にしたスカイラインですから、2013年の登場時には誰もが「お!」となったはず。しかも、このご時世に後2輪駆動というFRパッケージは、世界中のライバルが目をむいたに違いありません。メルセデスにしてもBMWにしても、400馬力クラスとなると全輪駆動がデフォルト。「やるなぁ、日産!」と感心こそすれ、「とはいえ、そこまで速くなくとも」と大方が眉毛をハの字にしたのではないでしょうか。

 それでも、いまやFRのハイパワーセダンは絶滅寸前! ガソリン車に乗れるうちに400馬力スカイラインはぜひとも味わってみるべきかと。乗れば、きっと「そこまで……」が「やっぱり、これくらい速くないと!」に変わること請け合いですけどね(笑)。

ジャガーFタイプ R-Dynamicクーペ

 ジャガーはマーケットの動向はもちろん、社会の風向きにも敏感なメーカーでしょう。なんといっても、プレミアムなスポーツカーマーケットに4気筒2リッターターボを搭載したモデルを投入するなんて、ちょっとした破天荒。それでも、発生馬力は300馬力とこれまた「そこまで速くなくとも」系にほかなりません。

 もちろん、CO2排出量規制やCAFÉと呼ばれる企業別平均燃費基準をクリアするための措置だとガチな裏付けもできるといえばできますが、それにしても「なにもそこまで」感は漂います。そもそもは、4気筒ターボを積んできたポルシェ・ボクスター/ケイマンに端を発するかと思いますが、あちらも2.5リッターターボで350馬力と「速けりゃ4でも6でも関係ねーだろ」くらいの勢いですけどね。

 せっかくだったら、規制対応マシンという見え方でなく、4気筒エンジンのメリット、すなわちコンパクトで軽量という特性を生かしたフロントミッドシップとか、パワーアップにとどまらないアドバンテージがあればもっと楽しいのにね!

トヨタ・ブレイドマスター

 ちょい古マシンですが、1500kgを下まわるコンパクトな車体に、3.5リッターのV6エンジンを詰め込んだという「なにもそこまで」の典型かと。それでも、開発陣の意気込みとしては「なんとしてでも作りたかった」と相当なもの。開発をしている際、ベースを同じくするオーリスの輸出仕様にむけてディーゼルエンジンの搭載が可能なほどエンジンベイが強固なものとなり「だったらトヨタが誇るV6ユニット2GR-FE積んじゃえ!」とかなんとかいうエピソードが伝わっています。レクサスGS&ISにも搭載されていたパワーユニットですから、公称280馬力といわれても中身はもっと濃くなっているのかも。

 じつはこのクラスのユーザーはわりと女性客が多いそうで、彼女たちへのアピールとしてなにがしかのバリュー、ステイタス、あるいは「ちょっとしたお買い得感」をプラスしたかった、というのがマーケ的な理屈だそう。それにしても、彼女たちがコンパクトカーで第二東名あたりをぶっ飛ばしてるの見たら「なにもそこまでぶっ飛ばさなくても」となりそうではあります(笑)。

砂漠以外必要なし!? 超絶速いクロカン四駆も

シボレー・コルベットZR-1(C7)

 いまになってみると、GMはC7コルベットが最後のFRモデルになること承知していたのでしょう。コンベンショナルなFRのアメリカンスポーツカーがどこまで速くできるかとばかりに「俺っちの底力見せたるわー!」で作っちゃったのが647馬力のモンスターですよ。だって、ミッドシップのC8になってもこのパワーを凌駕するモデルは生まれていませんからね。ある意味、コルベットの記念碑的なモデルとなったこと疑う余地もありません。

 が、それにしても速すぎ(笑)。6.2リッターのV8+スーパーチャージャーというアメリカ人が大好きなパッケージは分かりますが、0-60mphが3秒未満、最高速340km/hとかアメリカンマッスルというより、メガスーパーカーの領域。文句なしに「なにも、そんなに」パフォーマンスにほかなりません。

 とはいえ、アメリカ人のメンタルらしいといえばらしいもので、そこまで必要ないパワーなのに「あればうれしいだろ」的にバンバン盛ってくれたわけですから、コルベットとしてはじつに正しい選択だったといえますよね。

三菱パジェロ エボリューション

 クロスカントリーやSUVに強力なエンジンを載せるのはいまでこそ一般的な手法ですが、このパジェロエボには度肝を抜かれたものです。同社はランサーエボという元祖「なにもそこまで」というモデルもありますから、社内での逆風はまったくなかったのでしょう。そもそも、パジェロエボは1997年にパリダカールで総合優勝をしたあとのレギュレーション変更にあわせたホモロゲーションモデル。それを考えれば過激になるのも致し方ないかもしれませんが、市販車、それも車高の高いクロカンモデルに当時の規制ギリギリの280馬力というのは驚きを禁じえません。

 また、ランサー・エボリューションの流れを汲んだかのようなブリスターフェンダーやいかついルーフスポイラーといったエアロデバイスも「なにも、そこまで」感マシマシ。高速道路で、このエボがすごい勢いで迫ってきたら、イキったゲレンデよりも迫力あること間違いありません(笑)。もっとも、そこまでやりきったおかげで1998年のパリダカールでは1位から3位までを独占という素晴らしいリザルトを残しています。

 やっぱり、なにかを成し遂げようとすると「なにも、そこまで」といった徹底ぶりが欠かせない、という好例ですね!