同社は工場プロジェクト以外にも、2023年5月マレーシアに「熱帯バイオマス技術研究所」もつくり、現地の研究者とユーグレナなどの微細藻類をはじめとしたバイオ燃料の研究開発推進をしている。

「マレーシアは地政学的にも絶好の場所。輸出するにも西にはインド、ヨーロッパがあり、東には中国、日本がある。また、とにかく若い人が多く、勉強熱心で優秀な人も現地で採用できる。まさに日本の高度経済成長期の頃と似ている。米中対立の国際情勢の中で、マレーシアは日本に対しても友好的であり、最高のパートナー」と出雲氏。

 1973年にベトナム戦争が終結してからASEAN(東南アジア諸国連合)と日本の友好協力は今年で50周年。また、1982年からマハティール元首相が「LOOK EAST」政策で戦後日本の復興をお手本にしてきた背景があり、日本とは友好関係の土台がある。

「ASEANの全体人口は約8億人で、これから可能性のある場所。若者が多くデジタルが得意、グリーンに関心もある。そこでアジアナンバーワンの石油会社になれば、次世代バイオ燃料という意味では結果的に世界一にもなれる」とマレーシアに活路を見出す同氏。


赤字脱却の鍵となる工場稼働

 同社は、主軸のヘルス事業が好調で今期(2023年12月)売上高450億円と予想しているが、バイオ燃料事業への設備投資等により、ここ4年で130億円の営業赤字が積み重なっているのも事実。

「このコロナ禍は特に、工場を抱えるわれわれは本当に大変であった。マレーシアでのSAF工場が稼働していけば、売上増収が見込めるため黒字転換となるという中長期の展望がある」出雲氏は続ける。「主力事業のみでやっていくのであれば黒字にはなる。しかし、バイオ燃料の工場を楽しみにしている皆の期待に応えるために、わたしは踏ん張る」。

 この姿勢に対し、時価総額は1072億円、業種内では47位中5位と、市場の評価は高い。創業からSDGsに取り組んできた出雲氏の一貫した信念に、今後も期待が高まる。