では、櫻井翔はどうか? 現在のところ櫻井がCM出演しているアフラック生命保険は、ジャニーズ事務所との広告契約を終了する意向を打ち出しながら、今後は「櫻井個人」との契約に変更することを検討しているという。

事ここまで至れば、櫻井翔にとって「ジャニーズ事務所」という看板は、足枷、背負わされる十字架でしかないのだ。櫻井翔がジャニーズ事務所からの「脱出」を考えているであろうことは当然の成り行きだ。すでに決断はなされ、あとはタイミングを待っているだけと考えるほうが自然である。

こうして腹をくくったであろう櫻井が、ジャニーズ事務所の不文律に反旗を翻すことになんら不思議はない。

ここで前述の、櫻井の「バイブル」について思い出して欲しい。以前から『稲中』について語ったことはあった櫻井だが、ここにきて迷いなく番組スタッフをも巻き込んで、下ネタ満載のこの作品を「何回読んだことか」と公言し、自分にとっての「バイブル」=「権威ある価値の高い書物」だと自らの冠番組で語った。

一見、バラエティのなかでの一お笑いエピソードに過ぎないように見える。しかし、お下劣路線は許されず、下ネタなどもってのほか、これを冒せばタレントにとっては命取りにもなったジャニーズ事務所の「超高潔」、「超清高」なる志。『稲中』は絶対に彼らの世界線とは相容れない。

ちなみに櫻井がバイブルとしてもう1つ挙げた作品が、少年院を出所した若者たちの人生を描いた『RAINBOW−二舎六房の七人−』(原作・原案など安部譲二/作画:柿崎正澄)だ。『RAINBOW−二舎六房の七人−』では、少年たちが看守や大人から酷い仕打ちを受ける姿が描かれる。

『RAINBOW−二舎六房の七人−』については、ゲストの山田涼介(Hey! Say! JUMP)が好きなマンガとして紹介したのだが、櫻井は「僕も2つ(『稲中』と『RAINBOW』)挙げていたのに、スタッフが『稲中卓球部』を選んだ」と明かして笑いを誘った。

ジャニーズ事務所が前世代の遺物となりつつある今に至っても、現在所属中のタレントが自らの意志や覚悟を発信する方法は、暗号のように読み取りづらく、囁きよりも小さな声でしかない。

たかがマンガと言うなかれ。『稲中』は櫻井翔のジャニーズ事務所への緩やかな反旗の翻しであり、小さくはあるが独立へ腹をくくったことの意思表示に一役買ったのだ。

画像は『Google Earth (C)2023 Google』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)