原監督は2009年大会の指揮を執り世界一にも導いた(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext

 野球日本代表の侍ジャパンを運営するNPBエンタープライズは5月31日、栗山英樹監督の退任を発表した。この日までが任期だった。3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では日本を3大会14年ぶりの世界一に導いた。

 侍ジャパンは11月16日から、東京ドームで開催される第2回アジアプロ野球チャンピオンシップに臨む。大会へ向けて、侍ジャパン強化本部は後任監督の人選を進める。2024年11月には国際大会のプレミア12、そして2026年3月には第6回WBCが控えており、それら3大会が新指揮官に任される。

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 すでに複数のメディアでは松井秀喜氏、イチロー氏、井口資仁氏、古田敦也氏、工藤公康氏、高橋由伸氏、吉井理人氏らの名前が候補として挙がっている。

 栗山監督は31日、都内のイベントに出席して後任監督について言及した。「みんながどうしてもこの人にやってもらいたい、という監督さんが次にやってくれると思っている」と語った。

 今年3月の第5回大会ではエンゼルス・大谷翔平、レッドソックス・吉田正尚ら多くの現役大リーガーが参戦し、それが結果につながった。いずれも3位に終わった2013年の第3回大会は大リーガーが0人、2017年の第4回大会はアストロズ・青木宣親ただ一人だった。

 敵を知り、味方を知るという観点からも、メジャーリーグに精通しているという点は、新指揮官に求められる要素の一つだ。前述した候補の面々もその点に関しては満たしている人物が多い。

 一方でWBCのような長い戦いを戦い抜く戦術・采配面においては、経験が大きくものを言う。その点において、他者をリードする存在が、現在巨人の指揮を執る原辰徳監督だ。

 周知の通り、原監督は巨人指揮官を兼ねながら、2009年の第2回大会で侍ジャパンを連覇に導いた。今大会の栄光は、原ジャパン以来の頂点だったわけである。

 高橋由伸監督の後を受けて、2019年から巨人の第3次政権をスタートさせた。いきなりセ・リーグ連覇を達成し、健在ぶりを示したが、2021年は3位。昨年はBクラスの4位に終わり、クライマックスシリーズ進出も逃した。世代交代に苦しんでおり、今季は5月31日現在で24勝25敗の借金1の4位にとどまっている。今季、仮にV奪還どころかAクラス入りを逃すようなことがあれば、進退問題が浮上するのは必至。巨人監督を離れて身が空けば、侍ジャパン監督就任への障害はなくなる。

 2021年12月、栗山監督も日本ハムで3年連続5位に終わり、日本ハム監督を退任した直後に回ってきた侍指揮官の座だった。原監督に侍ジャパン監督復帰の話が舞い込むようなら、前回の栗山監督就任と全く同じパターンとなる。

 NPBエンタープライズの代表取締役社長は、代々読売新聞社の東京本社事業部畑の人物が務めてきた。コーチ陣やスタッフにはOB含め巨人から毎回数人が派遣され、侍ジャパンは元来巨人色が強い。そこの長に原監督が収まれば、運営という面でもスムーズに働く。まだ候補者の面々の中にその名前は浮上していないが、いつお鉢が回ってきてもおかしくない素養を、原監督は備えている。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]