パリ五輪を目指すU-22日本代表は今月に欧州遠征を実施する。1日にはメンバー23人が発表され、海外組はGK小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)、DF内野貴史(デュッセルドルフ)、MF松岡大起(グレミオ)、MF鈴木唯人(ストラスブール)、FW小田裕太郎(ハーツ)の5人が招集された。

 ブラジル2部のグレミオ・ノボリゾンチーノに期限付き移籍していた松岡は、昨年11月の欧州遠征以来となる招集となった。大岩剛監督体制の発足時は怪我で招集が遅れたが、22年6月のU23アジアカップで初招集されると主力として台頭。今年3月にブラジルに武者修行へと旅立った。

 地球の裏側でプレーをする松岡の復帰について、大岩監督は「いま彼が何ができるのか、日本にいたときから何が成長しているかをこちら側も見極める活動になる」と招集意図を語る。また、持ち前のキャプテンシーにも言及。「キャプテンマークを巻かなくてもチームを引っ張るパーソナリティの持ち主」と、初招集組がいる今回のチームのまとめ役として期待を寄せた。

 小田も松岡と同様に昨年11月の欧州遠征以来の招集。今年1月にはスコットランド・プレミアリーグのハーツに移籍し、海外挑戦をしている。5月末にはリーグ戦最終節で加入後初ゴールを決め、UEFAカンファレンスリーグ(ECL)予選の出場権獲得に大きく貢献。怪我を乗り越えた活躍に、指揮官も「状況が良くてパフォーマンスが良くて今の立ち位置にいる。しっかりとハードな環境の中でプレーできている」と評価した。

 大岩監督体制の常連、鈴木は今年1月にフランス・リーグアンのストラスブールに移籍した。出場機会を得られない中でも4月には待望のデビュー。後半30分からの途中出場だったが、ゴールという最高の結果を残した。だが、その後は再び試合から遠ざかっていた。大岩監督は自らクラブを視察。「試合に出場していることが成長につながる第一条件と話したが、それ以外のところでどう行動をしているか、どう立ち振る舞いをしているかも重要視している」。10番を背負うエースの成長を確かめるつもりだ。

 一方で、目覚ましい活躍ゆえに招集が正式に決まっていない選手もいる。MF斉藤光毅(スパルタ・ロッテルダム)は今月1日からオランダ・エールディビジのプレーオフに臨む。今シーズンはリーグ戦26試合7ゴール5アシストと絶好調。最終節までの3試合では連続でゴールを決めていた。大岩監督は「勝ち上がりによって彼が参加するかしないかが決まる」と喜ばしい悩みを吐露。「スパルタがいい成績を収めることが最優先なので、現段階では向こうでしっかり活動してもらうスタンスでいる」と招集は結果次第であることを明かした。

 海外に活躍の場を求める選手もいる中、この世代の大きな課題は出場機会を掴むことだ。そのための挑戦を、大岩監督は歓迎する。

「この時期は今後もいろんなことがある。その状況で彼らが何をしているのか、どういう立ち振る舞いをするのか。それが競争につながる。レベルの高い環境にいる選手が増えて、競争力のあるグループになってほしい。U-20の選手もJリーグで出場機会を得たり、海外に行ったり、大学生もJ1で試合に出ている選手たちが何人も出ている。そういった選手たちがグループとして一体感を持てるような、競争ができるグループにしていきたい」

 夏を過ぎると、9月からはパリ五輪を目指す戦いが本格化。9月のU23アジアカップ予選で勝ち抜くと、来春にはパリ五輪最終予選となるU23アジア杯が待つ。本大会まで残り約一年。パリ五輪世代の選手たちの動向はさらに加速していく。

(取材・文 石川祐介)