土星の衛星エンケラドゥスは、直径約500kmで水蒸気を多量に含む大気組成を有し、生命誕生の可能性がある星として注目されている。

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 これまでにカッシーニ探査機により、エンケラドゥスの南極付近の表面で、活発な地質活動の証拠となるひび割れが発見されている。ここでは絶えず新しい氷が内部から供給され、氷の粒子や水蒸気の噴出が確認されている。さらにこれらは宇宙空間に飛び出し、プラズマに変化して土星の磁場に捉えられ、土星の磁場回転速度をわずかながら減速させていることも明らかとなっている。

 欧州宇宙機関(ESA)は30日、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)により、エンケラドゥスで、高さ9,600km以上にも及ぶ超巨大水蒸気柱の噴出を捉えたと発表した。このような巨大な水蒸気柱の噴出が観測されたのは初めてのことだ。これによりエンケラドゥスから発せられた水蒸気が、土星の惑星系全体にどのような影響を及ぼしているのか直接観測が可能になっているという。

 今回の観測で判明したエンケラドゥスからの水蒸気噴出は、毎秒300リットルにも及ぶ。これはオリンピックプールをわずか数時間で満たしてしまうほどの量だ。またこの水蒸気のうちの30%は、土星の環のうち、E環のトーラスと呼ばれる水分で満たされた領域に供給され、残りの70%がそれ以外の領域に放出されていることも判明している。

 それにしてもエンケラドゥスの直径はたかだか500kmで地球の26分の1に過ぎないが、その直径の20倍に迫る高さの水蒸気柱を噴出している事実は驚愕に値する。これはエンケラドゥスの引力が極めて小さいことに助けられてはいるものの、地質活動が非常に活発であることの証明でもある。

 ちなみに月は直径約3,500kmでエンケラドゥスの7倍にも及ぶが、活発な地質活動は約30億年前に終わり、現在はこれほど活発な地質活動の痕跡は観測されていない。

 なおJWSTによるエンケラドゥスの観測は今後数年間は継続され、地下に存在していると考えられている海洋の深さや、氷の地殻の厚さなど、さらなる調査の進展が期待されている。