「西野さんなんかは“意識高い系”と揶揄されていた時期もありましたが、様々なプロジェクトに果敢に挑み、成功する姿を見せ、敏腕のビジネスパーソンとしても支持されるようになりました。中田さんも自身のYouTubeチャンネルで教育や書籍関連の動画を投稿し、“頭が良い”というイメージを体現した存在です。最近では森田さん(さらば青春の光)やサーヤさん(ラランド)も経営者としてクローズアップされる機会が増え、クレバーな一面を見せていました。

数年前は芸人が真面目に仕事の話していると『なに真面目に話しているんだよ!』というツッコミが飛んできましたが、今ではそういったツッコミはウケない。それは表面的な笑いよりも、『芸人の話をちゃんと聞きたい』『もっとその芸人について知りたい』というニーズの高まりの裏付けなのかもしれません」

そして、カッコイイをさらに超えて“憧れる”という領域まで、芸人という仕事はイメージが変化しつつあると予想。カツオさんは「YouTuberの台頭によって『好きなことを仕事にする』というスローガンが注目されました。まさに好きなことを仕事にしている芸人は、ある意味ビジネスパーソンにとっての“ロールモデル”になりつつあります。今後、AIに仕事が代替されるようになり、『好きなことを仕事にする』という考えはますます浸透して、より芸人達に羨望の眼差しが向けられるでしょう」と語る。芸人のエッセイ本の今以上のブームを予感させた。

いろいろ芸人のエッセイ本ブームの要因が見えてきた。ただ、「補足的になりますが、改めて“推し文化”の定着にも触れておきます」と時代の変化について解説を始める。

「推し文化自体は私の肌感覚ですと、2010年代中盤から顕在化するようになりました。そのキッカケは寄付型クラウドファンディング“CAMPFIRE”の登場が大きいと考えています。CAMPFIREでは『誰かの夢を応援する』ということにダイレクトに関われ、“推し活”の土壌を作ったサービスと言って良いです。それから徐々に推すことが一般化し、その対象はアイドルや二次元キャラ、もちろん芸人も例外ではありません。

『M-1グランプリ』を始めとした賞レースは、ライバルとの友情物語もあり、ひたむきに努力を続けて優勝を目指す、そんな姿が見られます。言うならば『週刊少年ジャンプ』(集英社)のようなストーリーをリアルで見ることができ、その姿はとにかく推せる。賞レース優勝に向かって頑張る姿を応援するようになり、気付いたら“芸人沼”にハマっている人が続出して、エッセイ本にまで手を伸ばす人は多いのではないでしょうか」

また、推し文化だけではなく、「武智さん(スーパーマラドーナ)や塙さん(ナイツ)など、ネタの分析をYouTubeで披露する芸人も少なくなく、ある意味お笑いを学問にしました。そのことで“お笑いそれ自体”に面白さを覚え、エッセイ本を読んでネタを分析しようとする人も増えたことも大きいかもしれません」と締めた。

芸人のエッセイ本がブームには、コロナ禍による影響、時代の変化など、様々な要因があり、深掘りすればさらなる要因が見つかるかもしれない。なぜ芸人のエッセイ本がブームになっているのかも分析すると、ますますお笑いの楽しさに浸かれるのではないだろうか。

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