秋葉原の通称「メイド通り」では、休日はもちろん平日でも多くのコンカフェ嬢たちが立っている
近年、あちこちの繁華街で目にするようになった「コンカフェ」(コンセプトカフェ)。メイドやアイドルなど、特定のコンセプトに沿った衣装を身にまとった女のコたちと気軽におしゃべりできる飲食店として人気を博している。

しかし、ブームになるとさまざまな問題も生じる。強引な客引きやぼったくりが横行したり、風営法違反で摘発される店舗があったりと、ネガティブなイメージも付きまとうようになった。

■コンカフェは芸能、ガールズバーは水商売

そもそも、コンカフェの定義とは何か。「若い女のコと気軽におしゃべりできる」という意味では、ガールズバーと何が違うのか。秋葉原を中心に、都内で複数のコンカフェ店を長らく運営してきた経営者の男性が次のように語ってくれた。

「コンカフェとガールズバーは本来、似て非なるものです。ガールズバーが"水商売"なら、コンカフェは"芸能"に近いジャンルというのが、経営側や働いている女のコたちの共通認識です。

ガールズバーの女のコたちの優先順位は、一番はおカネ。だから、時給の高さやバック率が店選びのポイントになります。

しかし、コンカフェでは『いくら稼げるか』は重視されません。それよりもコンセプトを背景に非日常的なかわいい衣装、世界観のある内装のほうが女のコの憧れの対象になりますし、僕らもそこに最も力を入れています」(経営者男性)

例えば、秋葉原の有名なコンカフェグループでは、「時給1100円〜」とされているように、一般的なアルバイトに比べ金銭面で"おいしい"わけではない。ならば、女のコたちは何を求めてコンカフェで働いているのか。

「基本的には、アイドルやコスプレーヤーを目指す女のコたちと動機は一緒です。先駆者へのあこがれだったり、自分の知名度を上げたいといったこと。ただ、そういう活動は有名になるまでは"趣味"だけど、コンカフェで働いたら"仕事"になります。

キラキラした世界にあこがれている女のコが、その一端に触れられる仕事先として選ぶところです。だから僕らも、『稼ぎたいなら水商売に行ったほうがいい』と面接では伝えています。

高時給で女のコを集めている店は、あくまで『コンカフェ風のガールズバー』です。そういう店は最近の歌舞伎町を中心に増えていて、メディアにも『月収○○万円を稼げる』などと紹介されています。

でも、そういう店は連絡先の交換や、個人的な「営業」があったりする。お店の魅力ではなく、個人の「色恋」などによる集客をしている。完全に水商売ですよ。コンカフェの文化を踏襲しているつもりの僕らからすると、あれをコンカフェとは言ってほしくない」(経営者男性)

しかし、なぜそういった店は「ガールズバー」ではなく、わざわざ「コンカフェ」を自称するのか。

「実態はガールズバーだったとしても、今どきはコンカフェと名乗ったほうが求人は集まりやすいんです。そこにはコンカフェそのものへのあこがれも影響しているでしょうが、最も大きいのは、女のコに対して、『私がやっているのは水商売じゃないから』という言い訳を与えられることです。

働くことに罪悪感がなくなるんです。女のコをダマしているとまでは言いませんが、正直ずるいやり方だなとは思います」(経営者男性)


「メイド通り」を少し歩くだけでも多種多様なコンセプトのコンカフェ嬢がおり、その店舗数の多さを感じさせる

■コンカフェはあくまで「カフェ」である

ただ、お店側のこだわりは理解しても、「女のコと気軽におしゃべりできる」ことが売りになっている時点で、客としてはガールズバーと大差ない気もしてしまうのだが......。

「コンカフェが『安価に楽しめるガールズバー』として利用されることを否定はしません。しかし忘れられていますが、コンカフェは『カフェ』なんですよね。"お酒も"提供しているだけであって、本来はコーヒー一杯でもOKな場所です。良心的な店なら、1時間でチャージとドリンクで1000円程度から楽しめるように設定していますよ」(経営者男性)

では、店はどこで利益を出しているのかというと、女のコとのチェキ撮影やグッズ販売など接客以外の要素だという。

「これが『コンカフェはジャンルとしては芸能に近い』と説明した理由です。要するに"推し文化"の一つなんです。キャバクラのような疑似恋愛じゃなくて、誰か推しの女のコを見つけて、そのコの活動を応援するために会いに行く。地下アイドルよりも身近な"究極の会いに行けるアイドル"がコンカフェの本質です」(経営者男性)

実際、コンカフェではライブハウスのように女のコが歌って踊る時間を設けている店も少なくない。そして、そのような"推し文化"としての側面が、コロナ禍でもコンカフェの人気を支えてきた。

「ライブが開催されない時期でも、コンカフェは女のコの活動を応援したいというお客さんの拠り所になってきました。店舗数も他の業態に比べて減っておらず、むしろ増えた印象さえあります。

しかも、コンカフェは女のコが自らSNSで積極的に宣伝もしてくれます。水商売だと経歴として隠したがるものだけど、コンカフェは女のコにとって自己PRの場でもあるからです」(経営者男性)

しかし、そんなコンカフェも現在は飽和してきた感があるという。前述したように悪い意味でニュースになる店が増えたことで、淘汰の時期を迎えつつあるそうだ。

「メイド喫茶から派生したコンカフェは、非日常的な空間を提供したり、女のコの夢を応援したりするための場所として発展してきました。しかし、コロナ禍にも強い業態として注目が集まった結果、水商売にしか見えない店も増えてしまった。僕らが心配しているのは、一部の悪質な店のせいで、コンカフェ全体が規制の対象になってしまうことです」(経営者男性)

■グレーゾーンに付け込む店が警察の規制を呼ぶ

ほとんどのコンカフェはガールズバーと同様、風営法の許可ではなく、飲食店営業許可のみで運営されている(深夜0時以降の営業には深夜酒類提供飲食店営業の届出も必要)。

しかし、これもガールズバーと似ているが、「特定の客と会話をしながら接客をする」「お客さんからドリンクをもらう」「一緒にチェキを撮影する」といったコンカフェの特徴は、しばしば「風営法の無許可営業にあたるのではないか」と指摘されることがある。

「これは僕らも以前から危惧していて、警察に『どこまでがアウトなのか』と何度も尋ねています。しかし、具体的にどこまでNGかは答えてくれないんです。『○分までの会話なら』『カウンター越しなら』という方針を掲げている店もありますが、実はそれにも法的な根拠はないそうです。法律を厳密に適用すると影響が大きすぎるから、明確な違反がない限りはグレーという判断になっているようです」(経営者男性)

風営法に当てはまる条件としては「接待行為の有無」が焦点となるが、その「接待行為」の定義も「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と曖昧であり、解釈によってNGラインが分かれる。つまり、コンカフェは「解釈次第ではアウト」という微妙な状態にずっと置かれているのだ。

「だから、このまま『グレーゾーンに付け込んでいろいろやろう』という店が増えて、『コンカフェは社会への悪影響が大きい』という世論になったら、一気に規制の対象にされる可能性があります。僕らとしては、コンカフェという業態を守るためにも警察にはきっちり線引きしてほしいと思っています。そもそも18歳未満が出入りできない店なのに『カフェ』と名乗ってはいけないとかね。

そうなってもまっとうなコンカフェはやっていけます。実際、秋葉原の老舗グループでは、以前からキャストドリンク(女のコにドリンクを奢るシステム)すらない店だってあり、人気のある女のコを育てれば水商売の要素に頼らなくても十分に経営が成り立つと証明しています。これだけコンカフェが一般的になってきたからこそ、業界のイメージが悪くならないようなルールが作られてほしいですね」(経営者男性)