「選手信じ」苦戦制す・鹿児島城西サヨナラ勝ちをした鹿児島城西

<春季九州高校野球鹿児島大会:鹿児島城西4−3樟南>◇4日◇決勝◇平和リース

 鹿児島城西と樟南。実力校同士の一戦は、春の鹿児島の頂点を決めるのにふさわしい緊迫した好勝負となった。

 両者とも準決勝は打ち勝ってコールド勝ちしており、打撃戦の展開も予想されたが、鹿児島城西・芦谷原 睦(3年)、樟南・小峰 康矢(3年)、両先発の3年生右腕を中心に守り合いの展開となり、4回まで両者無得点だった。

 今大会初登板となる小峰は3回まで毎回先頭打者を四死球で出しながらも、初回を併殺で切り抜けるなど、得点を与えなかった。最速140キロの球威を生かし、鹿児島城西打線を5回まで1安打に抑えた。

 5回表、樟南は2死から1番・茶園 将太(3年)が初球の変化球を右翼席に運んで先制する。

 6回は鹿児島城西の2番手・明瀬 諒介(3年)を攻略し、6番・小峰が自らの適時打で2点目を挙げた。

 6回裏、鹿児島城西は3番・明瀬が2ランを放って同点に追いつく。

 樟南は8回表、途中出場の8番・有村 琉星(3年)の左前適時打で勝ち越したが、その裏、鹿児島城西は4番・池野 航太(3年)の左越え二塁打で再び振り出しに戻した。

 9回表無死二塁のピンチをしのいだ鹿児島城西はその裏、2死二、三塁として2番・濱田 陵輔(3年)が中前適時打を放ち、2時間55分の熱戦に決着をつけた。

 鹿児島城西は劇的なサヨナラ勝ちで11年ぶりの優勝を勝ち取った。18年から指揮を執る佐々木誠監督にとってはNHK旗以外での県大会で初めての優勝となる。「うれしいですね。選手を最後まで信じることができた。選手に感謝」と最大の賛辞を贈った。

 予想外だった樟南の先発右腕・小峰の「荒れ球」に狙いを絞れず、5回までわずか1安打。得意とする打ち勝つ展開に持ち込めなかった。

 流れを変えたのは主砲・明瀬の一振りだった。1年の頃から注目の強打者として毎大会で数本の本塁打を放っていたが、今大会は各チームの徹底マークにあい、本塁打はおろか、安打もなかなか出ていなかった。

 「身体が開いて、スイングが崩れていた」と佐々木監督。この日も2打席凡飛に終わっていた。6回「味方が作ってくれたチャンス」に明瀬が燃える。「ホームランでなく後ろにつなぐ。低いライナーの打球を打つ!」と念じ、迷いなく振り抜いた打球は大きな放物線を描いて右翼席に飛び込む同点2ランとなった。

 悩める主砲にようやく一発が出て、6回からはマウンドで力投する姿がナインに火をつける。8回は明瀬が申告敬遠で歩かされた後、4番・池野が意地の適時二塁打を放った。

 9回裏2死二、三塁、2番・濱田のところで佐々木監督は「代打を出そうか」と一瞬迷った。過去4打席、送りバント以外は併殺打と2三振。タイミングは合っていないが「試合を決めるのはこの男」と託した。昨年のNHK旗決勝でも神村学園を相手に9回裏で6点差を跳ね返した時も、最後を締めくくったのは濱田だった。

 追い込まれて直球狙いとは逆の変化球だったが「しっかりミートするつもりで対応できた」とNHK旗と同じく中前に弾き返して決着をつけた。

 昨年の経験者も多く、明瀬ら注目選手もいて今季の鹿児島の優勝候補一番手に挙げられるチームだったが、昨秋は鹿屋中央に準決勝で逆転負け。 「個は強くてもチームで野球ができていなかった」(濱田)悔しさを冬にぶつけ、厳しい練習を越えてチームで勝つ粘り強さがついたことを証明した決勝戦だった。3季ぶりに挑む九州大会。佐々木監督は「日頃から『君たちは全国で通用するチーム』と言い続けてきたことを九州で証明したい」と大きな期待を寄せていた。

(取材=政 純一郎)