開脚のがんばりすぎはかえって危険。正しい股関節のトレーニング法をお教えします(写真:プラナ/PIXTA)

テレビや雑誌などのメディアで健康情報を発信するトレーナーの坂詰真二さんが、疲れない体、引き締まった体、自信がもてる体をつくるメソッドを伝授する本シリーズ。今回から、体の不調を和らげてコンディションを整えるトレーニングについてお伝えします。1回目のテーマは「股関節のコンディション 」です。

さて、股関節に痛みが出やすいのは男性でしょうか? 女性でしょうか?

A 男性
B 女性 
C 性別は関係ない

開脚ストレッチには要注意

答えは「Bの女性」です。

股関節は、太ももの骨(大腿骨)の先端の球状部分(大腿骨頭)が、骨盤の下部(寛骨臼:かんこつきゅう)に収まる構造になっています。本来は球状部分の8割程度が骨盤内に収まっているので構造的に安定していますが、女性にはこの関節の収まりが十分ではない人が多く、この関節のゆるさが、股関節の痛みを誘発する原因になっています。


股関節の図(イラスト:k_katelyn/PIXTA)

誰でも股関節に過度な負荷をかければ、痛みのもととなる炎症が起こりますし、継続的に負荷がかかれば関節の変形を引き起こすことになります。サッカー選手やマラソン選手などのアスリートでない、一般の方でも筋トレやランニングなどをやりすぎれば、股関節痛を引き起こします。

運動中に股関節に違和感があったり、翌日以降も疲労が残ったりするようであれば、強度(重さ、スピード)、回数、時間、頻度を抑えましょう。

ストレッチやヨガでも、股関節周囲の筋肉や腱、靭帯などを伸ばしすぎると炎症が起こる場合もあります。とくに“開脚ストレッチ”には注意が必要です。

本来、私たちの股関節は自力で広げた場合、左右にそれぞれ45度程度、計90度しか開かない構造になっています。つまり、180度の開脚には無理があるのです。

私たちの日常動作では歩行はもとより、階段昇降やイスからの立ち上がり動作にしても前後への動きが多く、左右の動きというのはごくわずかです。ですから、脚が左右に大きく開かなくても支障はありません。基本的にストレッチは疲労を和らげる効果があるトレーニングですが、やりすぎは禁物です。

ヨガやバレエ、体操、フィギュアスケートなどでは開脚をすることがパフォーマンスアップにつながるので、ダンサーや選手は“無理をして開脚する努力をしている”のです。ですから、彼ら彼女らのなかには股関節痛に悩まされている人も少なくありません。

股関節痛の原因は体重と姿勢

スポーツ以外では、長時間の立ち仕事や歩行なども股関節への負担となります。

立っているだけでも股関節には負担がかかりますから、接客業などの立ち仕事や、営業などで移動の多い仕事の人は、可能な限りイスに座ったり、横になったりして股関節を休める時間を設けましょう。

立ったり歩いたりする時間が短くても、体重が重ければそれだけ股関節に負担がかかります。一般的に“歩行時の着地では、体重の3倍の負荷が股関節にかかる”といわれています。つまり体重が重ければ重いほど、股関節には負担がかかります。

とくに激しい運動はしていないのに股関節に疲れが残りやすい人で、BMIが25以上なら、体脂肪を減らすダイエットを検討する必要があります。(ダイエット法については筆者コラム:リバウンド無し食事を減らさない「3K食材」減量法をご参照ください)

<BMI(体格指数)の計算方法>
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
BMI25以上で肥満と判定される

股関節に痛みがある場合、もう1つ注意したいのは、立っているときの体の使い方です。

左右に均等に体重を乗せている人のほうが少数で、ほとんどの人はどちらかの足に偏って体重をかけています。立ち姿勢の延長が歩行ですから、立っていても歩いていても、体重を多くかけている側の股関節に疲労が蓄積していきます。

信号待ちや電車内などでは、立っているときの自分の立ち方を意識し、できるだけ左右均等に体重を乗せるか、左右交互に体重を乗せるようにしましょう。

運動、歩行、仕事後に股関節の違和感や痛みがあれば、まずアイシングをしましょう。アイスバッグや厚手のビニール(水が漏れないよう注意)に氷を入れて手ぬぐいなど薄い布で包み、横になった姿勢で股関節の痛みがある部位に当てて、伸縮包帯でくるみましょう 。皮膚に負担をかけないように、氷と一緒に水を少し入れるといいでしょう。

15〜20分間ほど冷やした後、1時間ほど間を空けて皮膚の温度を戻したら、再度アイシングをしてください。皮膚が弱い方や冷たさに弱い方はアイシングの時間は10分程度でもかまいません。その日は、入浴や飲酒は血行が促進されて痛みが増しやすいので、避けるようにしてください。

股関節の痛みを予防する方法

続いて、股関痛の予防法についてお伝えします。

股関節の負担を減らすには、股関節周囲の筋肉を鍛えて関節の安定性を高めることが重要です。とくにお尻の横にある中殿筋(ちゅうでんきん)という筋肉を鍛えると、立った状態でも歩行時でも股関節が安定します。仕事や家事の合間などでも手軽にできるように、立ったままできる中殿筋のトレーニングを次ページで紹介します。

また、先ほどもお話ししましたが、左右の脚を均等に使うように訓練することも大事です。左右の体重のかけ方のバランスを整えるスクワットも次ページで紹介します。

日常生活では歩行時に、できるだけ左右に体がブレないよう真っすぐ歩くことが必要です。

そのためには歩き出す前に一度足を揃えて、つま先を正面に向け、足の外側(小指側)に体重が逃げないように、膝を締めて立ちます。そのうえで、男性は30僉⊇性は25僂良の平均台の上を歩くつもりで歩いてみてください。この際、足の親指で地面を押すように意識すると、左右のブレがより少なくなります。

女性はハイヒールなど、かかとの高い靴を履く機会があると思いますが、こういった靴は体のブレを招いて、股関節の負担を増長してしまいます。股関節の負担を減らすために、かかとが低くてクッション性の高いスニーカーなどを履くように心がけましょう。

最後に股関節の病気について紹介します。

変形性股関節症という病気を聞いたことがあるかと思います。加齢に伴って骨盤(寛骨臼)と大腿骨頭が変形してくることで、股関節周囲に痛みが起こり、立ち姿勢の維持や歩行に支障をきたす疾患です。

骨盤に対して大腿骨の収まりが十分でない状態を臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)といいますが、これが変形性股関節症の最大の原因です。


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関節というのは消耗品で、程度の差はあれ、誰でも加齢にともなって少しずつ変形していきます。この際、臼蓋形成不全があると立っていても歩いていても通常より股関節にかかる負担が大きくなるため、関節が早期に変形してしまうのです。

臼蓋形成不全や変形性股関節症以外でも、鼠径部(そけいぶ)付近で腸の一部が飛び出る鼠径ヘルニアや、血流不良で大腿骨頭の一部が壊死(えし)する大腿骨頭壊死症、自己免疫疾患の関節リウマチなど、さまざまな疾患が股関節痛の原因になりますので、股関節の痛みや違和感が常時あるようであれば、一度病院で検査を受けたほうがいいでしょう。

股関節に効くトレーニング2つ

■中殿筋のトレーニング
●股関節の安定性を高める

(匱蠅鬟ぅ垢壁に添えて足を揃えて真っすぐに立ったら、一方の足を少し前に出して床から浮かせる
息を吐きながら1秒で、上体を床と垂直に保ったまま、浮かせた側の足を45度ほど横に上げる
Bを吸いながら2秒かけて、足を元の位置に戻す
これを10回繰り返したら、反対側の足も行う。左右交互に10回×3セットを、週に2〜3回行う
※つま先が正面ではなく横を向いてしまうと、中殿筋に効かなくなるので注意


■膝閉じスクワット
●両脚のバランスを整える

^堕蠅靴織ぅ垢棒く座って足と膝を閉じてつま先を正面に向ける。前傾してふくらはぎを両手ではさむ
息を吐きながら1秒で、両手で脚を閉じたまま、上体を起こして立ち上がる
Bを吸いながら2秒かけて、元の位置に戻る
これを10回繰り返したら、1分の休憩をはさんで3セット行う
※背中が丸まると腰に負担がかかり、下半身に効かなくなるので注意


(坂詰 真二 : スポーツ&サイエンス代表、フィジカルトレーナー)