いろんな人・動物が来場するペットイベント。迷惑な飼い主は困りものです(写真:おでか犬/PIXTA)

近年、バラエティに富んだペットイベントが各地で開催されています。ペット用品などを販売する店舗も数多く出店していて、それを楽しみにイベントに参加する飼い主も多いようです。

ここ数年はコロナ禍の影響で開催中止となっていましたが、3月13日にマスクの着用ルールも緩和されたことから、徐々に開催の告知が増えてきました。心待ちにしていた飼い主も多く、今後のペットイベントの盛況が期待されています。

筆者は仕事柄、多くのペットイベントに参加していますが、その会場で飼い主の横暴と思われるような振る舞いを目にすることがあります。「マナー」や「モラル」を度外視して、周囲に迷惑をかけてしまう飼い主が少なからずいます。

「マナーが悪いと思った」が9割

2021年9月、株式会社PLAN-Bが運営する犬の情報発信メディア「INUNAVI」が全国の10代〜60代以上の338人を対象に、「わんちゃんの飼い主さんのマナー」に関するアンケート調査を実施しました。飼い主のマナーが悪いと思ったことがある人は91.1%もいたそうです。

とくに多くの人や動物が集まるペットイベントでは、周囲に迷惑をかけないよう気を配る必要があります。筆者が実際に目撃したいくつかのケースから、「迷惑な飼い主」にならないために必要なことを考えてみます。

ケース1:犬の糞尿の処理をせず逃走

あるイベントでのこと。シベリアンハスキーが会場内で糞尿をしてしまいました。飼い主は「ごめんなさい。今、拭くものを車から持ってくるので」と言って、愛犬を引っ張って出口のほうに走っていきました。

見ていた数人の飼い主は、「犬が粗相をしてしまうのは仕方がないけど、なんで飼い主が拭くものなどを持参してないの?」と言いながら、他の人が踏まないようにと注意を促しながら待っていました。

しかし、20分以上経ってもその飼い主は戻ってきませんでした。結局、会場スタッフに連絡し、片付けてもらいました。

ケース2:販売商品にマーキングする犬に気付かない

オスのチワワを連れた飼い主が、おもちゃを販売している店舗で品定めをしていました。チワワはリードにつながれて歩いていましたが、飼い主が歩くたびに足元に置かれた段ボールにマーキングをしています。

近くにいる人が声を上げるとすぐに店員が気付き、「あちこちにマーキングをしているので、抱っこしてください」と注意をしました。飼い主は「え〜、気が付かなかった。ごめんね〜」と笑いながら、そそくさとその店を離れました。

店員がいくつかの段ボールをチェックすると、商品にも被害が及んでいました。「なんでマナーベルト(オス犬特有のマーキングが周囲への迷惑にならないように、オス犬のお腹部分に巻き付けて使うアイテム)していないのか、マナーがなってない」と憤慨していました。

ケース3:購入前のおやつを犬に与える

ある店舗のレジで、柴犬を連れた飼い主と店員がもめています。話を聞いていると、どうやらその飼い主は購入する前のおやつを開けて、愛犬に与えてしまったようです。

飼い主は「ちゃんとお金を払うからいいじゃない。問題ないでしょ」と、強気で正当性を主張しています。しかし店員は「購入前はまだお店のもの」と反論しています。

しばらくしてほかの店員がスマートフォンを持ちながらやってきて、「それは窃盗罪になると弁護士が言っている」と、ネット検索した画面を見せると、飼い主は急に平謝りして代金を支払い、そそくさとその場を離れていきました。

「常識がない」と店員は首をひねりながら驚きを隠せないようでした。

ケース4:販売用のカートに犬を乗せる

最近はペットを乗せるカートが人気で、販売する店舗も増えてきました。試乗用のカートも数台用意され、実際にペットを乗せることができます。

しかし、「わぁ、これいいね。乗ってみなよ」と、次々に販売用のカートにパピヨンを乗せていく飼い主が……。

気付いていない店員に「あれって乗せても大丈夫なんですか?」と他の飼い主が伝えました。店員は驚いて「それは販売用なので乗せないでください」と伝えましたが、「あら、知らなかったわ」と言いながら、謝りもせずどこかへ行ってしまいました。

その犬が乗ったカートには抜け毛が付着してしまい、店員は慌てて取る羽目になりました。「試乗用と書いていないのに何で乗せるかなあ。常識がない」と店員は憤慨していました。

ケース5:注意書きを無視

エキゾチックアニマルのブースで、リクガメの展示販売をしていました。<ワンちゃんが近づいたり吠えたりするとカメさんが怖がりますので、遠くから見てあげてください>と、注意書きが掲示されています。そこに、ミニチュアダックスフンドを抱きかかえた家族がやってきて、リクガメの入った容器の前に行きました。

犬は動いているリクガメを見るなり、勢いよく吠え始めました。しかし、飼い主は注意書きが目に入らないのか、「リクガメなんて初めて見るね〜。面白いね〜」と言いながら、さらに近づけていきます。

リクガメは怖いのか動くのを止めて、首を引っ込めてしまいました。店員が注意をすると、飼い主の家族の1人が「チェッ」と舌打ちをして去っていきました。

イベントで必要なマナーとモラル

誰もがイベントを楽しむためには、ルールを守り、モラルのある行動をとることが大前提です。飼い主1人ひとりがそれを心がけることで、前述したケースのような「迷惑な飼い主」にならずに済み、不用意なトラブルを避けることができます。

多くのペットイベントでは、下記のような「マナー」と「モラル」に関する注意事項を事前に発信しています。ペットイベントを主催しているAさんによると、「トラブルが起きた際、大抵の飼い主が『そんな注意事項があるとは知らなかった』と言う」と話します。

楽しいイベントの内容ばかりに気を取られて、注意事項に目を通す人は少ないとか。「参加する前には必ず目を通して、それを心がけてほしい」とのことでした。

では、実際どんなことを心がければいいのでしょうか、具体的なポイントを挙げてみたいと思います。

■狂犬病・混合ワクチンの接種、ノミ・ダニ駆除をしておく

感染症や寄生虫などをうつさない・うつらないために、必要な予防接種、駆虫薬の投与をしておきましょう。

■排尿・排便は会場に入る前にさせておく

トイレはできるだけ事前にすませましょう。飼い主がトイレ用品を持参し、会場内ではペットシーツの上などにさせるようにします。粗相をしてしまった場合には、飼い主が責任をもって片付けます。排泄物、ゴミなどは各自が持ち帰りましょう。

■マーキングをする場合はマナーベルトを装着する

飼い主が気づかないうちに、会場内の壁や柱、商品の入った段ボールなどにマーキングをしてしまう場合があります。マーキング癖がある犬はマナーベルトなどを利用しましょう。

■首輪やハーネスは必ず着用し、リードはできるだけ短く持ち離さない

会場内ではできるだけリードを短く持ち、飼い主が犬をコントロールできるようにします。万が一の逃走や迷子に備えて、マイクロチップあるいは鑑札や迷子札も装着します。

■かみ癖がある犬にはマズルガードを装着する

基本的にかみ癖がある犬は参加を見送ったほうがよいでしょう。もし、参加する場合にはマズルガード(口輪)などを装着し、トラブルにならないように飼い主がしっかりと管理しましょう。

■ヒート中は参加を控える

雌犬・雌猫など、ヒート中(発情期)、もしくはその前後の参加は控えるようにしましょう。

■ペットから目を離さない

飼い主同士がおしゃべりに夢中になると、ペットから目を離しがちです。そのようなことがないよう、しっかりとペットから目を離さないようにしましょう。また、イベント会場には多くの商品が並んでいます。ペットが汚したり、いたずらをしたりしないように注意しましょう。

他の人・ペットに配慮できる飼い主に

小型犬の飼い主のなかには、大型犬が苦手という人もいます。また、犬以外のペットを飼っている人は、小型犬であっても怖いと感じることもあります。ほかにも、猫が苦手、フェレットが苦手、エキゾチックアニマルが苦手という人もいます。

「苦手な人もいる」とつねに心に留め、配慮することが大切です。そして、店舗に対しても迷惑をかけることのないように細心の注意を払うことが必要です。

イベントによっては、犬、猫、ウサギ、鳥、ヤギ、ヒツジ、馬、モルモット、爬虫類など、多種多様のペットが参加することがあります。当然のことですが、「種」が違えば苦手なこともそれぞれ違います。

苦手なことをされればストレスを感じ、体調を崩したり、トラウマを抱えたりすることにもなりかねません。飼い主は自分の飼っているペットだけでなく、他のペットに対しても優しい心で、十分な配慮をすることが大切です。

配慮は「他人に対して心を配ること」という意味の言葉です。「心づかい」「気配り」と同様の意味をもちます。ペットイベントをみんなが心から楽しむために、必要なことではないでしょうか。

(阪根 美果 : ペットジャーナリスト)