今の時期は気候や環境の変化で、ちょっとしたことでイライラしたり、些細なことをいつまでも気にかけてしまったりと、気持ちが不安定になる人が多いようです。中医学士で漢方薬剤師の大久保愛先生が、すぐできるメンタル不調対策と、逆にしてはいけないNG行動を教えてくれます。

最近、気持ちが不安定になっていませんか?

【カラダとメンタル整えます 愛先生の今週食べるとよい食材!】vol. 206

最近、時間に追われ、心もカラダも余裕がなくなるタイミングが増えてはいないでしょうか。やることや考えることがありすぎて、神経過敏になって怒りっぽくなってしまったり、そうかと思えば急に集中力が途切れたり、仕事に追われ睡眠時間を削り疲労困憊したりとギリギリで生きている方も多いと思います。

いっときであればよいのですが、例年4月いっぱいは多くの人が慌ただしく過ごしている印象です。GWに入るまで怒涛の日々が待っていることだと思います。実は漢方医学でも春の不調の特徴として、些細なことに怒ってしまったり、処理する情報量が増え、それに伴い目を酷使することになり、頭痛や肩こりなどの不調を感じることが増えるといわれています。これを『肝』の働きがダメージを受けていると表現したりします。

ということで、今週は春のイライラが悪化してしまうNG習慣と食べるとよい食材を紹介していきます。

今週は、イライラの対策となる食薬習慣

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その結果、神経過敏になったり、感情が顔や行動、言葉に出てしまうことが考えられます。人間関係やさまざまな段取りにも影響してしまいますよね。さらに、女性の場合には月経周期によってもイライラが加速する時期もあり、余計に怒りや食欲などを爆発的に感じる機会が増えてしまうこともあるかもしれません。

この症状を漢方医学では、『肝血虚』や『肝気鬱結』であると考えます。そこで、自律神経を整えるべく鉄やビタミンB群、タンパク質を補給することで『肝血』を補い、ストレスによって発生する活性酸素を減らす『疎肝理気』作用のある食薬を取り入れることがおすすめです。ですが、ストレスが多い時には、すぐにストレスから解放してくれて満足感が高いメリットがあり、体内でイライラの素となる『痰湿・湿熱』に変換されるデメリットのある食事を欲してしまう可能性が高まります。

その代表的存在がスイーツです。さらに、お菓子だけでお腹が満たされ栄養補給するタイミングが減ってしまい、『血虚』の後押しをしてしまうことも考えられます。そのため、『肝血』を補い『疎肝理気』してくれる食材を十分に食べ、なるべく『痰湿・湿熱』の材料となる食べ物を控えることが必要です。今週食べるとよい食薬は、【ピーマンの海老詰め】です。逆にNG行動は【ご褒美スイーツ】です。

食薬ごはん【今週食べるとよい食薬:ピーマンの海老詰め】

『肝血』を補う高タンパク食材でビタミンB群やミネラルも豊富な海老と鶏肉を『理気』作用のあるビタミンE、ビタミンC、βカロテン、クロロフィルなどの抗酸化物質を含むピーマンに詰め込んだメニューが便利。また、海老の赤い色素アスタキサンチンや鶏肉のイミダゾールジペプチドも疲れた頭を癒してくれます。

レシピはこちらです。

<材料>タネむき海老   100g(荒くミンチ)鶏ひき肉   200gオートミール 大さじ1味噌     大さじ1生姜     1かけ  (みじん切り)ーーーピーマン   4つ(種は捨てずに半分に切る)ーーー調味料酒・水    大さじ1醤油     小さじ1

<作り方>タネの材料をポリ袋に入れてよくこねて、ピーマンに詰める。クッキングシートを長めに切ってフライパンに敷き、ピーマンを並べ、調味料を回しかけ、クッキングシートで包むようにたたむ。フライパンとクッキングシートの隙間に水を150ml程度入れ、蓋をして10分程度中弱火で蒸したら完成。※面倒な人は軽くラップをかけ5〜6分レンジにかけてもOK。

NG行動【ご褒美スイーツ】

気分転換やご褒美として食べるスイーツがNGです。私たちは忙しくて感情がコントロールできないときほど、甘い物を欲しやすくなってしまいますが、そんなときこそ間食や食事の質を、自分のカラダにとって必要な栄養素になるように調整することがベターです。

とはいえ、即リラックスでき幸福度をアップしてくれるスイーツは、魅力的で意識的に控えることは難しいかもしれません。そのため、食べてしまったときには、血糖値の急上昇を抑えるように片付けや掃除をして歩き回ったり、お散歩をしたりと気分転換の行動となる運動習慣もセットで取り入れるようにしましょう。血糖値の安定は、感情の安定にもつながりますよ。

イライラした時ほど、負のスパイラルに陥らないように食生活を整えたいものですが、なかなかそうはいかないものです。思うようにコントロールできないと感じた人は、忙しさや月経前のイライラがひと段落した心もカラダも元気な時の生活を見直すことから始めてみましょう。体調が悪い時に、生活習慣を変えることは難しいです。元気なときに健康意識のレベルを少しずつ上げて体調の波を小さくできるようにしていきたいですね。

ほかにも心とカラダを強くするレシピは、『不調がどんどん消えてゆく 食薬ごはん便利帖』(世界文化社)で紹介しています。もっと詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

※食薬とは…『食薬』は、『漢方×腸活×栄養学×遺伝子』という古代と近代の予防医学が融合して出来た古くて新しい理論。経験則から成り立つ漢方医学は、現代の大きく変わる環境や学術レベルの向上など現代の経験も融合し進化し続ける必要があります。

近年急成長する予防医学の分野は漢方医学と非常に親和性が高く、漢方医学の発展に大きく寄与します。漢方医学の良いところは、効果的だけどエビデンスに欠ける部分の可能性も完全否定せずに受け継がれているところです。

ですが、古代とは違い現代ではさまざまな研究が進み明らかになっていることが増えています。『点』としてわかってきていることを『線』とするのが漢方医学だと考えることができます。そうすることで、より具体的な健康管理のためのアドバイスができるようになります。とくに日々選択肢が生じる食事としてアウトプットすることに特化したのが『食薬』です。

Information

大久保 愛 先生漢方薬剤師、国際中医師。アイカ製薬株式会社代表取締役。秋田で薬草を採りながら育ち、漢方や薬膳に興味を持つ。薬剤師になり、北京中医薬大学で漢方・薬膳・美容を学び、日本人初の国際中医美容師を取得。漢方薬局、調剤薬局、エステなどの経営を経て、未病を治す専門家として活躍。年間2000人以上の漢方相談に応えてきた実績をもとにAIを活用したオンライン漢方・食薬相談システム『クラウドサロン』の開発運営や『食薬アドバイザー』資格養成、食薬を手軽に楽しめる「あいかこまち」シリーズの展開などを行う。著書『心がバテない食薬習慣(ディスカヴァー・トゥエンティワン)』は発売一ヶ月で七万部突破のベストセラーに。『心と体が強くなる!食薬ごはん(宝島社)』、『食薬事典(KADOKAWA)』、「食薬ごはん便利帖(世界文化社)」、「組み合わせ食薬(WAVE出版)」、「食薬スープ(PHP)」など著書多数。公式LINEアカウント@aika

『1週間に一つずつ 心がバテない食薬習慣』(ディスカヴァー)。

『女性の「なんとなく不調」に効く食薬事典』(KADOKAWA)体質改善したい人、PMS、更年期など女性特有の悩みを抱える人へ。漢方×栄養学×腸活を使った「食薬」を“五感”を刺激しつつ楽しく取り入れられる。自分の不調や基礎体温から自分の悩みを検索して、自分にあった今食べるべき食薬がわかる。55の不調解消メソッドを大公開。

©Alexey Yaremenko/Gettyimages©Aja Koska/Gettyimages

文・大久保愛