春は、住宅展示場の来場者が最も多くなる時期。新築を検討する時、気を付けるべきことは何か。1級建築士のしかまのりこさんは「換気扇やインターホンなどの住宅設備については検討が後回しになりがちです。その中でも共働き夫婦から『付けなかったことを後悔している』という声が多い6つの住宅設備を紹介します」という――。
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

■間取りやインテリアよりも住宅設備の優先順位は低くなりがち

新年度になり、今年こそは「家を建てたい」と思っている方も多いのではないでしょうか。そのマイホームを計画する場合、とくに注意したいものが、照明や換気扇・インターホンなどの「住宅設備」です。

なぜなら、多くの人は家を計画する際、リビング・書斎・家事コーナーなどの間取りやインテリアにお金や時間をかけてしまい、住宅設備の設置をあきらめるなど後回しになりやすいからです。そこで、今回は住まいのご相談にいらっしゃる方の中から、共働き夫婦が付けなかったことを後悔した住宅設備で、とくに多かったものについてご紹介したいと思います。

■追いだき不要で4時間後も温かく光熱費の節約になる

・6位 高断熱浴槽

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「すぐにお湯が冷めてしまう。再び温めるのにも時間がかかる」(神奈川県 60代男性 契約社員)
「家族が多く追いだきを繰り返すので、ガス代が高い」(千葉県 50代女性 会社員)
「入浴剤を使うので、あまり追いだきはしたくない」(東京都 30代女性 会社員)

毎日使うお風呂に対する不満は意外に多く、とくに光熱費が高額になっている昨今は、お湯が冷めにくい浴槽を選べばよかったと後悔する人が多くなっています。高断熱浴槽とは、保温機能の高い断熱材で覆った浴槽のことで、断熱効果のある風呂ふたと一緒に使うと湯温が冷めにくいのが特長です。温かい飲み物を入れた水筒をイメージするとわかりやすいと思います。

例えば、従来の浴槽の場合、42度の湯温は2時間で約38度まで下がってしまいます。しかし、高断熱浴槽ですと、42度の湯温は2時間で約41度、4時間たっても約39.5度までしか下がらず、お湯が冷めにくいのです。

つまり入浴時間が1〜2時間程度ずれているだけであれば、追いだきしなくても入浴できるということです。入浴時間が空いて、追いだきをした場合でも、追いだき時間が減るため、ガス代などの節約になります。例えば、給湯器が都市ガスの場合は追いだき1回で年間3600円程度、プロパンガスの場合は追いだき1回で年間7400円程度の節約になります。

追いだきを一日に何回も繰り返す場合は、さらに節約効果がありますので、それぞれの帰宅時間が異なりがちな共働き夫婦には、お財布にやさしく地球にエコな住宅設備になります。リフォームで高断熱浴槽に交換する場合は、お住まいの自治体などから補助金が出る場合もありますので、リフォーム会社に確認してもらいましょう。

■来客応対だけでなく防犯機能付きもスマホとの連携も可能

・5位 高機能ドアホン

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「オンライン会議中に、宅配便の応対や受け取りができない」(埼玉県 40代男性 会社員)
「子どもだけの留守中の来訪者は、録画して確認したい」(茨城県 40代女性 会社員)
「主人がいないとき、インターホンには出たくない」(千葉県 30代女性 会社員)

宅配便や来訪者の応対をするドアホンですが、治安が悪くなっている昨今では、従来のドアホン機能だけではなく、防犯性能も求める声が多くなっています。高機能ドアホンとは、従来のドアホン機能に加え防犯機能や便利機能が付加されたものです。

例えば、留守時に来訪者があった場合でも、スマホでリアルタイムに映像と音声で、来客応対できます。録画機能もあるので、留守中の来訪者の用件を、帰宅後に確認できます。女性の声を男性のような低い声に変えられる「ボイスチェンジ機能」もあり、ご主人の帰宅が遅いなど、女性だけでの在宅の場合も安心です。

また、お子さまだけでお留守番しているときに見知らぬ来訪者などから呼び出しがあった場合は、相手に名前や用件をたずねるメッセージを流すと同時に相手の映像や音声を記録、不審な来訪者の場合には応答しないこともできます。

宅配便が来た場合は、「宅配ボックスに荷物を入れてください」というメッセージを流し、宅配業者さんと会わずに荷物を受け取ることもできます。この機能、不在時はもちろん、在宅で手が離せないときも便利です。

その他にも、建物周りに設置した防犯カメラをドアホンに接続することで、屋外の様子が気になったときなど、防犯カメラ映像を室内モニターで確認できます。また外出先でも、スマホから防犯カメラで屋外の様子を確認したり、カメラのセンサーが反応したときに通知を受け取ることもできます。共働きで留守が多い家族には、無くてはならない機能といえるでしょう。

■両手がふさがっていても施解錠ができる鍵のかけ忘れ防止機能付きも

・4位 スマートキー

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「子どもがきちんと鍵をかけて外出したか心配になる」(東京都 30代男性 会社員)
「夜帰宅した時に、暗い中、鍵をカバンから探して取り出して鍵穴にさすのはイライラする」(東京都 40代男性 会社員)
「荷物が多いとき、鍵の施錠・解錠が不便」(神奈川県 20代女性 会社員)

出社・帰宅時の鍵の施錠・解錠は、毎日のルーティンだからこそ、その利便性に対する不満が多いようです。スマートキーとは、ボタン操作などで簡単に施錠・解錠ができるキーシステムのことです。従来のようなシリンダー錠と違い、鍵穴へ鍵を差し込む必要がありません。施解錠の方法には、顔認証や指紋認証・スマホ認証などさまざまなタイプがあり、基本的にキーをカバンに入れたままドアに近づくだけで、玄関ドアが施解錠できます。また、キーには非常用鍵がついていますので、停電時も解錠できます。

スマートキーの防犯性ですが、ピッキング防止機能、こじ開け防止機能などがあり、従来のシリンダー錠よりも高くなっています。また、スマートキーには、玄関ドアを閉めると自動で鍵がかかるオートロック機能が付いているものもあります。急いでいるときでも鍵のかけ忘れがないのは、便利であると同時に安心ですね。

その他、解錠してドアが自動開閉するもの(引き戸タイプの玄関ドア)もあり、荷物などで両手がふさがっている場合には大変便利な住宅設備です。ドアノブに取り付けるだけの簡易なスマートキーはネットでも簡単に購入・設置できますが、顔認証など高機能なスマートキーは専門業者に取り付けを依頼する必要があります。

■玄関は悪臭がたまりやすく不潔になりやすい

・3位 玄関の換気扇

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「玄関がカビ臭い、靴の臭いが気になる」(茨城県 40代男性 会社員)
「来客があると、玄関が臭っていないか不安になる」(東京都 40代女性 会社員)
「玄関の換気が悪い・よどんでいる」(埼玉県 50代女性 会社員)

玄関はその家の顔となるため、明るく清潔にしておきたい場所です。しかし、靴や傘など汚れたものや湿ったものを収納する場所でもあるため、臭いに対する不満が多くなっています。

換気扇とは、ご存じのように天井や壁などに取り付け、室内の空気を戸外に排出させる住宅設備のことです。汚れた室内の空気を排気すると同時に、室内の脱臭、防塵(ぼうじん)、防湿、温度調節の働きもしてくれる優秀なものです。

一般的には、臭いのしやすいトイレやキッチン・水蒸気が発生するお風呂に設置されていますが、玄関には設置されていません。玄関は汗や雨で湿った靴や、靴の裏などについたゴミやほこり、下足入れやぬれた傘など、悪臭を発するものが多い場所です。しかし、玄関は防犯上の観点から窓などを設置しないため換気が悪く、悪臭がたまりやすく、不潔になりやすいのです。

消臭剤や芳香剤などもありますが、この問題を根本的に解決するためには、玄関専用の換気扇を壁または天井に設置することです。この換気扇には、玄関の悪臭を排気してくれるタイプの他、熱交換型といって、玄関の湿度・温度を変えずに、悪臭のする空気だけを入れ替えてくれるタイプのものがあります。

玄関に換気扇を後付けするには、壁に穴を開けたり、天井にダクトを通したりと比較的大掛かりな工事になりますので、新築の際に付けた方が金銭的にもお得です。とくに壁に穴を開ける場合は、雨漏りなどのトラブルが発生しやすいので、きちんとした工事のできる業者選びが大切になります。金銭面だけでなく、工事実績などを確認してから依頼しましょう。

■汚れた手で触れると不衛生になる水栓自動・タッチレスなら節水にもなる

・2位 自動水栓・タッチレス水栓

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「料理中、肉などを触った汚れた手で触るので、水栓のべたつきが気になる」(東京都 30代女性 会社員)
「子どもが手洗いの時に、水を出しすぎる」(千葉県 40代女性 会社員)

自動水栓・タッチレス水栓とは、キッチンや洗面台の水栓に手を触れることなく、水の吐水・止水が自動でできる設備のことです。水栓にはセンサーが付いており、手を近づけると反応、吐水や止水ができます。オフィスで自動水栓・タッチレス水栓に慣れた共働き夫婦にとっては、自宅の水栓もタッチレスにすればよかったと後悔することが多いようです。

キッチン作業では、野菜や肉・魚を触ったあとなど手が汚れる頻度はとても高く、そのまま水栓を触れば、汚れが水栓に付くため衛生的にも良くありません。自動水栓・タッチレス水栓は、両手が汚れていても、手をかざすだけで水が出るので大変便利です。

その他、タッチレス水栓の場合は、手が水栓から離れると自動で止まるため、無駄な水が流れることがなく、節水にもなります。とくにお子さまの手洗いなどには安心ですね。自動水栓・タッチレス水栓は、自動・手動のモード切り替えができるため、洗濯時のつけ置き洗いなど、水を出しっぱなしにしてためることもできます。

自動水栓・タッチレス水栓は、電気式と乾電池式があり、乾電池式の場合は電気工事も不要で、手軽に交換することができます。

■通販を頻用する共働きの必須アイテム受け取りだけでなく発送も可能

・1位 宅配ボックス

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「日中は不在のため、荷物が受け取れない」(東京都 40代女性 会社員)
「コンビニでの荷物の発送が面倒」(埼玉県 40代男性 会社員)
「置き配が不安」(東京都 30代女性 会社員)

ネットショップなどで注文した荷物の受け取りは、日中は仕事を持つ共働き夫婦にとって大変悩ましい問題です。再配達の手続きや、配達時間まで自宅で待機しなくてはいけないのは、時間がもったいないですよね。また、お子さまだけでの留守番のときは、対面で荷物を受け取らせるのは少し心配と考える保護者も多いようです。

しかし、宅配ボックスがあれば、「在宅・不在時の荷物の受け取り」はもちろん、荷物の発送も可能です(宅配業者と別途契約が必要)。また、クレジットカードなどの書留郵便も、現金書留など一部を除き宅配ボックスで受け取ることができます。

その他にも、荷物が届いている場合、宅配ボックスの近くに来ると、スマートフォンに通知してくれたり、スマートフォンをポケットに入れたままワンタッチで宅配ボックスを解錠できるなど、スマートフォンと連携できる宅配ボックスもあります。宅配ボックスには、玄関近くに置くだけの簡易なものから、工事をして設置する本格的なものまで種類はさまざまなので、予算に合わせて検討できます。

■見た目重視で選んだ住宅設備は後悔のもとになりがち

最後に、番外編として「付けたけれど、後悔した住宅設備」について、いくつかお話ししたいと思います。

・小さい洗面ボウル

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美容院やおしゃれな飲食店のトイレでよく見かける小さい洗面ボウル。小さい洗面ボウルは、じゃまにならず、またインテリア性が高くおしゃれです。しかし、顔や手を洗う場合、面積が小さいため水はねしやすく、洗面台や床が水浸しになり掃除の手間も増えます。

お店などの店舗で使用する場合はともかく、自宅で使用する洗面ボウルは、ある程度の大きさが必要です。洗面ボウルは、幅40cm奥行30cm以上の商品を選ぶようにしましょう。

・寝室の天井ダウンライト

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天井のダウンライトは、シーリングライトに比べてコンパクトで、どんなインテリアにも合うため人気の高い照明器具です。また、一般的なダウンライトは照明カバーがないため、電球の交換も簡単です。しかし、ダウンライトを寝室の天井で使用すると、ベッドで横になったときに天井ダウンライトの電球を直視することになり、大変まぶしくなります。

ダウンライトを寝室に設置する場合は、照明カバー付きのものを選ぶか、シーリングライトを設置するようにしましょう。

・リビングに設置した物干し金物

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共働き家庭が増え、いつ天気が変わってもよいように洗濯物をベランダや庭ではなく、室内で干すようになりました。室内干しで人気の場所がリビングです。しかし、物干し金物をリビングに付けてしまうと、リビングが狭くなり、また天井から下がる洗濯物のため、たいへん動きにくくなってしまいます。

また、日当たりのよいリビングだと洗濯物も乾きやすいのですが、もともとモノが多いリビングに、洗濯物まで干してしまうと、モノがあふれてさらに片づかない印象のリビングに。その他にも、洗濯物から出る水分が他の部屋にも広がり、北側の部屋や押し入れの中などで結露して、カビを発生させる原因になることもあります。

室内に物干し金物を設置する際は、洗面室や浴室など24時間換気の近くに設置しましょう。換気により湿気をとるため乾燥しやすく、洗濯物が乾きやすくなります。

暮らしを快適にしてくれる住宅設備は、忙しい私たちの生活にとって、無くてはならないものです。新築・リフォームをお考えの方は、一度、設置する住宅設備について検討してみてはいかがでしょうか。

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しかま のりこ「COLLINO一級建築士事務所」主宰、一級建築士
300軒以上のリビング・寝室・子ども部屋の模様替えを行い、模様替えのスペシャリストとしてTVや雑誌でも活躍。近著に『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』(彩図社)がある。
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(「COLLINO一級建築士事務所」主宰、一級建築士 しかま のりこ)