ロングライフなHIDやLEDが予定より早く切れるワケ

 夜だけでなく、トンネルや地下駐車場など、暗い場所でクルマを運転するときに欠かせないのが「ヘッドライト」です。
 
 ヘッドライトは明るいほど良く見えるということもあり、以前の主流だったハロゲンから、現在は光量がアップし耐久性も高まったHIDやLEDが主流になっています。

ヘッドライトが暗くなったらバーナー・バルブの換え時

 しかし、「明るく」「長持ち」というのが意外にもクセモノで、長期間バーナーやバルブを交換する必要がないため、実際は徐々に光度が落ちていることに気づかず、車検時に光度不足だと指摘されることもあるようです。

【画像】HIDバーナー交換したらどうなった? ビフォーアフターを写真で見る!(11枚)

 HIDのバーナーやLEDのバルブの寿命はどれくらいなのでしょうか。神奈川県の整備工場を経営するH整備士に詳しく聞いてみました。

「実際に計測したわけではないのですが、一般的にハロゲンバルブの寿命は約500時間と言われていました。それに対してHIDは2000時間、LEDに関しては1万時間から3万時間とも言われていますが、実際はそこまでは持ちません」

 H整備士は、HIDのバーナーは3年、LEDのバルブは5年を目安に交換を推奨しているそうです。これは、製品の精度も関係するそうですが、それ以外にも日本の気候や取り付け方法にも大きく影響されるのだそうです。

 バーナーやバルブの寿命はあくまで理論上であり、安定した好条件で稼働している場合を前提としている一方で、実際の使用状況は80度前後まで温度が上昇するエンジンルーム内に配置され、平均速度が遅く、ライトのオン/オフがひんぱんに繰り返される日本の道路事情では電極の消耗が早まる傾向があるといいます。

「過酷な状況で正しく稼働するために各バルブメーカーは設計しているわけですが、安価で出回っているバーナーやバルブは、放熱処理がうまく設計されていないことが多いようです。

 過酷な使用環境の影響をモロに受け、バーナーやバルブ自体から発せられる熱が加わり、劣化が進みやすくなっています」(H整備士)

 もうひとつ、劣化を早めると言われるのが、ハロゲン用のヘッドライトにLEDバルブなどを装着したケースで起こりやすい「抵抗不足」です。もともと省電力のLEDにとってハロゲン時の電流は過多となり、そのため「抵抗」と呼ばれる電流値を下げる調節パーツを組み込む必要があります。

 LEDバルブの本体に抵抗を内蔵しているものも多いのですが、この数値がギリギリだったりすると過剰電流が流れてしまい、バルブを傷めてしまうのです。

「抵抗値は整備士でもなかなか調整できるものではありません。かなり高価になってしまいますが、きちんと品質が保証されているものを選ぶと良いでしょう」(H整備士)

 また、HIDバーナーやLEDバルブは、ハロゲンと同様にバルブ部分を直接触れるのは御法度。

 しっかりパッケージングされているとはいえ、バーナーやバルブは非常にデリケートなものなので、触って体内の静電気がバルブに伝わると壊れてしまうこともあります。自分で交換するときは慎重に取り扱いましょう。

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 ハロゲンやLEDはバルブが寿命を迎えると突然切れる傾向がありますが、HIDのバーナーに関しては不点灯になるだけでなく、末期症状として赤くなったり変色することがあります。

 夜間走行時に白線やガードレールが赤く見えると感じたら、バーナーの寿命と思って間違いないでしょう。

高品質で高額なバーナー・バルブのほうが良いとは一概に言えない訳

 HIDバーナーやLEDバルブは頻繁に交換する必要がないくらいロングライフなのがメリットですが、毎日使用していると光度が落ちてきていることに気づきにくいものです。

 そして車検のときに、ヘッドライトの光度不足が発覚し、バーナーやバルブ交換後に検査やり直しなどということにならないように注意したいところです。

1個3000円程度で購入できる格安の海外製HIDバーナー

 また、良く聞くのが、「安価な海外製は性能が安定しない」とか「高価だけど、品質も性能も保証されている国産メーカーを推奨」ということです。でも本音を言えば、インターネットで気軽に買える数千円の海外製と高品質だけど1万円以上する国産のどちらを選べば良いのか、悩ましいところです。やはり高品質なほうが良いのでしょうか。

「そんなことはないと思います。高品質な国産のバーナー・バルブのほうが安定した性能を発揮してくれるのは間違いないところですが、3年程度で寿命を迎えてしまっても海外製が一概にダメとは言えないです」

「ヘッドライトのバルブは切れたら簡単に交換できます。海外製のバルブを3回交換しても高価な国産のひとつより安価で済みますし、定期的に新品を装着したほうが光度の低下も気にしないで済むからです。

 唯一の懸念点は、欠陥品などが混入して想像以上にすぐに切れてしまう恐れがあること。でも私の経験上、多くのお客さまが海外製のバーナー・バルブをお使いになっていますが、国産と遜色なく使えているようです」(H整備士)

 これもクルマにありがちな「消耗品は高価なものを長く使うより、安価でも新品を定期的に交換」というパターンに当てはまります。やはりバーナーやバルブは完全な消耗品という訳です。

「お金をかけなければいけないパーツと、安価でも良いパーツの見極めさえ間違わなければ大丈夫だと思います。

 タイヤやブレーキパッドなど走行に直接関係するようなパーツは高品質のほうが安全ですし、長持ちします。

 一方でオイルや灯火類などは、激安な粗悪品を除き、手軽で交換しやすい安価なものでも十分。むしろ定期的にメンテナンスを心がけて、良好な状態をキープするほうがクルマにとっては大事です」(H整備士)

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 HIDのバーナーにしてもLEDのバルブにしても、安価なものでも問題ないのは嬉しい限り。実際に、筆者(金田ケイスケ)も自分のクルマ(HID)に純正より明るい中国製バーナーを付けていますが、切れたら交換するという感覚で使用しているので問題ありません。

 むしろ切れたら「次は違うカラーや光度にしてみようかな」という楽しみ方もできると思っています。

 ただしロングライフとはいえ、やはり消耗パーツ。途中で切れるかもしれないという心配するより、車検時に思い切って交換するほうが精神的にもリフレッシュできて良いのではないでしょうか。