岸田文雄首相が地元・広島の「必勝しゃもじ」をウクライナのゼレンスキー大統領に贈呈したことについて野党から批判が出る中、セルギー・コルスンスキー駐日大使が2023年25日、しゃもじが贈られたことを歓迎する投稿をツイートした。

3月27日午前の参院本会議でも、しゃもじの話題が登場。ただ、その内容は贈呈の意図を問うもので、岸田氏を特段非難する内容は盛り込まれなかった。ウクライナ側がしゃもじの是非について反応したことで、国会論戦もある程度収束したと言えそうだ。

「ちょっとお気楽すぎるんじゃないですかね?私なら怒ります」

しゃもじをめぐっては、立憲民主党の石垣のりこ参院議員が3月24日の参院予算委で、

「日本がやるべきは平和をいかに和平を行うかであって、必勝というのは不適切ではないか」

などと非難。泉健太代表もこの日の記者会見で「いつでも地元アピールをすればいいというものではない。緊張感のなさを露呈した」と批判した。日本維新の会の馬場伸幸代表も、記者会見で「一言で言って、ノーセンス」。その理由を次のように述べた。

「向こう(ウクライナ側)が生きるか死ぬかの戦いをやっている、そのサポートをどうするのかということを向こうは求めている。そういう場に『地元の名産です』ということで、しゃもじを持って行くということは、ちょっとお気楽すぎるんじゃないですかね?私なら怒ります」

ほぼ同時期に、ウクライナ側も反応を見せた。3月24日には在日ウクライナ大使館のアカウントが、「岸田首相、ゼレンスキー大統領に『必勝しゃもじ』と『折り鶴ランプ』を贈呈」の見出しがついた産経新聞の記事を引用して「必勝!」とツイートした。

翌25日にはコルスンスキー氏が、巨大な「必勝しゃもじ」を背景に話す岸田氏の写真つきで

「これからは、日本からの贈り物として『必勝しゃもじ』がとても喜ばれます。私はまだ持っていませんが」

とツイート。

「そんな役に立たないものよりも、74式戦車など実際に役に立つものを送るべきだったと思いますよ」

という批判的な返信には

「あるギフトが他のギフトを排除することはありません。」

と反論した。必勝しゃもじを肯定的に受け止める声も拡散(リツイート)している。

「ロシアという敵を召し取る、という強いメッセージを込めているのか」

ウクライナの国営通信社「ウクルインフォルム」編集者の平野高志氏は、「必勝しゃもじ」の由来を解説する記事をウクライナ語で同メディアに投稿し、「ウクライナに対する彼のメッセージは非常に明確だ」と指摘した。この記事を複数のウクライナメディアが引用し、

「岸田氏はゼレンスキー氏に象徴的な贈り物を贈った」(テレビ局・チャンネル24)

などと伝えた。

週明け3月27日には、しゃもじをめぐる批判は沈静化した様子だ。この日の参院本会議では、日本維新の会の音喜多駿参院議員が、ウクライナ訪問時の情報管理のあり方に続く話題として支援のあり方に言及。そのひとつが贈答品で、

「このしゃもじには飯を取る、すなわち敵を召し取るという意味が込められており、日露戦争にも由来するものであると言われている。ウクライナに対して、ロシアという敵を召し取る、という強いメッセージを込めているのか。総理の贈答品に込めた率直な思いをうかがう」

などと質問した。岸田氏は、必勝しゃもじと「平和を祈念する、祈願するという意味合いを込めて、宮島御砂焼(おすなやき)による折り紙折り鶴をモチーフとしたランプ」を贈ったとして、その意図を

「ロシアによるウクライナ侵略に果敢に立ち向かっているゼレンスキー(大統領)およびウクライナ国民への激励と、それに加えて、平和を祈念する思いを伝達するためのもの」

と説明した。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)