手軽に老化予防できる食べ物はなんと「カニカマ」だった! 1日1品食べてみよう!

高齢者になって介護や寝たりきりのリスクを下げるために、生活習慣には気をつけたいもの。特に毎日の食事で少しでも老化予防できるものを食べたい…。どんなものをどれくらい摂取するといいのか、ウチカラクリニック院長 森勇磨医師に解説いただいた。

老化予防にはたんぱく質の摂取と筋トレが最強

私たちの体は成熟期を超えるとその先は生理的機能が衰えて、いわゆる老化していきますが、成熟速度が人によって違うように、老化の進行度にも個人差があります。

そして、老化の予防を意識するかしないかで大きな差が生まれます。

例えば筋肉量は、20代をピークに年々減少していきます。

筋肉量が減ると筋力が衰えて、立つ、歩くなどの機能が低下し、さらに進行すると介護が必要になったり寝たきりになったりといったリスクは高くなります。

また、筋肉量が減り脂肪の量が増えると血糖値が下がりにくくなり、肥満や糖尿病にもなりやすく、さらに入院や死亡のリスクが高くなることも。

歳をとれば筋肉量が減るのが仕方ないと諦めてしまいがちですが、そんなことはありません。

普段の食生活に気をつけて筋肉量を維持することで、元気に老後を過ごす可能性をぐっと上げることができる方法があります。

老化予防のために中高年が必ず意識しないといけない成分は、ずばりたんぱく質です。

筋肉の約80%は、たんぱく質でできています。当然、たんぱく質の摂取量が減ると筋肉量は減ります。

このように年齢を重ねていくうちに筋肉量が減ることはサルコペニアと呼ばれていて、最近注目されています。

サルコぺニアになってしまうと、死亡リスクや介護リスクが上昇してしまうというデータがあるからです。

日本の高齢者2000人を対象とした研究でも男性の11%、女性の17%がサルコペニアに該当したとされており、誰にとっても起こりうることなのです。

老化を避ける=サルコペニアを避けるということに繋がるので、中高年はたんぱく質の摂取に気をつけるべきなのです。

だからといって、肉や卵などのたんぱく質をたくさん食べるだけでいいというわけではありません。

たんぱく質を摂取したら、できるだけ筋トレをすることが重要です。

中高年には筋肉量を増やそう!という意気込みでやっていただきたいですが、毎日続けることのほうが大切なので、おうちでできる筋トレをしましょう。

スクワットや足を前後に開いて股関節やひざ関節の曲げ伸ばしを行うランジなど、下半身にあるさまざまな筋肉に刺激を与えることができるのでおすすめです。

結局は適切な食事と運動が最強ですので、ぜひ続けるようにしましょう。

手軽にたんぱく質を摂取できる練り製品

では、1日どれくらいたんぱく質を摂取すればいいのでしょうか?

高齢者の場合は体重1kgあたり1gのたんぱく質を摂取する必要があります。

例えば、体重45kgの女性なら1日45g、65kgの男性なら1日65gのたんぱく質が必要になります。

ただし腎不全の人は、たんぱく質の摂取に注意が必要なので、主治医と相談しましょう。

ここで運動と同じく問題なのが続けやすさです。どんな素晴らしい健康法でも続けないと意味がありません。

毎日の食事において、どんな食材や食事のメニューにどれくらいたんぱく質が含まれているのかチェックするのは難しいことですね。

初めは気をつけていても、だんだん面倒になって、たんぱく質が大事であることを忘れてしまうことも。

そこで、たんぱく質をしっかり効率的に摂取しつつ、食事に取り入れやすい食べ物があります。

それが魚肉の練り製品です。

たんぱく質を手軽に摂取できる代表的な食べ物と言えば、卵だと思いますが、例えば魚肉の練り物のカニカマ100gは、卵100gと同じ12gたんぱく質を含み(※)、低カロリー、低脂質のため、カロリーが気になる人にとってはうってつけの食べ物なのです。

(カニカマ1本は約15gなのでたんぱく質は約1.8g)

さらに使い勝手の良さもおすすめポイント!

朝ごはんには板かまぼこ、お昼のチャーハンにはカニカマをプラスするだけで、1日に必要なたんぱく質を摂取することができます。

卵焼きにカニカマ2本分をほぐしていれてカニ玉のメニューにすれば、卵とカニカマのダブルでたんぱく質を摂取することができます。

しかも、練り製品の場合、ちくわ、カニカマ、はんぺんなど種類が豊富なので、食卓にたびたび登場してもレシピやバリエーションが豊かで飽きにくいでしょう。

練り製品で手軽にたんぱく質の摂取量を増やすことで、サルコペニア予防、肥満や糖尿病の予防にも繋がるのです。

(※)日本食品標準成分表 2020年版

たんぱく質は3食で均等に食べる方が効果的

ただ、練り製品は消化に悪いのではないかという心配があるかもしれません。

たんぱく質を含んだペプシンという酵素の液体の中に食べ物を入れて分解されやすさを比較した実験があります。

卵や豚肉、牛肉より、練り物類のほうが消化速度が速かったかいう結果がでました。

人間の体内での実験ではないのですが、一概に練り製品が消化に悪いということではないようです。

また、練り製品は主に魚を原料に作られています。

カニカマの原料はタラなどの白身魚です。

魚のデータになりますが、67万人をもとにした分析で、魚の摂取量が1日60g増加すると

死亡リスクは12%低下したというデータがあります。

また魚の脂に含まれるオメガ3脂肪酸(DHA・EPA)は悪玉コレステロールというLDLを下げる可能性があると言われているので、魚を原料とした練り製品はこれらの効果も期待できます。

また特に高齢の女性が注意しないといけない骨粗しょう症を予防する、ビタミンDやカルシウムも練り製品には含まれています。

カルシウムは中高年の推奨摂取量が650~700㎎に比べて、平均摂取量が505mgと下回っています。

理想的なカルシウム摂取ができていない人が多いので、そういった意味でも練り製品は中高年にとって使い勝手のいい食べ物と言えるでしょう。

ただし、練り製品は塩分が多い場合があるのが玉にキズなので、減塩の練り製品をおすすめします。

また、たんぱく質の効率的な食べ方は、3食で均等に食べることです。

朝や昼は全く摂らず、夜に焼肉を食べて摂取するより、朝、昼、晩と分けて練り製品や卵などを摂取したほうが老化予防に繋がります。

そしてたんぱく質を摂取した後は筋トレを忘れずにやってくださいね。

取材・文/百田なつき

『怖いけど面白い予防医学 人生100年、「死ぬまで健康」を目指すには?』(世界文化社)

著者 森 勇磨

2023年3月19日

1,870円(税込)

262ページ

ISBN:

‎4418234004

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