外部電源供給はPHEVやEVの“当たり前”の機能?

プラグインハイブリッド車(以下PHEV)や電気自動車(以下EV)は、電気をエネルギー源として走るだけでなく外部にも給電が可能です。そのような外部電源供給装備が備わった車が日本には数多く存在しています。

例えば、トヨタのプリウスやアクアなどのハイブリッド車や燃料電池車には、給電機能が搭載されている車種が増えています。

災害による停電時には電力源として活用することができ、非常時やアウトドアに役立つ給電機能ですが、どのようなものなのでしょうか?

2022年に発表された、新型トヨタ プリウス

トヨタ車で給電するシステムは「クルマ救電」と呼ばれ、一定の手順を踏むことで、車内に搭載されたアクセサリーコンセントが使用可能になり、ここにプラグを差し込むことで電源の供給をすることができます。

アクセサリーコンセントの他にも、AC外部給電システムが搭載されている車種もあります。AC外部給電システムは、クルマの外側にある充電リキッドにヴィークルパワーコネクターを接続して利用することができ、AC100Vで1500W以下の電気製品の使用が可能です。

このように、日本車のHVやPHVには外部電源供給装備が装備されていますが、欧州のPHVにはほとんど備わっていません。

輸入EVが続々と増えるも外部給電機能付きは少数派?

©drotik/stock.adobe.com

近年では欧州においてEVの普及が進んでいます。2021年のCOP26では多くの自動車生産国やメーカーが反対しましたが、開催国であるイギリスが2040年に世界の新車販売のゼロエミッション化を提案しました。欧州委員会(EU)でも2035年のゼロエミッションを目指すという発表をしています。

メルセデス・ベンツは2030年に世界で販売する新車すべてをEVにする目標を掲げていますし、各メーカーも徐々にEVの生産に力を入れています。

一方、日本ではHVの販売が主流で、国内販売全体に占めるEVの比率は1%程度です。今後は欧州が中心となってEV車の進化が進んでいく可能性が十分にあります。

こういった状況を考えると、日本車のHVやPHVには当たり前の機能である外部給電が使えない車種が増えるのは、少し不安な気もします。なぜ、欧州のEVには外部電源供給装備がないのでしょうか?

輸入EVに外部電源供給装備がない理由は?

輸入EVには外部電源供給装備がほとんどない理由は大きく2つあります。1つは歴史が浅いこと、もう1つは大災害が起きておらず、災害に備えて外部給電を用意しようという姿勢が低かったことです。

日本車のPHVやHVの外部給電用コンセントは20年もの歴史を持ちますが、欧州でPHVが本格的に登場してきたのはここ5年ぐらいのこと。

世界初の量産HVは1997年デビューのトヨタ プリウス、第2号は2001年に登場した最大1500Vの電源供給を可能にするAC100Vコンセントが装備されたエスティマHVですが、どちらも日本車です。

初代プリウスは1997年に登場

欧州と比較すると、日本は早くからPHVやHVの開発に積極的だったといえますし、それゆえ給電機能が早くから搭載され、進化をしてきたのです。

さらに、ヨーロッパでは最近、東日本大震災のような大地震は起きておらず、災害に備えて外部給電を用意しようという機運がなかなか出ていませんでした。震災時、多くの地域で長時間の停電が相次いだ中で「自家発電」可能な同車が重宝された日本と比べると、欧州は非常時やアウトドアに役立つ給電機能の魅力を実感できていなかったのでしょう。

輸入EVの台頭に負けず、日本の土地柄にあった国産EVの登場に期待

©キャプテンフック/stock.adobe.com

最近では輸入車ブランドがEVに特化した販売店をつくり始めています。まだなじみが薄いEVの普及のために専門スタッフを置くなど特別な対応をしています。そのため日本メーカーの販売車種が限られるなかでも外車EVで専門スタッフに相談しながら購入することができます。

ただし、EVの中古車購入時には、バッテリーの状態に注意しましょう。電気の力でモーターを駆動させて走行するEVやPHEVは、バッテリーの状態によって航続距離に大きく差が出てきてしまいます。バッテリーが劣化したからといって気軽に交換ができるほど安価なものではないため、購入時にはバッテリーの状態やスペックを確認しましょう。

外車EVは歴史が浅く外部電源供給装備がない車が多くありました。しかし、近年ではEUが2035年にガソリン車の販売を禁止したことにより輸入EVが急速に増えています。輸入EVの台頭に負けず、日本の土地柄にあった国産EVが今後登場していくことを期待しています。