エグゼクティブ層にも定番となったアルファード/ヴェルファイア

 高級ミニバンというカテゴリーを独走するトヨタ「アルファード/ヴェルファイア」。
 
 3代目となる現行モデルは、エグゼクティブ層のニーズを獲得したことが成功の要因と言われますが、実際にはどのような点が評価されているのでしょうか。

なぜトヨタ「アルファード」は社長需要が高いのか?

 高級ミニバンの代名詞的存在となっているトヨタ「アルファード」とその姉妹車の「ヴェルファイア」は、2015年の発売開始から7年以上が経過しているにもかかわらず、2022年の新車販売台数ランキングでは乗用車全体の10位にランクインするなど、好調を維持しています。

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 2002年、日産「エルグランド」に対抗するかたちで登場したアルファードは、上質な内外装と広大な室内空間を武器に、またたく間にトヨタの主力モデルとなりました。

 2008年には初のフルモデルチェンジが行なわれ、さらに高級感が高められたほか、派生モデルとしてヴェルファイアが追加されました。

 しかし、アルファード/ヴェルファイアが高級ミニバンとして絶対的な地位を獲得したのは、2015年に登場した3代目からです。

 3代目では、安全装備や快適装備、走行時の安定性や静粛性が大きく向上したこと、そして押し出し感の強い大型のフロントグリルが備わったことで、それまでメインだったファミリー層に加えて、エグゼクティブ層のユーザーを獲得することに成功しました。

 それまで、企業の役員や政府の要人といったエグゼクティブ層が選ぶクルマと言えば、高級セダンが定番となっていました。

 多人数乗車が必要なシーンでは、ミニバンが利用されることもありましたが、あくまで限定的な利用にとどまっていたのです。

 一方、近年ではエグゼクティブ層のメインの移動車両として、アルファード/ヴェルファイアが利用されることが増えてきています。

 実際、そうしたニーズをうけて「エグゼクティブラウンジ」という最上級グレードも登場しており、エグゼクティブ層以外のユーザーも含めて、最も人気の高いグレードのひとつとなっています。

 アルファード/ヴェルファイアがエグゼクティブ層に受け入れられた背景には、いくつかの要因があると考えられます。

 ひとつは、効率が重視されるようになったことで、移動時間をどのように利用するかという点が重要になったことです。

 例えば、ほかのメンバーと打ち合わせをしたり、パソコンを広げて作業したり、あるいは食事や睡眠をしたりするなど、いずれの際にも、アルファード/ヴェルファイアの広大な室内空間が活躍します。

 アルファードを所有しているとある企業の社長A氏は「現行アルファードを2回ほど乗り換えています。やはり、後席のエグゼクティブラウンジシートは移動中で快適なのが良いですね。あとは、オットマンなどもあるので仮眠をとるのにもセダンより快適性が高いです」と語っています。

 また、ミニバンはセダンに比べて乗り降りの際に足腰に負担が少ないという点は、高齢のユーザーも少なくないエグゼクティブ層にとってはうれしいポイントのひとつとなっています。

 加えて、近年ではセダンが不況となっていることから、従来のようなエグゼクティブ層向けのモデルが少なくなっているということも関係していると考えられます。

 前出とは別の会社の執行役員B氏は「かつては高級セダンと言われるモデルを役員車などで使っていました。いまでも数台はありますが、移動時の快適性や居住性はこちらの方が上なので他の役員からも好評です。また人を多く乗せるまたは荷物を乗せるなどといったことがある際には社員に社用車として使って貰うなど、多用途なのも良い面かもしれません」と話しています。

実質的にはLSの半額以下?アルファード最大の魅力はコストメリット

 アルファード/ヴェルファイアには、前述したようなさまざまなメリットがあることはもちろんですが、ここまでエグゼクティブ層に受け入れられた最大の要因は、やはりコストメリットが高いことに尽きます。

 ここでいうコストメリットには2つの意味があります。

 ひとつは車両価格です。

 アルファード/ヴェルファイアは、最上級グレードの「エグゼクティブラウンジS」でも775万2000円となっており、オプションなどを最大限追加したとしても、乗り出し価格が1000万円を超えることはまずありません。

 一方、エグゼクティブ層が多く利用する高級セダンであるレクサス「LS」やメルセデス・ベンツ「Sクラス」はベースグレードでも1000万円を超え、グレードや仕様によっては1500万円を優に超えるものもあります。

 もちろん、高級セダンには高級セダンの良さがありますが、簡単に手の届く価格とは言えません。

「ファーストクラス」のような居住性&快適性が備わっているアルファード

 もうひとつは、リセールバリューの高さです。

 アルファード/ヴェルファイアは驚異的なリセールバリューの高さを誇っており、特に新車の長納期化が著しい昨今では、中古車価格が新車価格を上回るという逆転現象も見られるようになっています。

 法人車両は会計上のメリットがあることなどから、リースを利用することが一般的ですが、月々のリース料はリセールバリューの高さと大きく関係しています。

 簡単に言えば、リセールバリューの高いモデルほど、月々のリース料を低く抑えることができます。

 たとえば、大手リース会社で「契約期間5年」「月間予定走行距離1000km」という条件で見積もりをとると、LSのリース料は最低でも月額20万円程度、最上級グレードであれば月額30万円近くにおよびます。

 一方、同じ条件でアルファードを見ると、最上級グレードの「エグゼクティブラウンジ」でもリース料は8万円程度です。

 LSのベースグレードとアルファードの「エグゼクティブラウンジ」の価格差は300万円程度ですが、5年間リースをした場合の支払額は、LSが約1200万円であるのに対し、アルファードは約480万円程度とおよそ700万円もの差額が生じます。

 この差は、アルファードとLSのリセールバリューの高さによるものです。

 先行き不透明な世の中では、大企業であってもできる限りコストは削減したいものです。そのようななかで、コストメリットに優れるアルファード/ヴェルファイアは、実を取るエグゼクティブ層のハートをしっかりとつかんだと言えます。

※ ※ ※

 2023年3月現在、アルファード/ヴェルファイアは新規受注を停止しています。これはまもなくフルモデルチェンジが行なわれることが理由とされており、エグゼクティブ層も含めた多くのユーザーが新型モデルの登場に注目しています。

 新型アルファード/ヴェルファイアに関する公式な情報はまだほとんどないものの、エグゼクティブ層向けの上級グレードが引き続き設定されることは確実視されています。

 現行モデルから乗り換えるユーザーも相当数いると予想されており、発売後の争奪戦は必至と見られています。