3月24日に行なわれたウルグアイ戦は、途中出場の西村拓真(横浜)の同点弾で1−1の引き分け。ドロー発進となった新生・日本代表。28日の次戦・コロンビア戦は勝って3月シリーズを終えることが肝要だ。

 コロンビアは24日に韓国とテストマッチを消化。ハメス・ロドリゲス(オリンピアコス)やラファエル・サントス・ボレ(フランクフルト)らが先発し、ハメスがゴールするなど、2−2で引き分けている。

 ベンチスタートだった37歳のFWラダメル・ファルカオ(ラージョ・バジェカーノ)らも含め、攻撃のタレントは豪華。日本の守備陣としてはウルグアイ戦以上に警戒していく必要があるだろう。

 目下、日本のゴールマウスを守るGKは三つ巴の争いが繰り広げられている。2010年南アフリカ大会から2022年カタール大会まで、ワールドカップで最後尾を統率した川島永嗣(ストラスブール)、2014年ブラジルとカタールの2大会に参戦した権田修一(清水)の両ベテランがチームを離れている今、31歳のシュミット・ダニエル(シント=トロイデン)を中心に新たな軸を作らなければならないのは確かだ。

 ウルグアイ戦で先発したシュミットは、ビルドアップや攻撃の起点になる部分で持ち味を大いに発揮した。今回の代表がSBを中に入れる組み立てにトライしていることもあり、GKからの的確かつ効果的な配球は重要なポイント。

 足もとの技術に秀でるシュミットは、そのあたりをしっかりと心得ており、DF陣やSB、ボランチ、遠目のサイドハーフを見ながら、臨機応変に長短のパスを使い分けていた。
 
 加えて言うと、相手のCKをキャッチして三笘薫(ブライトン)に投げた19分のシーンは一瞬でビッグチャンスになった。その形はこれまでの代表にはなかったもの。

「ベルギーのチームの人たちとは足もとの質の差がすごくあるので、やっていて楽しいし、お互い良い関係があってこそのスタイルだと思う。信頼関係を崩さない安心感あるプレーをしなければいけない。

 自分が受ける高さ、ビルドアップの位置もそうですけど、リスクマネジメントは大事になる。バランスを見ていく必要があると思います」と、シュミットは細かい部分まで配慮しながら攻めに関与していることを明かす。

 自身の課題と位置付けているシュートストップに関しても、70分のFKを右手1本でセーブした場面に象徴される通り、目に見える前進を示している。今季のシント=トロイデンでも、ここまで総失点34という上から3番目タイの実績を残しているが、シュミットの貢献度は非常に高い。

 197センチのサイズ、欧州4シーズンの経験値を含めて、森保一監督は当面、シュミットを積極起用して代表経験を積ませていくのではないだろうか。本人も「カタールに行って試合に出られず悔しかった。これで次の2026年(北中米)ワールドカップに出られなかったら意味がない」と語気を強めていただけに、ここからが本当の勝負になるだろう。

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 一方、東京五輪世代の谷晃生(G大阪)と大迫敬介(広島)の2人も負けてはいない。東京五輪の全6試合に出場し、カタールW杯直前の昨年9月の欧州遠征にも帯同した谷は、今季から古巣のガンバ大阪に戻り、東口順昭との競争の真っ最中。開幕からのリーグ3戦は正守護神としてプレーしたが、直近2戦はベンチに甘んじている。

 それでも、年代別代表の国際経験値や大舞台の強心臓ぶりは光るものがある。今後の伸びしろが大きい選手だけに、コロンビア戦の先発抜擢もあり得ると見ていい。

「ウルグアイ戦のダン君のプレーを見て、ビルドアップの部分に上手く関わっていたと思うし、自分もどうしていくべきかは普段から話すようにしています。

 ワールドカップのように注目度が高くて、1つのミスが命取りになるようなレベルの高い場所で積極的にプレーできるかどうかは、気持ちの部分が大きく左右する。そこを詰めていく必要があると思います」と、谷はメンタル面の重要性を改めて強調した。それを直近の代表戦で発揮できるか否かが問われそうだ。
 
 もう1人の大迫も、今季のJリーグではコンスタントにピッチに立っており、安定感という部分では谷を上回るかもしれない。

「日本がベスト8の壁を超えていくためには、GKのレベルアップが必要。それを世界のGK、ベスト8以上の国々のGKを見て感じたので、そうなることが自分の1つの大きな仕事。短い合宿ですけど、チャンスを自分の手で掴み取りたい」と今回は野心を前面に押し出している。

 もともと謙虚なタイプの彼がここまで闘争心をむき出しにするのも、カタール落選という挫折を味わったから。今は這い上がろうと必死なのだろう。

「シュートストップは自分の武器ですし、1対1を含めて自分のチームでは感覚がすごく良い。それが海外のチームに対してどれだけ通用するのか。どんどんトライしていきたい」と話す大迫が出番を与えられたら、言葉通りの勇敢さを示していくべきである。

 コロンビア戦は谷か大迫が出るのか、それともシュミットのスタメン継続か。判断は分かれるところだが、南米の強豪相手に失点をゼロに抑えることができれば、日本は勝利に近づく。誰がピッチに立ったとしても、そのタスクを果たすことが最重要課題だ。

取材・文●元川悦子(フリーライター)