丸山  はい、大きく異なりますね。

風間  そういう意味では輪をどんどん広げていきたい。本気の人はどんどん上達する。それを伝えたいと、ずっとマルらと話していたんだよね。

丸山  そうですね、そしてやはり最終的には“面白い”選手を生み出したい。私たちは夢・希望・感動をキーワードに、エンターテインメントを謳っているなかで、観る人たちが面白い、あっと驚くような『こんな選手が⁉』『こんなプレーが⁉』という部分を大切にしています。そうした選手を生み出すクラブでありたいですし、そのメソッドを我々は持っているだけに、広げていきたい。

 そして、そういう指導ができる人が増えれば、必然的に選手も増える。風間さんもよく言いますが、ひとりで教えられる人数には限りがあります。でも指導者が増えれば、何千何万の選手に関われます。だからこそ、同じ目を持った指導者を生み出し、可能性を広げたいんです。

 もしかしたら日本にはまだまだ才能のある子が眠っているかもしれません。彼らを開花させ進化させるキッカケになるんじゃないかとも考えています。その面で日本サッカーに対する問題提起になるかもしれません。ぜひとも成功させたいプロジェクトですね。

風間  あとはクラブとして地域還元もしていきたい。今は学校でサッカー部を教えられる人がいないという問題もある。そうしたなかで、同じメソッドを持った人が広がれば地域の活性化にもつながる。セレッソからだけでなく、地域の学校などからも選手を輩出できれば、それこそ有能な人材が生まれる可能性は高まる。でもそう考えると、やっぱり指導者の数がまだ足りないんですよ。

※スペトレとは?→スペシャルトレーニングの通称で、こちらも画期的な取り組み。小学生から高校生など様々な年代の選手が同じピッチでトレーニングすることで多くの気付きが生まれる。「同学年同士のプレーとはまったく違う状況で得られる刺激はすごく大きい」と風間氏。選手だけでなく、指導者のつながりができるというメリットも。
 
――この2年、セレッソアカデミーの組織作りもかなり進んだと伺っています。

風間  すごくつながりが生まれている。今は誰もがカテゴリーの垣根を越え、僕がいなくてもまったく問題がない(笑)。目が揃うと、そういうことができるということだよね。

丸山  この2年での明らかな変化ですよね。僕もありがたいことにスタートから関わらせてもらい、変化を間近で見てきました。“枠を外してつながる”というのは、言葉にすれば簡単ですが、実際にやろうとすると、様々な障壁があります。

 でも今はそれがようやく整ったなと。年齢、カテゴリー関係なくアイデアを実践できる仕組みができあがっています。語弊があるかもしれませんが、一番の優先順位は、各カテゴリーの大会で優勝することではなく、各選手がどうなっていくかということ。我々が見たことのないような選手に育てていくために、個別に何が必要かを、みんながつながって一緒に考える。そういう集団になってきましたね。

――今回の指導者に向けたプロジェクトも、一番の目的はやはり“驚くような選手”を育てることだと。

風間  そうだね、シンプルに言えばチャンピオンズリーグのトップ4のクラブで中心になるようなタレントを育てたい。そういう選手が出てきたらすごく楽しいよね。そこは何を目標にするかで、指導者への要求もまったく変わると思う。

 例えばひとつの大会を勝つためにチャレンジするのも良いかもしれないけど、その先につながりにくい。やっぱり最初にどこを目標にするのかはすごく大事で、そうすれば様々なことが明確になり、子どもたちの目線も高くなる。その意味で指導者がどんな先を見据えるかが大切で、より言えば『指導者が邪魔をしない』こと。そこは意識したいですね。