「ワンオペ育児」という言葉も定着した昨今。育児や家事を1人で担う状況を指すが、そんな孤独な子育てで、社会との関りが薄くなるママも多い。育児に付きっ切りになる新生児期ならなおさらで、家族との会話が唯一の世の中で起きていることが知れる機会、という人も少なくないのでは。柿ノ種まきこさんがTwitterで投稿した「母AI(エーアイ)」は、そんなママの共感を誘う内容だ。

【漫画】「うちにもほしい!」、“母AI”がくれるニッチすぎる情報とは

■世間から取り残された気持ちを救った「母AI」の存在

 現在、幼稚園に通う娘さん(なごみちゃん)を育てる柿ノ種さん。娘さんを出産したばかりの頃は、実母と義母が交代で家のことをしに手伝いに来てくれていたという。その頃の柿ノ種さんは、3時間おきの授乳で日中はボーッとしており、テレビを見る元気もなく、世の中から離れた生活を送っていたと振り返る。

 そんな時に役に立ったのが「母AI」。“浦島太郎状態”の柿ノ種さんのために、日々の情報番組で得た最新ニュースを伝えてくれるありがたい存在だったとか。それに加え、「あんたが昔好きだったバンドの人、また復活するらしいよ」など、ニッチな情報も教えてくれること。娘が今まで好きだったもの、興味があることを熟した上で適したニュースを届けてくれる。世間から取り残されたような気持だった日々も「母AI」のおかげで、ほんの少し社会に引き戻してくれて安心できた。

 なごみちゃんが大きくなってからも、柿ノ種さんが昔から好きなキャラクターの期間限定カフェについて知ると調べてくれ、教えてくれたという。

「学生の頃に好きだったけれど、よくそんなこと覚えているなぁと驚きました。最近はなごみが好きなキャラクターも把握していて、靴下やヘアゴムなど買ってきてくれます」

 今は主に在宅で仕事をしているという柿ノ種さん。乳児期と同様に社会とのつながりは薄い毎日を過ごしているそうだが、SNSが彼女と社会をつなぐ役目をしてくれている。

「毎日の何気ないことを漫画にして投稿すると、『わかる〜』『私もそうだった』と共感をいただくことがあり、そういったコメントで救われることが多いです」

■恋愛、結婚、出産、育児…全部漫画に描いてきた

 2020年にSNSで投稿していた漫画「アラサーが恋をした話」がきっかけで、柿ノ種さんは注目を集める。家業の手伝いと日雇い仕事をしながら暮らすアラサー(連載当時)の彼女が、一念発起で通い始めたパソコン教室で出会った彼に恋をする普通の恋愛ストーリー。その彼が現在の旦那さんだ。

 結婚、出産、育児に奮闘する彼女の日々をまとめた初の著書『アラフォーまきこのごゆるり家』(KADOKAWA)が3月25日に発売される。「本を出すのが幼いころからの夢だった」と話す彼女。同書には「アラサーが恋をした話」のリメイク版も収録。その頃からのファンから「またこの話を読み直したかった」という声も届いており、「Instagramで漫画を描き始めた頃からずっとフォローしてくださっている方からのコメントには思わずグッときてしまうものがありました」と話す。

 ライフステージが変わっても、ずっと描き続けてきた漫画。日々の些細な出来事や家族とのやりとりを漫画に残すことで気持ちを整理していたという。

「実際には少しキツかった時期も『あーこんな風だったなぁ』と客観的に見ることができます。漫画を描き続けていくうちに、フォロワーさんとの繋がりが深くなっていったことがとても嬉しかったです」

 幼い頃から本を出すことが夢だった柿ノ種さん。その夢も叶ったわけだが、次なる目標は?

「今後の目標を掲げるとすれば、大きな目標はやはり続編の本の出版です。本という形になったものを手にすることができた喜びは大きく、またその経験ができたらなぁと新たな目標になりました」

 そして子育て中の閉鎖的な環境を経験し、母AIやSNSに社会とつないでもらったことで、こんな目標も密かに持っているという。

「どこかで読者さんやフォロワーさんと会える機会が作れたらな、と考えております。個展やイベントなど、いつか機会を作って実現できれば…と思います」