「点数が低いので、飲酒運転を見逃すこともありました」元警察YouTuberが明かす犯罪検挙の衝撃の事実

18年間勤務した警察の裏側をSNSで暴露している元警察官YouTuber「よっしー部長」。ポイント稼ぎのための犯罪検挙や強引な職務質問など、警察組織が抱えている矛盾について話す。

職務質問は法律弱者が損をする仕組み?

――Twitterで言及されている「悪質な職務質問」というのは、具体的にはどういう行為ですか?

前提として、職務質問(以下、職質)は任意です。

警察官が職質を行える法的根拠は、警察官職務執行法第2条によって定められていて、簡単に言えば、明らかに異常な挙動をしている人や、「泥棒した帰りなんじゃないか?」と思えるような人に対してだけ職質をしていい、という内容です。

つまり本来は、普通に道を歩いている人に職質をするのは筋が通らない話で、警察官の言いがかりでしかありません。

でも、職質を拒否し続けたとしたら、警察官は「なんで拒否するんだ? 薬物を持っているんじゃないのか?」と勘繰って、さらに執拗に職質を続けるでしょう。任意性のボーダーラインとされている3時間を超えるケースも多々あります。

もちろん状況によりけりなので、具体的にどれが悪質な職質か、と言い切ることは難しいですが、そういう職質が実際にまかり通っているのが現状です。

――もし職質に応じたくない場合は、どういう対処法が最も効果的なのでしょうか?

職質されている様子を動画で撮影することです。加えて、「拒否していますよね?」と意思表示をしながら、「これ以上継続するなら、この映像をネットに流しますし、警察に苦情を入れますよ」と伝えるべきです。

強引な職質からの犯罪検挙、という目に遭う可能性は誰にでもあるので、ちゃんと情報収集して、自分の身は自分で守れるようにしなければいけない時代なのかなと。

――情報弱者や法律弱者が損をする仕組みになってしまっている、ということでしょうか。

その通りですね。

極端に言えば、「絶対に武器として持っているだろう」という金属バットを持ったヤンキーが、「野球用に持っているだけ。それ以外は答えません」と主張すれば捕まらず、「野球目的で金属バットを持っている」普通の人が、強引な職質で凶器だと認定され、本人がそれを認めてしまえば捕まってしまう、ということもあるのです。

結局、数字を狙う上では僕も気の弱い正直者をターゲットにしていましたし。

近年は車両検問がメイン

証拠として残る動画撮影は、後に裁判になった場合を考えても最も効果的な手段だと語る

――よっしー部長は、一日で何件くらい職質を行っていたのでしょうか?

多い時には一日で300~400件くらい。営業職と一緒で「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」です。一番多い時で、年間で44人検挙したんですが、3当直に1回検挙するペースでしたね。

近年は、車両検問からの職質で捕まえるのが自動車警ら隊(以下、警ら隊)の主流ですね。

――その検問は、よくある飲酒検問とはまた別ですか?

全くの別物で、犯罪検挙したいがための車両検問です。車を停めて「お酒飲んでないですよね?」と聞く警察官がいますが、あれはただの職質のきっかけ作りで、実際は車の中を見て、ナイフや木刀、薬物など、違法所持のものを探したいだけ。

極端なことを言うと、その車両検問で「明らかに飲酒している」というドライバーがいたとしても、危険なものが何も見つからなければ、見逃すこともありました。

――なぜ飲酒運転を見逃すのですか?

警ら隊のメインは刑事事件ですが、飲酒運転は道路交通法違反なので、検挙しても点数が低いんです。あとは、飲酒運転者を捕まえた後の処理がかなり面倒で、時間もかかります。

つまり点数を稼ぎたい人からすれば、「面倒だからこれは見逃して、他の犯罪を見つけよう」となるんです。先輩のやり方を見て学んで、僕も同じようにしていました。

くだらないことで捕まる人が
いなくなってほしい

――飲酒運転からの事故が実際に起きていることを考えると、酷い話ですね。どうすれば、本当に悪い人だけを検挙する警察組織になっていくと思いますか?

やっぱり実績制度というものがよくないと思います。検挙数で評価されてしまう実績制度だと、働いている警察官はどうしても「犯罪者が必要」という、本来あるまじき感覚になってしまうので。

実績制度をなくせば、警察官自身も「裁かれるべき犯罪の検挙をしたい」という考え方になっていくのではないかなと。職質や検挙は、治安維持の上で必要不可欠ではあるので、いい方向に変わっていってほしいです。

――警察官時代と今を比べると、精神状態の違いはありますか?

今の方がめちゃくちゃ気持ちが楽です。やっぱり警察官の時は、行動も倫理観も縛り付けられていましたから。警察官だったことに後悔はないですが、辞めてよかったなと思います。

今こうして、警察の真実を伝えられていることが嬉しいですし、多くの人にこの問題について知ってもらいたいです。なによりも、くだらないことで捕まる人がいなくなってほしいですね。

よっしー部長が頻繁に車両検問を行っていた江の島内のスポット。奥に見える周回路の出口付近で、ひたすら検問を続けていたという

取材・文/佐藤麻水
撮影/浅井裕也