安倍晋三元首相が銃撃された事件から、8カ月。殺人罪などで起訴された山上徹也被告(42)は、2月13日に武器等製造法違反や建造物損壊などの容疑で追送検され、捜査は事実上、終結した。

 事件現場になった奈良県・近鉄大和西大寺駅の北側は現在、どのようになっているのだろうか。

「事件前から進められていた再開発工事が、3月末の完成を目指して急ピッチでおこなわれています。献花台はなくなりましたが、いまでも手を合わせに来られる方は多いです。3月5日には、立憲民主党の野田佳彦元首相が来られました」(周辺住民)

 悲しみはまだまだ癒えないが、この現場をめぐり、仲川げん奈良市長と自民党奈良市議会が、議会でバトルを繰り広げている。

「6日におこなわれた3月定例会の代表質問で、自民党の森田一成市議が『歴史的遺物として保存する必要があるのではないか』と、モニュメント設置を提案。さらに、現場のアスファルト保存などを要求したのです。

 市長は2022年から『安全面などで、モニュメントの設置は難しい。慰霊のために花壇などを整備して、予定どおりに道路の拡幅を実施する』と、にべもなかったので、話がこじれてしまっていました」(市政ウォッチャー)

 本会議が終わったばかりの森田市議に話を聞いた。

「そもそも市長には、あれだけ世界を震撼させた事件なのに、何かを保存する気持ちがないんですよ。最初は『何も残さない』と言っていたほどです。

 私たちとしては、花壇の片隅にでも、事件のことを記した小さなプレートを置いてくれればいいんです。アスファルトを保存してほしいと言ったのも、数少ない事件の痕跡が、産業廃棄物として処理されてしまうことが忍びなかったからです。以前、せめて工事の前に供養をしてくれとお願いしましたが、それすらも明言を避けているんですから」

 憤懣やる方ない様子の森田市議。これに対して市長は、定例会で「粉砕工法のため、(アスファルトの)保存も技術的に難しい」と答弁。しかし「遺族から要望があれば、検討が必要」とも答えている。

「遺族というのは昭恵夫人のことでしょうけど、夫人が市長に『保存してください』と電話をすると思いますか? しないでしょう。このままでは、事件が風化してしまいます」(森田市議)

 あまりに大きな事件だっただけに、市でも意見が分かれているようだ。