目のかゆみ、くしゃみ、鼻水…今や国民病とも言われている花粉症。その多くがスギ花粉によるものだと言われている中、ある取り組みに期待が寄せられている。花粉症で悩む人たちの救いとなるのか。

【映像】花粉症患者の救いとなるか… 開発進む「無花粉スギ」

 「あの季節がやってきた…」「もう飛んでるよ…涙が止まらない」「“最強寒波”の次は“最強花粉”か…」と感嘆の声があがっている。

 いよいよ本格的にスギ花粉のシーズンに突入。2023年はここ10年で最大レベルの飛散量と予想され、花粉症の人にとっては例年以上につらい春になりそうだ。

 日本耳鼻咽喉科学会の調査によると、国民の約4割がスギ花粉症であると推定されていて、ほぼ20年で2倍以上となっている。

 さらに、花粉症による日本の経済損失は一日あたり2215億円を超えるとの試算(※パナソニック調べ)もあり、社会に大きな影響を与えている。

 そんな中、スギ花粉の飛散を減らすべく研究開発されているのが、花粉を全く出さない「無花粉スギ」。花粉症患者にとって、天敵のスギ花粉が無くなるということは可能なのか。

 「無花粉スギ」の研究に長年携わってきた、静岡県農林技術研究所の森林・林業研究センターの袴田哲司さんに話を聞いた。

「無花粉スギは花粉が出ないけど、出るスギとその他の性質は大きく変わらない。ほぼ同じ」(袴田哲司さん、以下同)

 見た目も性質も普通のスギとほとんど変わらない無花粉スギ。しかし、雄花の断面を見比べてみると花粉は確認できない。

 もともとは自然界で突然変異によって生まれた無花粉スギ。それを品種改良によって増やして植え替えることでスギ花粉の飛散を抑え、花粉症を減らすそうだ。

 袴田さんは2006年に国の研究機関や他県の専門家などが集う無花粉スギのプロジェクトに参加。以来、研究開発を重ねてきた。

「樹木は農作物と違って成長するまで時間がかかるため、色々なトラブルが発生する。長い期間を要する間に強い台風が来たりすると、樹が折れて調査ができなくなることもあり得る」

 樹木の研究は成果が出るまで時間がかかるため、将来のさらにその先を見据える必要があるという。花粉症対策同様、林業の発展も重要だとしている。

「花粉が出ないだけではなく、ちゃんと順調に育つ、(木)材もいいものがとれるという産業としての一面も考えなくてはいけない。その両立を目指している」

 スギが成長して材木として使えるようになるには、数十年かかると言われている。優れた木材としても活用できるよう品種改良されてきた「無花粉スギ」。植え替えはどこまで進んでいるのか。

「まだ無花粉スギを植えてからせいぜい10年くらい(しか経っていない)。日本のスギを全部植え替えるのに、現状の予測だと『700年くらいかかる』と。700年は行き過ぎかもしれないが、数百年かかると言われている中で、すぐにできる話ではない」

 やはり、スギ花粉を無くすには途方もない歳月が必要となりそうだ。ただ、現在行っている取り組みは必ず将来に活きてくると袴田さんは語っている。

「確実かつ地道にやることで、将来の品種開発や研究材料をしっかり現時点でも確保していく。次の品種開発につなげるような林を作っておきたい」

(『ABEMAヒルズ』より)