話題の辰巳ジャンプ台…「挑戦者」は日々増えるばかり

 2023年1月20日頃に首都高速9号深川線にある巳第一PAに設置された通称「辰巳ジャンプ台」が話題となりました。

 さまざまなメディアで取り上げられたこともあり、多くの人々が集まった結果、ジャンプ大会が繰り広げられているという話もありますが、現状の反響はどうなっているのでしょうか。

いまやジャンプ大会スポットに…本来の目的と異なるカタチで話題となった辰巳PAの減速帯(通称:辰巳ジャンプ台)

【画像】首都高に現れたジャンプ台がスゴい! 缶コーヒーと比べても存在感ある実物を見る!(29枚)

 そもそも、このジャンプ台は駐車場を出て本線に入る前に「イキリダッシュ」(アクセル全開にして速度を上げて本線に合流する)をさせないことが目的の「減速帯(ハンプ)」です。

 辰巳PAではイキリダッシュをするクルマの騒音が周辺住民に対して多大な迷惑をかけることが増え、多くの110番通報が寄せられるようになりました。

 また、辰巳PAで仮眠をとるトラックドライバーにとっても、これらの騒音は安眠を妨げる迷惑な存在で絶対やめて欲しい行為でもあります。

 辰巳第一PAは「ルーレット族対策」を理由に頻繁に閉鎖されていますが、閉鎖の理由には「イキリダッシュによる騒音をなくす」こともあるかもしれません。

 また、辰巳PAは構造上、PA内を「周回」できるようになっているため、中には爆音をたてながら何度も周回しているスーパーカーもいてこれもかなり迷惑な行為です。

 ルーレット族の出没は深夜から明け方が中心ですが、イキリダッシュや爆音スーパーカーによる騒音はそれよりも早い時間から発生することもあるため、防止のために減速帯として大きめの段差を設けたと考えられます。

 また車高の低いスポーツカーは、「段差を乗り越えるには減速するだろう」、車低をぶつける可能性があるから「辰巳に行かないクルマも増えるのでは」という警察の期待もありそうです。

 では、この減速帯はどのような理由で設置されたのでしょうか。

 以前の取材時に警視庁高速道路交通警察隊(以下、高速隊)と首都高速道路(以下、首都高)は次のように話していました。

―― 辰巳PA出口付近の減速帯(ジャンプ台)の設置は何が理由ですか?

 高速隊:辰巳PAに関しては周辺住民からの騒音苦情が非常に多く、PAを出るときにスピードを落として騒音を少なくしてもらうために段差を設置しました。

 首都高:本PAは、ルーレット族などによる悪質な暴走行為や迷惑行為に対して、お客さまの安全な交通の確保と沿道にお住まいの皆さまへの騒音対策の観点からPA内の速度を抑制する方法として、路面に凸部を設けました。

―― 減速帯は速度何キロ以下で走行すべきでしょうか?

 高速隊:辰巳PAはあくまで道路ではなく、駐車場であるため制限速度は定めていません。常識の範囲内で速度を落として走行してください。

 首都高:PA内は一般のお客さまが歩行する箇所であり、運転者には道路交通法に基づく安全運転義務があり、徐行すべきと考えています。

 当該箇所で徐行しても合流部分までには、加速に必要な長さを確保しているため安全な合流が可能です。

 なお制限速度の掲示はありませんが「PA内段差あり 走行注意 SPEED HUMPS」などの掲示はあります。

2023年1月21日には確認できたGoogleマップ上の「辰巳ジャンプ台」((c)Google Maps)

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 このような対策の一環として設置された減速帯ですが、今のところジャンプ台が設置されてから毎晩、わざと速度を上げてジャンプに挑むクルマが続出しているようで「首都高の新名所を一目見たい!」「ジャンプ台を体験してみたい!」というクルマが多数、集まる状態となっています。

 なかには「わナンバー」のクルマもあり聞いてみたところ「自分はクルマを持ってないので、カーシェアで借りてきました」という人も。

 さらには「普段乗っているクルマは車高が低いので飛べませんが、レンタカーなら大丈夫かなと」など、クルマを借りてまで辰巳PAを訪れる人もいるようで驚くばかりです。

減速帯よりもジャンプ台として認知される事態に! 存在知らず人は「本当に驚きました」

 ところで、辰巳PAを利用するクルマの中には、ジャンプ台が設置されたことや、それがニュースやSNSで話題になっていることなどをまったく知らずに訪れるクルマもたくさん存在します。

 そして、「ジャンプ台」の段差が結構な高さ(約10センチ)であることを知らず「本線に合流するのだから加速していくことが当然」と思って、加速していき、大きな段差(ジャンプ台)もその勢いのまま通過してしまい、クルマが浮き上がるほどの衝撃に驚くドライバーもいるようです。

 SNSなどもまったくやっていない、60代のAさん夫婦もレンタカーのアクアで時速30kmほどでジャンプ台を通過して驚いたといいます。

「クルマを数年前に手放したことで、必要な時はレンタカーを借りています。

 普段、首都高速を走ることはめったにないので辰巳第一PAに入ったのもおそらく初めてだったと思います。

 トイレ休憩を終えて、駐車場から出て本線に入るので加速していきました。

 ふと気づくと、路面に『段差アリ』とみえたんですが、一瞬意味が分からずそのまま速度を落とすことなく通過したら、クルマが浮き上がるような感じになって、その後『ガックン!』と大きな衝撃がありびっくりしました。

 PAで缶コーヒーを買ってまだ開けていませんでしたが、紙カップのコーヒーだったら熱い液体が飛び出していたでしょう。

 本線に入るのですから普通は加速するところですよね。本当に驚きました」

いまやジャンプ大会スポットに…本来の目的と異なるカタチで話題となった辰巳PAの減速帯(通称:辰巳ジャンプ台)

 確かに高速道路のSA・PAから出て本線に合流する際は加速して出ていくことがルールです。

 しかし、辰巳PAの場合は本線に合流(50km/h)するまで約400mの距離があるのでPA内で加速する必要はありません。

 また左車線からの車線変更は禁止出て間もなく辰巳JCTのカーブも控えているのでゆっくりと安全な速度で走るのが正解です。

 もちろん、ジャンプ台の存在を知ってゆっくり徐行で通過するクルマもいますし、わざとスピードを出して助手席の人が動画を撮影しているクルマもいます。

 ジャンプ台の噂を聞きつけて、日に日にギャラリーが増え、週末の夜ともなると(閉鎖される日も多いのですが)ジャンプ台付近には夜中でも多くの動画撮影者が集まっています。

 なぜ、ジャンプ台の存在を知らずに速度を上げて思わぬ衝撃に驚くクルマがいるのでしょうか。

 その理由のひとつに、ジャンプ台の前に「徐行」や「減速」という標識がないこともあげられるでしょう。

 ジャンプ台の前の路面標示には「段差あり」としか記されていないうえに、周辺に「徐行」「減速」などの表示もありません。

 これはPA(駐車場)内であるため速度の表示や速度に関する指示(徐行や減速など)が出せないことが理由と考えられます。

 ジャンプ台の直前にある白い△マークも警察庁が定めた基準をもとにハンプの前に設置されるもので「段差」の存在をわかりやすく表示することが目的です。

 徐行や減速の指示がなくても、辰巳ジャンプ台の前では十分に減速し、徐行で走行することをお勧めします。