この記事をまとめると

■今あちこちで「クルマが買えない」という声があがっている

■高級車を買おうと思ったら納期が著しく長かったという声も

■一般的な国産車の状況も深刻なようだ

世界で起こっている大トラブルがカーライフに影響

 ここ最近、街のあちこちでクルマ好きの人たちの不平不満が聞こえます。なにやら「ディーラーに行ってもクルマを売ってくれない」とか、「新車を契約したら納車は2年待ち!」とか……。そんなイマドキのクルマ業界における由々しき事情に迫ります。

人気が集中する高級車ほど「クルマが買えない」という事実

 ここ最近……、とくに2022年は「欲しいクルマが買えない!」という不平不満の声(それも自棄っぱちな口調で)がたくさんあがっていました。たとえば、筆者のゴルフ仲間(千葉県成田市で飲食店を経営するお金持ち)は、ラウンド中に「先週ディーゼルエンジンのBMW X5を買いにディーラーに行ったんだけど、営業マンから『いつ入るかわかりません』といわれちゃったよ」と愚痴っていました。

 また、都内でクリニックを開業しているドクターは、「親しいメルセデス・ベンツのセールススタッフから『GLBの新車が入りました』という電話がかかってきたんですよ。で、こりゃあラッキー! と思ってボディカラーや仕様を選んで10分後にかけ直したら、『もう売り切れました。ごめんなさい』だと!」と呆れていました。

 さらには、若い富裕層に大人気のメルセデス・ベンツAMG G63にいたっては、購入したい人は1年くらい前からの予約待ちリストに加えてもらうしかなく、はたして順番がまわってくるかどうかわからないという話も聞きます。いや、直近の情報ではただのGクラスも含めて、もはやオーダーすら受け付けていないとか!?

 BMW、メルセデス・ベンツに並んで人気のドイツブランドといえばポルシェですが、そのラインアップも“買えない”ようです。とくに911が厳しい状況で、ターボやカブリオレといった特別モデルは納車数年待ち。筆者の友人の人気スタイリストが最新の911タルガを買おうとしたらしいんですが、「すみません、納車は2年後です」とさらりといわれたとか!?  で、思わず「んじゃあ、マカンに変えようかな」といったら、「すみません、マカンも同様です」とか。何にも付加価値が付いていない“素”の911でさえもお好みの色や仕様を選ぶのは困難で、ディーラーが抱えているモデル&仕様のなかから特別商談会で即決するしかないようです(ポルシェ関係者談)。

 こうした由々し現象は“みんなが欲しがる”人気車種ほど顕著! 国産の高級車を代表するレクサスの人気SUV、レクサスLXの納車はなんと4年後になるとか!?  それも「新車が来るのが4年後」なのではなく、「LXを買える権利が4年後」というニュアンスらしく、その期限が訪れた時にボディカラーや内装などをオーダーできるんだとか……。う〜む、イマイチよくわからんシステムですが、4年の間にキャンセルできるというのは、唯一ホッとした事実ですかね(クルマ業界人談)。

 なるほど! では、新富裕層がこぞって乗るベントレー、六本木や青山界隈にたくさん走っているベントレーならば、さぞ納車待ちは長いのでは!? と勘ぐってベントレー関係者にそれとなくうかがってみたところ、「いやいや、通常は6カ月くらいで納車できるんですが、ここ最近は2カ月ほど長くなるくらい。つまり、8カ月ほどでお客様にお届けしております」と……。ちょっと肩透かしなお応えでした。

一般的な国産モデルでも納車に時間がかかる異常事態

 かように、人気の高級車における“クルマが買えない”状況についての事例を紹介してきましたが、では普通のクルマ(=国産一般車)はどんな具合なのでしょうか。そこで、筆者の呑み友達である某ドイツ系インポーター広報から某大手燃料系会社に転職した業界人に、最近の国産車の動向について単刀直入に聞いてみました。お酒を呑みながら(笑)。

 すると、「僕が勤める燃料系会社は国産普通車およびEVのリースもやっているので国産車の状況はつぶさにわかりますよ。国産車、それも大衆車ならは契約→ほぼ即納車が当然でしたが、ここ最近は軒並み10カ月待ちですね。フルモデルチェンジまもないトヨタ・シエンタは人気が集中していたこともあって、1年以上待ちという話を聞きます。そうそう、高級車のアルファードはもうすぐデビューする新型に予約が殺到することを見越してなのか、現行モデルのオーダーを受け付けていないようです」と、長々と語ってくれました。さらには「日産リーフの新型は大人気なので、外車並みに待たされているようです。しかも、2023年春から、一気に100万円も値上げですから!」とも。

買えない今、クルマファンはどうしたらいいのか!?

 さて、こうした“クルマが買えない”異常な状況は、先ほども申し上げたとおり人気車種に集中しています。その人気車種が、いずれも供給が少ないことが「クルマが買えない」、すなわち「ディーラー(マーケット)にクルマがない」という状況を作ってしまうのです。つまるところ、需要と供給のバランスが崩れたことによる“品薄状態”なのです。

 そのバランスを崩してしまったのは、ご存じのように「コロナ禍による慢性的な労働力不足」であり「ロシア・ウクライナ紛争によるレアメタルの輸出制限」であることは間違いありません。そうそう、レアメタルの事例をお話ししましょうか。じつは筆者の弟がホンダの大型バイクに乗っているんですが、彼はプラグ交換でディーラーに持って行ったところ、3週間も待たされてしまったのです。そう、プラグにはイリジウムという希少金属が使われていたんですね〜(笑)。

 また、先述の某大手燃料系会社勤務の業界人は、「じつはクルマに当たり前のように付いているナビシステムの製造が、クルマの生産に追いついていないことも“クルマが買えない”状況を作っています。コロナ禍による労働力不足の影響ですね」と語っています。

 しかし、このサイトをご覧の皆様は経済評論家でもありませんし、ましてやジャーナリストでも政治活動家でもありませんから、社会の歪みを糾弾する気はないでしょう。正直でピュアなクルマ好きの皆様ができることといえば、クルマに乗れないいまこそ、クルマの真実や魅力について深く掘り下げてみてはいかがでしょうか。乗りたいクルマのボディサイズや車両重量はもとより、エンジンの形式や排気量、最高出力や最大トルクについて、サスペンションの形式についてなどを、カタログや専門誌、ネット等でチェックしてみるといいんじゃないでしょうか。そうすればクルマの良さが再認識できますし、もっともっとクルマのことが好きになれますよ。