昨年11月5日、愛知県愛西市で新型コロナワクチン接種直後に容体が急変し、42歳の女性(飯岡綾乃さん)が死亡した事例について新たな疑惑が判明した。亡くなった6日後の昨年11月11日、厚生労働省が発表した内容や11月17日に行われた愛知県医師会の記者会見と、亡くなった2日後の11月7日に遺族らが愛西市の担当者や現場医師から受けていた説明に完全な食い違いが複数あることがFRIDAYデジタルの取材で明らかになった。

このほど、綾乃さんが亡くなった2日後、夫の飯岡英治さんら遺族が愛西市側から受けた説明の音声データと、死亡に至るまでの記録が書かれた22ページに及ぶカルテを入手。遺族らが直接受けた説明と、違う情報がもとになってメディアに発表されていることに対し、遺族らは不信感を募らせている。

「救援に当たった医師はエピペンを打ったことがなかった」

「ワクチンを接種した直後に妻が亡くなりましたが、私自身は妻を亡くした今でもワクチン接種は必要だと思っています。妻がもともと看護師でしたし、第8波が来て、医療従事者の方が頑張っていらっしゃるのもよくわかります。ただ、私たちに説明された話と、厚生労働省や愛知県の医師会が会見で明らかにした内容の中で決定的に食い違っていることがいくつもあるんです」

こう明かしたのは夫の英治さん。綾乃さんが亡くなった日、救急搬送されたとの連絡を受けて仕事場から病院に駆けつけた時には綾乃さんは既に亡くなっていた。半裸にタオルをかけられただけの姿で、ぽつんと横たえられ、目、鼻、耳、口からは血があふれ出し、顔面血まみれのまま放置されていた。朝には元気だった妻がこの世を去って3ヵ月。今でも思い出すと涙ぐむ英治さんが重い口を開いた。

2022年11月5日、飯岡綾乃さんは愛知県愛西市の集団接種会場でワクチンを受けてわずか1時間半後に息をひきとった。死因は急性心不全と発表された。

その6日後の11月11日に厚生労働省がウェブ上に報告書(以下、報告書)を公表。さらに綾乃さんの死を受けて、医師らへの聞き取り調査を進めた愛知県医師会は同11月17日に検証結果を発表する記者会見(以下、会見)を開いた。

愛知県医師会は会見で、綾乃さんがワクチン接種後に体調が急変したことから重篤な「アナフィラキシーショック」が起きた可能性が高いとした。その上で、会場で処置に当たった医師らの対応について、「看護師が女性の体調変化に気付いた時点でアドレナリンの筋肉注射をすべきだった」と指摘。「アナフィラキシーを常に疑い、迅速にアドレナリンを投与できるよう確認する必要があった」と医療スタッフの協力体制も問題視した。

綾乃さんが亡くなった2日後、愛西市の担当者や医師らの話を聞いた英治さんはこう明かす。

「(医師から受けた説明と会見の情報の違いに)納得がいきません。容態が急変した時に、当然アナフィラキシーを疑い、対応すべき状況だったのに、救援に当たったA医師は必要な処置をしていなかったと思います。実際、A医師と直接話をしてわかったのは、これまで一度もエピペンを打ったことがなかった、ということでした」

さらに当日、接種する医師の遅刻により、接種前に必ず確認しなければならないマニュアルを確認しないまま、ワクチン接種をしていた可能性が高いのだ。

「愛西市の集団接種会場では、その日、接種する医師や看護師、スタッフが開始30分前までに集合して、マニュアルの共有を行うしきたりになっているようですが、愛知県医師会の野田正治副会長は会見の時に問題視した医療スタッフの協力体制について『伝聞したところでは、その医師は接種会場についた時にすぐに接種をはじめて、誰がリーダー役か、どこに(非常時などに使用する備品が)あるか、などの説明は受けていない』と語っています。つまり、妻が亡くなった日、本来医師や看護師で事前にすり合わせておかなければいけないマニュアルの共有がされていない可能性があります。もし、通常通り接種前の共有がされて、エピペンかアドレナリンをすぐに打ってもらえていたら、妻は死ななかったのではないでしょうか」

◆綾乃さんが亡くなった病院のカルテ

真相を闇に葬ろうとする何者かがいる

唇を震わす英治さんの憤る理由は、ほかにも存在する。

【食い違い 朧枴僂起きたのは接種前なのか後なのか

Web上にあがっている報告書や本誌が入手したカルテなどによると、綾乃さんは11月5日14時18分にワクチン接種し、15時58分に死亡が確認された。注目すべきは報告書の14時25分頃の記述だ。

<咳が出始めたため看護師が声をかけ前方に歩いてくるも、途中で座り込んでしまう。看護師が車いすで介助し救護室に移送。その際に、接種前から体調が悪かった」との訴えを看護師が聞いた(略)>

入手したカルテの冒頭には<目撃ありCPA(心肺停止)><ワクチン接種前に卒倒しCPA>とあり、その後に<接種前の14時頃から呼吸苦あり><その後ワクチン接種、様子見ていたら呼吸苦増悪、泡沫状血痰あり><ROSC(心拍再開)>等、死亡に至る生々しい経過が記されている。

だがおかしい。ワクチン接種前に呼吸苦が起きていたのなら、医師はワクチンを接種するはずがない。綾乃さんに直接、接種前の問診及び接種を行ったB医師は「僕は全員に、打つ前に駄目押しで、今日体調大丈夫ですかと聞いています。綾乃さんは大丈夫ですと言った。当日、体調が悪い人はいなかった」と夫の英治さんら遺族に証言している。その数分後に卒倒するほど具合が悪ければ、いくらなんでも気がつくのではないだろうか。

元看護師の綾乃さんは日頃から「体調不良時にはワクチンを接種してはいけない」と家族にも徹底させており、「そんな妻が、体調不良を隠してまでワクチン接種を受けるはずがない」と英治さんは話す。英治さんは、綾乃さんが「接種前から体調が悪かった」と語っていたことを直接聞いた看護師との面会を希望し、愛西市側にも伝えてきたが、いまだに面会はかなっていない。

【食い違い◆柯賊,浪鯔兇鯆鶲討靴燭里、しないのか

愛知県医師会は会見で「救急搬送先の病院で死亡を確認後、『医師が遺族に病理解剖実施の有無を確認したが、返答はなく、遺族が茫然自失としていたため、それ以上の確認は行わなかった』とカルテに記載されている」と説明した。

しかし実際には、22ページあるカルテに「病理解剖」という単語は一切でてこない。実施の有無を確認したとの記載もない。さらに言うなら、夫の英治さんら遺族は当日、病院から「死亡時画像病理診断(Ai)」の実施を提案され、承諾書にサインした上で、診断後の説明も受けている。Aiの提案に返答できたのに、病理解剖については、茫然自失で返答できなかったというのは、あまりにも不自然だ。

【食い違い】死因は「アナフィラキシー」なのか「致死的不整脈による急性心不全」なのか

医師会の会見では「アナフィラキシー疑い」との見解を前面に押し出し、「(医師は)躊躇することなくアドレナリンの筋肉注射をすべきだった」と述べている。だが、「死因は、致死的不整脈が原因の急性心不全」となっている。

会見で「アナフィラキシーが起きた可能性が高い」としながら、カルテにはアナフィラキシーを疑っているような記載は一切ない。もし記載してしまったら、医療ミスを認めることにつながる可能性が出てくるため、隠そうとしているのだろうか。そう疑われても仕方がないだろう。

FRIDAYデジタルが入手した音声データによると、綾乃さんの救援に当たったA医師は遺族に対し、4回も「申し訳ございません」とわびていた。「何に対して謝っているのか」という遺族の問いにA医師は返答しなかった。ワクチンの副反応も怖いが、真相を闇に葬ろうとする何者かがいることはもっと怖い。

1月27日。愛西市は外部有識者らによる医療事故調査委員会の2回目の会合を開き、会終了後の会見で、綾乃さんの血清を検査することなどが明らかにされた。昨年12月29日に行われた初回の会合後、綾乃さんの血清が搬送先の病院で凍結保存されていることが判明したのだという。委員長は「アレルギーに詳しい専門家の意見を聞きながら検査を進めたい。死因の究明に貢献できる可能性がわずかでもあるのではないか」と述べた。真相究明が進むことを期待したい。

◆厚生労働省が公表した報告書

取材・文:木原洋美