《人生お疲れさまです。気がついたらデビューして3年になってました》

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 1月30日、自身のSNSにそう投稿したのは、シンガー・ソングライターの藤井風

「2年連続2度目の出場となった昨年末のNHK紅白歌合戦では、ストリーミングサービス『Spotify』で“'22年に海外で最も再生された日本の楽曲”に選ばれた『死ぬのがいいわ』を披露。真っ赤な照明でグランドピアノを演奏し、視聴者を魅了しました」(スポーツ紙記者)

“風民おばさん”と呼ばれるファン

 デビューから日は浅いけれど、音楽歴は長い。

「岡山県で2番目に小さな町である里庄町で生まれ育ち、ミュージシャンを目指していた父の影響で、幼いころにピアノを始めました。12歳ぐらいから実家の喫茶店でピアノを弾く動画をYouTubeで配信するように。輝かしい才能に気づいた音楽関係者からは“天才”と呼ばれていました」(音楽誌ライター)

『何なんw』『もうええわ』などの配信シングルで、その名が広まった。現在は、昨年12月から、全国8都市16公演のアリーナツアー中。会場を訪れるファンは、意外なことに中高年女性が多いという。

「藤井風ファンは“風民(かぜたみ)”と呼ばれていて、彼女たちは通称“風民おばさん”。藤井さんは現在70歳になるお父さんの影響を受け、中高年の方たちが好む音楽に親しんできました。YouTubeで配信している弾き語りも昭和歌謡曲のカバーが多いんです」(同・音楽誌ライター)

 洗練された音楽性に加え、整ったルックスも女性の心をつかんでいる。

「目鼻立ちがくっきりしていて、少し昭和の薫りが漂うビジュアルです。美形なのに、話すと岡山弁丸出しのほのぼのした口調。そのギャップがたまらないんでしょうね」(前出・スポーツ紙記者)

 洗足学園音楽大学名誉教授で音楽評論家の中川ヨウ氏は、藤井は世界進出の可能性を秘めていると語る。

25歳とは思えない達観した死生観

「彼の音楽は、実に“グローカル”で、ジャパニーズポップスという枠を超えたポピュラー音楽といえるでしょう」

 インターネットで音楽を聴くようになった今、世界では、配信という世界的な舞台を持てるグローバル化と、“自分がこれまで聴いてきた音楽”をアイデンティティーとして生かすローカル化を同時に実現した“グローカル”な音楽が求められているという。

「歌詞が英語かどうかは、それほど大きな問題ではなくなり、日本語の楽曲でも世界に通用するように。演奏家やシンガーのみでなくリスナー側も進化する中、藤井さんの音楽は十分に評価されています」(中川氏、以下同)

 YouTubeを使った配信も効果的だった。

「彼の強みは、動画配信を通じて、リスナーひとりひとりとダイレクトにつながっているところ。リスナーは1対1の対話を楽しんでいるわけです。岡山の方言で語りかけ、自宅の床にキーボードを置いて演奏するスタイルは、生身の人間を感じることができ、友人のように親しげな感覚を視聴者に与えていると思います」

 独学で作り上げた音楽が、唯一無二のオリジナルな世界観となっている。

「コード進行にジャズ的なニュアンスがあり、彼が聴いてきた音楽のアイデンティティーが生かされています。歌詞からは、25歳とは思えない達観した死生観が読み取れる。若いシンガーは恋愛の歌が多いのが普通ですが、藤井さんに恋の歌は少なく、成熟した女性にも響く死生観と音楽のクオリティーを持っています」

 わかりやすい言葉で歌っている中に、深いメッセージが込められているのが、藤井の楽曲の特徴だ。

ライブ中に中年女性が腕をつかんで

「中島みゆきさんや松任谷由実さんを聴いて育ったリスナーにとって、同じクオリティーのシンガーが出てきたとしても、昔のように惹かれはしないでしょう。藤井さんにハマるのは、“21世紀の思想”を持っている突出した音楽家だから。50年に1度の逸材だと思います」

 中高年女性を虜にするのも納得だが、困った現象も起きているらしい。

「彼のSNSのコメント欄には“風民おばさん”からの強烈なメッセージも散見されます。例えば、《今、夢に来てくれてたでしょ》《思いっきり抱きしめたい》とか。質問を募集した際には《パンツは全部赤ですか?》《家では裸族ですか?》というセクハラまがいの問いかけをした人もいるというからやりすぎですよね」(ファンの女性)

 ネット上だけならまだしも、現在開催中のツアーでも迷惑行為があったという。

「自席を離れて、風くんを追いかけたり、周囲を気にせず大きな身振り手振りをしたり。1月29日に福井県で行われたライブでは、彼が客席に近寄ってきてくれたとき、中年女性が風くんの腕をつかむというアクシデントがあったそう。昭和の時代なら“お触り”が黙認されていたかもしれませんが、今は令和。マナーを守ってもらいたいです」(同・ファンの女性)

 一部のファンの常識外れな行動で気が散り、思う存分ライブを楽しむことができないため「もう行きたくない」という声も上がっている。ひどいマナー違反が続けば、藤井から“もうええわ”と言われてしまうかも!

中川ヨウ 洗足学園音楽大学名誉教授。音楽評論家。ジャズ研究者。一般社団法人『ミュージック・ペンクラブ・ジャパン』理事を務める