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 これまでであればリヴァプールFCと対峙したクラブの多くは、意気消沈して試合終了の笛の音を聞くことが大半であったのだが、しかしながらウォルバーハンプトン・ワンダーラーズでもむしろ逆の光景が見受けられた。0−3とまたも敗戦を喫した失意に暮れるリヴァプールFCのユルゲン・クロップ監督に対して、この試合の後では「明日にはクビだろう」のチャントさえ浴びせられている。

 ただ実際には日曜日になってもリヴァプール側から解任が発表されることはなかったものの、それでもブライトン戦で「最悪の試合」と表現していたドイツ人指揮官は、今回の試合後にはさらにその更新を宣告しなくてはならなかった。とりわけ大量リードを許してもおかしくなかった序盤を振り返り、「あれが我々の問題のピークだったよね」とコメント。「批判はご自由に頂きたいし、おそらくそれは的をいたものでもあるだろう。ここ数日取り組んできたにもかかわらず、このような結果になってしまったのだから残念でならない」と言葉を続けた。

 長年にわたってそのインテンシティに称賛の言葉が遅れられていたリヴァプールのサッカーはすっかり鳴りを潜め、オウンゴールとセットプレーという余りに残念な失点を許しており、「1点目のプレーでは7・8人が関わっていなかった。2点目でもそうだった」とその状況について説明。GKアリソンは「一体どうしたら僕たちは目が覚めるというのか。もう言葉にできない気持ちだよ。自分たちを信じてと口にはしていても、実際にそれをピッチ上で目にすることができていないんだ」と嘆き節だ。

 指揮官も「仮に0−0に持ち込めていたら?タラレバばかりだよ。もうそんなことは聞きたくもないし、どう解決できるか?ってそんなのは会見中のはずがない!」と苛立ちを募らせ、またアスレティックのピアース記者からメンタル面で質問が及ぶと、「あなたとの会話は非常に難しい、正直いえばむしろしたくはない。理由はご存知のはず。あなたの書いたこと全てが理由だよ」と返答。ただいずれにしてもクロップ監督への逆風は今後しばらくは、まだ弱まる気配をみせないことだろう。

メンタル面での立て直しが急務のリヴァプール

 今回の試合ではマティプとゴメスが先制点での失点に絡み、またファン・ダイクやコナーテの負傷離脱などもあってCB事情は苦しい状況に。そういった部分も個人的なミスに繋がったところがあるだろう。そしてここのところの不振から広がるチーム全体への不安感ももはや明確で、守備における負の連鎖は明らかに拡大の一途を辿っているところ。実際にアウェイ戦リーグ戦3連敗は実に2012年以来の惨事なのだ。

 プレスでの無気力さ、ゴール前でみせるためらい、全体的に垣間見える臆病さ、残念な取り組む姿勢。クロップ監督によるメンタルの怪物さは、いまやネズミクラスにまで低下してしまった。確かに主力選手による負傷離脱や不振などの影響もあるだろう。明らかにリヴァプールは精神的に限界点へと達しオーバープレーの状態で、にもかかわらずチーム改革は今冬も獲得わずか1人と先送りにされてしまった。不足の事態を考慮するならば本来、こういった改革には1年前から手をつけておくべきだったのではないか。

 ただその裏ではオーナーが株式売却を希望していることや、クラブ首脳陣における変更点などもあり、それが近年の移籍市場におけるリヴァプールの成果の少なさに影響を及ぼしているかもしれない。それでも今冬は例年以上の長さのあった冬季休暇を経て、それでもこの失速を救えなかったチーム状況というのはいかがなものか。今季は合計45回の絶好機を逃しており、対人戦勝率はわずか47.3%。失点数は20試合で28、昨季の26を既に超えている。ダーウィンや今冬加入のガクポのように、まだこれからチームに統合していかなくてはならないおう今日でいかに自信をチームとして蓄積させられるか。

 この微妙な局面においてリヴァプールとしては、クロップ監督がすでに指摘するように「泥臭く乗り越えて」行きながら、一方でチーム再建に乗り出すべきであろう。ただこのままの不振が続きファンからの信頼を失うようであれば、到底望ましい再建になどつながるものではない。クロップ監督はチーム内に不穏な空気は流れていないと強調するが、一方で復帰組頼りになるようでは不十分。なによりまず既存の戦力たちにまとわりつく疑心暗鬼を取り除かなくてはならない。