香川真司がJリーグに復帰する。ベルギー1部のシント=トロイデンから、古巣のセレッソ大阪に移籍することが発表された。Jリーグでプレーするのは、2010年以来となる。

 現代サッカーは選手寿命が飛躍的に延び、35歳前後でも第一線で活躍する選手が珍しくない。それでも、年齢を重ねたかつての代表選手が、母国のリーグへ復帰したり、母国の下部リーグでプレーしたりするのは、20世紀からフットボーラーのキャリアデザインに含まれていた。プロデビューを飾ったチームで現役生活を締めくくりたいとか、最後は両親の近くでプレーしたいとか、子どもの教育のために母国へ戻るといった事情も含まれてくるのだが、どんな理由にせよサポーターには嬉しいだろう。

 長く国外でプレーしていて、生でプレーを観られるのは代表戦に限られていたような選手が、国内に戻ってくるのだ。子どもたちはもちろん古くからのファンにとっても、スタジアムへ足を運ぶ動機づけとなる。

 ピッチ内にも好影響が及ぶ。W杯で活躍したような経験豊富な選手は、若手はもちろん中堅選手にとっても、ピッチ内外で見本となる存在だ。同じロッカールームで過ごし、同じピッチに立たなければ感じ得ないものは、かけがえのない財産となる。

 レアル・ソシエダにおけるダビド・シルバは、まさにそういった存在だろう。1月に37歳の誕生日を迎えた元スペイン代表のレフティーは、23歳のマルティン・スビメンディや21歳の久保建英、20歳のロベルト・ナバーロらにとって、これ以上ない教材となっているはずだ。

 ひるがえって香川である。

 セレッソ大阪に所属している選手たちは、偉大なるOBの復帰に胸を躍らせているに違いない。日々の練習から、多くの気づきがあるだろう。

 J1の他チームの選手たちも、セレッソとの対戦が楽しみになりそうだ。香川とマッチアップした選手もまた、自身のレベルアップにつながる気づきを得られるだろう。

 香川自身にとっても、野心あるチャレンジと言える。

 セレッソ18年を最後に、国内3大タイトルから遠ざかっている。昨シーズンはリーグ戦で5位にとどまり、ルヴァンカップではサンフレッチェ広島に優勝をさらわれた。悲願であるJ1リーグ制覇へ、香川への期待は高まる。

 先のカタールW杯では、香川と同世代の選手たちが存在感を放った。優勝したアルゼンチンでは、35歳のメッシだけでなく、ともに34歳のCBオタメンディとFWディ・マリアが価値ある仕事をした。準優勝のフランスでは、36歳のジルーが衰え知らずのプレーを見せた。メンバー入りしたもののケガで出場しなかったベンゼマは34歳である。

 2大会連続で4強以上の成績を残したクロアチアでは、37歳のモドリッチがチームを力強く牽引した。メキシコの主将を務めたアンドレス・グラルダートは36歳、ポーランドのレバンドフスキは34歳だ。

 1989年3月生まれの香川は、もうすぐ34歳になる。ベテランの域に達しているのは間違いないが、ここからさらに輝くことはできるはずだ。

 ヨーロッパでプレーしていた選手がJリーグに復帰すると、かつてはネガティブにとらわれることがあった。しかし、大迫勇也や酒井宏樹、長友佑都らは、国内組に立場を変えても日本代表で存在感を示していった。国内復帰はキャリアの「後退」を意味するものではない。セレッソのユニフォームを着た香川を、早く見てみたいと思う。