「深夜2時頃のことです。外が騒がしいと思って家の窓を開けると、救急車が中央分離帯に突っ込んでいるのが見えました。大勢の警察官や救急隊員が慌(あわ)ただしく処理にあたり、朝6時過ぎまで続いていたでしょうか。この辺りはスピードを出している車も多く事故を見るのは慣れていますが、救急車の横転を目撃したのは初めてです」(現場の近くの住民)

救急車が大破する事故が起きたのは、昨年12月29日未明だ。患者の搬送を終えて帰る途中、東京都昭島市内の国道で中央分離帯に衝突。鉄製のフェンスを突き破って窓ガラスが粉々になり、隊員3人が軽傷を負った。運転していた50代の隊員は、居眠り運転をしていたという。隊員は17時間にわたり、休みなしで活動していたことがわかっている。

「東京消防庁の昨年1年間の救急出動件数は87万2101件で、過去最多を更新しています。救急隊1隊あたりの1日の活動時間は、前年を約4時間上回る15時間30分超えとなりました。横浜市でも出動件数が過去最多に。全国ほぼすべての消防署で、出動件数が軒並み増えているんです」(全国紙社会部記者)

「休憩や食事する時間もとれない」

救急医療現場は絶望的だ。

「搬送要請が次から次へと来るうえ空いている病床がないために、病院から患者の受け入れを断られることも多い。その分、搬送時間も長くなっています。日によっては、休憩や食事する時間も満足にとれません」(東京消防庁の救急隊員)

消防署だけでは対応しきれず、民間救急事業者へも搬送依頼が舞い込んでいる。影響しているのが、新型コロナウイルスだ。群馬県内を中心に搬送事業を行う、『スター交通』の碓氷浩敬(うすいひろたか)社長が話す。

「群馬県の医療調整本部から、コロナ感染者の搬送依頼がひっきりなしに来ます。今年に入り多い時は日に10件の搬送をし、4台の車両はフル回転です。消防だけで患者を運ぶ自治体も多いですが、公的な救急搬送はもう限界でしょう。昭島市のような事故は、いつどこで起きてもおかしくありません」

消防署も増え続ける救急搬送に、この先も対応できるかは未知数のようだ。

「救急隊の増隊や非常編成をして対策を進めていますが、救急出動件数の増加などにより救急搬送態勢は逼迫(ひっぱく)しています。119番通報は緊急時に利用し、救急車を呼ぶか迷ったら#7119で繫がる『東京消防庁救急相談センター』を活用してください」(東京消防庁広報課)

NPO法人『医療制度研究会』副理事長で医師の本田宏氏は、コロナへの意識が重要だと語る。

「現在の2類より軽い5類にしようとの調整が進み、国民の間にもマスクを外そうとする動きがみられます。しかし1日あたりの死者数が過去最高を記録し病床も逼迫するなど、医療現場の状況は変わっていません。新型コロナへの警戒感を引き続き持つことが大切でしょう」

コロナ対策を怠らず、安易な119番通報を控える――。ちょっとした心がけで、救急医療現場は改善されるのだ。

『FRIDAY』2023年2月10日号より