全国各地で相次いだ広域強盗事件で、フィリピンの入管施設に拘束されている「指示役」とみられる日本人の男4人の早期送還が実現するか注目される中、国際犯罪に詳しい元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が同じ収容所にいた男性を直撃取材し、同所での生活実態や容疑者たちの姿を聞いた。小川氏は当サイトに対し、その内容を紹介し、今後の捜査のポイントも語った。

【写真】フィリピンの収容所=『特殊な逃げ道』の実態とは?

 この人物はフィリピンに不法滞在して約4年半、首都マニラ郊外にある「ビクータン収容所」におり、今回、警視庁が特殊詐欺事件で逮捕状を取った渡辺優樹(38)、今村磨人(38)、藤田聖也(38)、小島智信(45)の4容疑者と同所内で暮らしたという。

 さらに「タタキ(強盗)のターゲットになる『金持ちリスト』も見せてもらった。(実行役には)残虐なビデオを見せて『裏切ったらこのようにするぞ』と脅して服従させていた」と明かし、「渡辺、小島、藤田の3容疑者の絆は深いが、今村容疑者と渡辺容疑者は同じ北海道出身でも、仲がいい印象はない。渡辺容疑者は一番いい部屋を使って『ボス』と言われていた。小島容疑者は『収容所にいると金ばかり取られるから別の場所に移りたい。日本にはもう帰らない』と話していて、逃げるための資金作りをしているのかなと思った」と振り返る。

帰国まで4年半かかった男性、収容所の実態を詳細に語った

 この男性は小川氏に対して収容所の実態を詳細に語った。

 「ある日、職員が僕の携帯電話を取り上げた。後で知ったが、他の日本人収容者からの指示だった。取り上げた携帯で日本にいる僕の家族に電話して犒なこと瓩鯏舛┐討い拭そんな嫌がらせをして逆らえないようにして自分の地位を築く者がいる。日本に帰りたくても、手続き渋滞が起きていて、さらに(別の者が)金を払えば順番を優遇してもらえるので、払えない人は滞在期間が延びてしまう。僕は新型コロナの影響もあって帰国まで4年半かかった。ギリギリの生活だったが、1000万円近く使った」

 「収容所に入ると、本来は支給品である就寝用のマットを職員が売りに来る。『〇〇はいくら』などと普通に言ってきて、何をするにもお金がかかる。収容所で金がないと自分の生命も守れないので所内で皿洗いやマッサージなどをして稼ぐしかない。食事は米と肉のない唐揚げとか。雑魚寝部屋で、金を払えば4人部屋や2人部屋、さらにエアコン付きの個室に入れる。自分が入った頃、そのVIPルームは月2万ペソ(約5万円)だったが、今回の詐欺グループが入ってきてから(倍以上に)高くなった」

 「金さえあれば、何でもできる。覚醒剤も買える。入れ墨を彫る機械も売っていて、収容者であるルーマニア人の彫り師が1回約3000ペソ(約7000円)で彫っていて、彼ら(容疑者)も入れていた。あと金を払えば、Wi−Fiも使える。日本人の場合は月2500ペソ(約6000円)払うと、職員が端末にパスワードを入力する。外出も職員にタクシー代や食事代、小遣いなどを渡して、歯医者に行くという名目で買い物や食事などに出かける。さらに、ほぼ毎晩、収容所内ではマージャンやバカラなどギャンブルが行われている。彼ら(容疑者)も中国人や韓国人らを相手にやっていて、『100万負けた、200万負けた、今度リベンジする』といった話を聞いた」

 携帯電話などの持ち物検査も「抜き打ち」でありながら、事前に職員が教えにくるという。小川氏は「職員から『明日やるよ』と伝えられた収容者がお金とスマホを職員に預けて、持ち物検査が終わったら戻してもらう。抜き打ちの持ち物検査をすることで職員の収入、つまり、賄賂が増えるという悪循環です」と解説した。

 また、偽造パスポートも買えるという。小川氏は「正確に言うと犁饗き瓩任呂覆、フィリピン政府が正規に発行した本物のパスポートです。フィリピン人の名前を買って自分の写真を貼り、正規のパスポートで第3国に出国することが可能です。値段ですが、私が取り扱った経験ではフィリピン人が母国で他人名義のパスポートを作って日本に来た時の費用は約300万円ということでした。今回のように収容所に入っている日本人の場合はその10倍(約3000万円)くらいしてもおかしくないと思います」と補足した。

 今回の取材を通して、小川氏は「私も現地で取り調べしたこともあったが、振り込め詐欺グループが入所したことで、これまでよりも収容所内の風紀がさらに乱れ、それによって職員への賄賂の金額も高騰したという現状がある」と指摘した。

 来週中にも4人が同時に強制送還される可能性も浮上している。小川氏は「早く身柄が送られるといいのですが、それより、いま現在も、この4人が同じ収容所で行き来が自由な部屋にいて、通信機器を所有していることの方が問題です。個々を隔離し、通信機器も持ち込ませないようにしてほしい。近く送還されることも本人たちは分かっているので、自由な場所にいる間に証拠隠滅などをしている可能性がある」と問題視。日本での取り調べに向けて「通信機器等の押収、面会に来た者の資料などはフィリピン政府から提供を受ける必要は最低限あると思います」と付け加えた。